『ぬいぐるみを抱く子ザル』のめげない姿が教えてくれる 無意識のうちに求めている『優しさ』と『ポジティブさ』

By - 吉元由美  公開:  更新:

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子ザルの写真
吉元由美の写真

吉元由美

作詞家、作家。作詞家として1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛けた。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。

吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

パンチくんが教えてくれること

市川市動植物園のニホンザルのパンチくんが人気です。

母親に育児放棄され、飼育員さんによって人口保育で育てられたために群れに入れてもらえない子ザルくん。

子ザルは母親にしがみつく習性があるということから、飼育員さんがIKEAのオラウータンのぬいぐるみを与えました。

パンチくんはぬいぐるみに抱きついて安心し、眠り、時には腕を引っ張って引き摺りながらあちこちに移動します。

不安なときには震えて抱きつく。ひとりで遊ぶ様子。餌やりのときには、群がってくる先輩サルたちが引いた隙を見て食べる。

その健気さ。かわいい、そしてせつないです。

サル山で過ごす子ザルの写真

サル山のルールを知らないので、先輩サルに近づいたり、突き飛ばされたり、池に落とされたりという様子を見ると、と胸が痛むのですが、これはサル界のルールを知らないので怒られている、サル界では普通のことだそうです。

動画をSNSで見る人の写真

そんないじらしいパンチくんの動画は、瞬く間にSNSで世界に広がっていきました。

海外メディアの日本オフィスに勤めている友人が、先日パンチくんの取材に行ったときのこと。

パンチくんは先輩にはぶかれて、ぬいぐるみに抱きついて震えているのですが、しばらくするとまた気を取り直したように遊び始める。

懲りずに先輩に寄っていき、また無視されて、ぬいぐるみに抱きつき、そしてひとり遊びを始める。

その姿を見ていて励まされたと言います。

ポジティブ、というと言葉が平たくなるのですが、パンチくんのめげない姿は、当時いろいろ迷いがあった友人は吹っ切れるきっかけになったと言います。

サル山を見る迷いを抱える女性の写真

そこに物語がある。私たちが何かに感動を覚えるとき、そこには物語があります。

映画『ハチ公物語』を観て、私は映画館で大泣きしてしまいました。

『先生』の奥様がハチに「先生はもう亡くなってしまったのよ」と優しく語りかけるところでも泣けて、来る日も来る日も渋谷駅で先生を待つハチに泣けて。その健気さに心が揺さぶられたのです。

上を見るさびしそうな秋田犬の写真

これはパンチくんをかわいく思う気持ちにもつながっています。

一途に飼い主を思うハチの健気さ、オラウータンのぬいぐるみと一緒にめげずに一生懸命に生きるパンチの健気さが、人の心を打つのです。

なぜ動物たちの健気さに心を打つのか。

もしかしたら、それは私たちに『守りたい』という気持ちを通して『優しさ』を思い起こさせているのではないか、とも思います。

取材した友人のように、そこからポジティブであることを思い出すかもしれません。

心を打たれたということは、そこに何か私たちが無意識のうちに求めていた答えがあるのかもしれませんね。

混沌としたニュースばかりのこの状況の中、パンチくんの話題は人間にとって最も大切なことを教えてくれている。

私たちがどんな世界を望んでいるのか、パンチくんが多くの人の心を惹きつけるこの現象に答えがあるのかもしれません。

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※記事中の写真はすべてイメージ


[文/吉元由美 構成/grape編集部]

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