正月が終わり、日常へ戻る時間 『花の始末』に重ねた花の生き方と人生
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
花の始末
松が明け、お正月のお道具やお飾りを片付ける。
玄関の麻のお飾りを外し、お重と屠蘇器を箱にしまう。
冷蔵庫の中にはまだ黒豆やら梅や金柑の甘露煮や、あろうことか京都の料亭の合鴨ロースまで残っている。
消費期限を見る。セーフである。
柚子もいくつか。一個は皮を薄く剥かれて果汁を絞られるのを待つのみ。
新年を迎える年末の支度の慌ただしさとは反対に淡々と、粛々と。
それは日常に戻るために必要な時間のようで、一つ一つの所作を味わいながら片付けを進めます。
お正月花は、雲龍梅をメインに紅葉した南天の葉と松。
昇る龍の勢いそのまま、くねくねと枝は曲がり、ぐるりと回転する枝も。
運気上昇の縁起のいい梅で、お正月の花によく用いられます。
小さな蕾がたくさんついていて、乾燥しないように毎日霧吹きを。
年が明けたある朝、ぽっとほころんだ白い梅を見つけたとき、その愛らしさに魅入ってしまいました。
雲龍梅も咲き終わり、南天の葉も乾燥してきました。
いつもならまだ枝ぶりを楽しむのですが、なぜか今年は一気に片付けてしまおうと思ったのです。
大ぶりの枝を花鋏でビニール袋に収まるように切っていく。
この十日間愛でていた、うねるような枝に『容赦無く』鋏を入れていると、『花の始末』という言葉がふと浮かびました。
花の、始末。十分に水を吸い上げた枝は、太い枝であっても拍子抜けするほど簡単に切れる。
枯れ切った枝はあっけなく。
種類によるかもしれませんが、生ける時には難儀する枝も、始末するときにはそれほど力を入れずとも切れてしまう。
ふと浮かんだ『花の始末』という言葉に、終わりの美学が感じられて、自分自身のあり方を重ね合わせていました。
なるほど人生は花や木々に重ねて語られることがあります。
二十代や三十代なら終わりの美学など思いもよらなかったでしょう。
四十代、五十代なら思っても考えたくなかったかもしれません。
でも今この瞬間の私は『始末』という寒々しい言葉に、覚悟や潔さを感じたのでした。
まだまだ吸い上げたい水があり、まだまだ陽の光を浴びていたい。
小さくても咲かせたい花があり、季節の移り変わりを感じさせるように、そっと香ってみたい。
望むように『花』を生きる。望まないことがあっても、それを味わい尽くすように。
そんなことを思いながら、始末仕事はサクサクと粛々と進みました。覚悟と潔さの練習のように。
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
[文/吉元由美 構成/grape芸能編集部]