【考察】岡田将生の理知の光に魅入ってしまう冷たいさざ波 『ちょっとだけエスパー』第5話
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【考察】有馬記念の結末が…! ホープ敗北で揺れる恋・親子・会社の行方『ザ・ロイヤルファミリー』第6話『ザ・ロイヤルファミリー』第5話は、多くの人の夢を乗せたロイヤルホープの最後の有馬記念がクライマックス。息子との和解を願う耕造社長、全てを馬に託そうとする栗須、それぞれの心情を描きます。ホープは勝てなかったが、その懸命な走りが耕一の心を動かし、次世代の戦いが始まる予感。また、隆二郎と百合子の関係など、登場人物たちの恋の行方も見どころです。

恋に落ちる大泉洋はどうしてこんなにも魅力的なんだ… 『ちょっとだけエスパー』第4話ドラマ『ちょっとだけエスパー』第4話を考察。人を愛してはいけないというルールの中で、文太と四季の間に芽生える「抗いがたい恋」に注目。「恋に落ちる大泉洋」の魅力を深掘りします。
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- テレビ朝日






SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2025年10月スタートのテレビドラマ『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)の見どころを連載していきます。以下、ネタバレが含まれます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
神経質な岡田将生は、やっぱり絶品だなと思う。
SNSやインタビューでの本人の発信を見れば、とても穏和な人物だとすぐにわかるのに、演じている姿は何故かいらだったり、呆れたりする表情が印象に残っている。
同じく『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)で主人公を演じる大泉洋も愚痴るし苛立つしキレるけれども、大泉のそれは見ている側が思わずかまい、いじり倒したくなるようなエネルギーの発散だ。
一方、岡田将生の神経質さは、思わず理知の光に魅入ってしまう冷たいさざ波だ。
優しくない、得体がしれない、でも何だかこの人の言うことを聞かねばならない気がする。
そんな男のカリスマ性に説得力を持たせるのに、岡田将生の横顔はうってつけだと思う。
野木亜紀子の手のひらで転がされる視聴者
横領で会社をクビになり、家も家族も失って自堕落に生きていた文太(大泉洋)は、ノナマーレという謎の会社にスカウトされる。
採用の条件は、奇妙な薬を飲んでエスパーになること。その力を使って会社から出されるミッションに取り組むこと。
能力は秘密にすること、そして人を愛さないこと。
不審に思いながらも文太は四季(宮﨑あおい)と名乗る女性と夫婦として暮らし、他のエスパーたちと協力して不可解なミッションを達成していく。
前回、手違いで四季にエスパー能力が発現してしまい、一体どうなるかと思っていたら、拍子抜けするくらいエスパーの面々は楽天的だった。
あっけらかんと自分達の秘密を話し、歓迎会まで開いている。
ここはなんといっても四季にキスをしようと唇をむにむにと動かして、キス顔をする大泉洋が非常にむかついて、その分とても魅力的だ。
むかつくところが魅力的。この矛盾こそ大泉洋だなあと思う。
しかし能天気な展開は序盤のみで、次第に物語はシビアなミッションに踏み込んでいく。
今回は、これまで明かされていなかった円寂(高畑淳子)の壮絶な過去が明かされた。
不倫相手として円寂の人生を破滅させた男には吉田鋼太郎。
ほんのワンシーンとはいえ、高畑淳子と吉田鋼太郎がぶつかりあう回想シーンはギラギラして迫力満点だった。
これで半蔵(宇野祥平)、桜介(ディーン・フジオカ)、円寂とエスパー達の過去が明かされることになるが、彼らはみな誰かを愛したことで、一度は人生が壊れた人たちということになる。
家族を守りたいが為に脅迫者を殺した桜介、動物を愛するがゆえに悪徳ペット業者を許さなかった半蔵、そして愛した男の罪をかぶって服役した円寂。
彼らの来歴を考えると、確かにノナマーレつまり『愛してはいけない』ということなのだろう。
しかし、文太の過去を考えると不憫な半生ではあるけれど、愛しすぎて何かを間違ったというわけではない。
兆が文太をスカウトした理由はまだ他にあるのかもしれない。
この『ちょっとだけエスパー』は、これまで社会派ドラマの多い野木亜紀子が、社会派でないSFを手がけているという世間の認識ではあるけれども、個人的には決してそうではないと思っている。
例えば今回は、トランクを海に捨てろと命じられた指令の詳細を考えることなく遂行しようとする中年エスパーの面々と、知識は豊富だけどすぐに推測が暴走して思い込みの激しい若いエスパーの対比がピリッと辛い。
桜介と紫苑(新原泰佑)の、親の心子知らずな関係も切ないし、円寂の過去の不倫する男が言う「幸せになろう」には何一つ実がないというのもえぐい。
社会に漂う普遍の痛みが、散りばめられているのである。
そして何より、一万人の死と一千万人の死。
それを阻止する為の要素がもしも相反するものであったとき、人はどちらを選ぶのか。
果たしてそれは単純な数量としての判断なのか。
密かにぞっとするような問いを、今回のエピソードは含んでいる。
今回のラスト、送られてきた四季の写真を見て兆は動揺し、そして四季の夢に度々現れる重傷を負った男は兆だったことが暗示される。
さらにこの写真を送った男2人が最初に青いトランクを持ち去ろうとしていたことを考えれば、トランクの回収は未確認因子を炙り出す為の陽動だったのではないか。
兆の正体も含めて謎は山積み、何が起こるのか想像もつかない。
こんなに訳が分からない物語に放り出されているのに、次回が待ち遠しくて仕方ない。
私たちは野木亜紀子の手のひらでコロコロ転がされているが、それこそまさしく望むところである。
[文/かな 構成/grape編集部]
かな
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