自己をもう一度見つめ直す『林住期』 「頑張る」よりも大切なことは?
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
『林住期』という豊かな時間
「チェロが弾けたら素敵だと思わない?」
来年からレッスンを始めることにした友人のその一言は、まさにこれからの豊かな生きかたを教えてくれました。特に音楽の素地のなく、「弾けたら素敵」という気持ちだけでチェロのレッスンを始める。年齢を重ね、再来年に大きな節目を迎えますが、このしなやかで素直なチャレンジ力はこれから先の時間に彩りを与えてくれるでしょう。
20×3歳。思っている以上に時間は早く過ぎていました。古代インドでは、人生を四つの期間に分けて考えたそうです。人生80年から90年とすると、『学生期』(がくしょうき)、『家住期』(かじゅうき)、『林住期』(りんじゅうき)、そして『遊行期』(ゆぎょうき)。働き盛りの30代、40代である『家住期』、まさに我を忘れて仕事と子育てをしていました。自分のことは二の次、三の次、何をしたか覚えていないほど瞬く間に過ぎました。
作家の五木寛之氏は、「林住期は時間を取り戻る時期」と著書の中で述べています。これまで社会、家族のために使ってきた時間とエネルギーを自分のために使う。生活の足しにならないことを真剣に考えてみてはどうか、と。ひとりになる。ひとりの時間を持つ。これまで社会、家族に奉仕していたエネルギーを自分に向ける。人生に必要なものはさほど多くない。徐々に簡素化をしていく。本来の自己をもう一度見つめ直す時間、そして心が求める生き方をする時間、それが50代、60代にふさわしい生き方なのではないか。
所謂、終活にはまだ早すぎるかもしれませんが、60代近くなってくるとこの人生のまとめ方について考えます。30代からの20年と、これから先の20年はまったく違います。そして20年は本当に瞬く間。自分を見つめ直すのはまだ先でいいか…などと言っていられないのです。生きている保証はないのですから。
そこで、「頑張る」ではなく「楽しむ」をいうことを軸にしました。頑張れなくなってきたということもあるのですが、心と身体に正直にしかできなくなってきました。いつの時代も「楽しむ」ことが大切です。「わくわくする」という言葉がフィットする世代もあるでしょう。「楽しむ」とは、楽しいことをする、楽しくないことはしない、という意味もありますが、どんな状況でも「楽しむ」という意味も大きいのです。
「チェロが弾けたら楽しいと思わない?」
「ウクレレ、習ってもいいなと思っているけれど、どう?」
「じゃあ、チェロとウクレレで合奏しましょ」
怖いものがなくなるのも、これからの世代の妙味です。
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作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」