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防犯のため設置したドライブレコーダー 翌日、映っていた映像を見て涙があふれた 【grape Award 2018 入選作品】

By - grape編集部  公開:  更新:

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grapeでは2018年にエッセイコンテスト『grape Award 2018』を開催。『心に響く』をテーマにした多くのエッセイが集まりました。

今回はそんな心に響くエッセイの中から、佳作に選ばれた『あの日ドライブレコーダーに映っていたのは』をご紹介します。

あの日ドライブレコーダーに映っていたのは

三年前のこと。
車を買い替えたのと同時にドライブレコーダーを付けた。

新車の購入費用にさらにプラスで、余計な出費としか思わなかった私。
「ドライブレコーダーなんていらないんじゃなーい?」なんて、あまり乗り気ではなかった。「車だけですでにかなりの予算オーバー、さらにまだ何か買うの?!」みたいな。

でも、夫に「もらい事故だったとしても、自分に非がないことが証明できなかったら裁判で負けたりする可能性もあるらしいよ。それに運転中だけじゃなくて、駐車中も何かあれば自動的に録画できるから、当て逃げとか、車上荒らし対策もできるよ。せっかくの新車だしね。」と熱っぽく説明されて、ようやく納得。

夫の希望通り、車の前を他の車や歩行者が通っても録画される設定で稼働開始。

機械好きの夫がドライブレコーダーをいそいそと車に設置するのを横目に、私はやっぱりあんまり興味なくて。

「その録画に頼らなければいけない何か=悪いことが起こらないといいなー」なんてぼんやり考えたりしていた。

ドライブレコーダーを設置した翌日、夜になって帰宅した夫がちゃんと録画されているか確認していたところ「あれ?これMちゃんじゃない?」と驚いたような声をあげた。

ドライブレコーダーには、近所の女の子が一人で帰ってきたところが録画されていた。

その女の子、Mちゃんは我が家の長男と毎朝一緒に学校に通い、二人で作ったへんてこな替え歌なんかを歌いながら帰ってくる。
二人で考えたという、ルールのよく分からないゲームをしながら帰ってくることもある。

年齢的にもそろそろ異性を気にし始めるお年頃、同級生に「お前ら付き合ってるんだろー!やーいラブラブー?」なんてからかわれても二人はお構いなし。
晴れの日も雨の日も、二人でうきゃうきゃ言いながらそれはもう楽しそうに登下校を共にしている。

その日は長男が珍しく学校を病欠していて、Mちゃんがいつものようにピンポーン♪と迎えに来てくれたけど「ごめんね、熱があって今日学校お休みなんだ」と、一人で学校に向かう、すごく残念そうなその背中を見送ったのだった。

夫のPCに映し出されるドライブレコーダーの録画。
Mちゃんは我が家の目の前で立ち止まり、家に向かって手を合わせて祈ってくれてた。
長い時間ではなかったけれど、目をぎゅっとつぶって、一生懸命祈ってくれていた。

数日後の週末には運動会の予定があり「元気になれ!早く元気になれ!」と華奢な体でありったけの力をこめたMちゃんの祈りに、ただただ涙が流れた。

我が家のドライブレコーダーに映ったのは、事故でも、当て逃げでも、車上荒らしでもなかった。

そこに映っていたのは、これ以上ないぐらいの、純粋な優しさだった。

grape Award 2018 佳作
タイトル:『あの日ドライブレコーダーに映っていたのは』
ペンネーム:えっせんす

『心に響く』エッセイコンテスト『grape Award 2018』

grapeでは2017年よりエッセイコンテスト『grape Award』を開催しています。2018年には昨年を大きく超える695本のエッセイが集まりました。

その中から最優秀賞・1作品、タカラレーベン賞・1作品、優秀賞・2作品、佳作・4作品が選ばれました。

入選したその他の作品は、こちらからご確認いただけます。

『grape Award』に関して詳細はこちら。


[構成/grape編集部]

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