祖父との別れ 祖母の「最後の一言」で、会場が大きな笑いに包まれた理由【grape Award 2019 入賞作品】
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grapeでは2019年にエッセイコンテスト『grape Award 2019』を開催。『心に響く』をテーマにした多くのエッセイが集まりました。
今回はそんな心に響くエッセイの中から、優秀賞に選ばれた『最後に一言』をご紹介します。
最後に一言
4年前の3月、熊本のじいちゃんが突然亡くなった。
病名は難しくて覚えてないが、突然難病にかかってしまった。
年末に足先の異変を訴えたが、かかりつけ医にはわからなかった。
痛みにたまりかねて行った大きい病院で検査を受け、病気が発覚した時には既に手遅れの状態であった。
そこからはあっという間に悪化していき、呼吸も出来なくなり、いよいよ危ないかもしれないという段階で母から連絡をもらった。
その頃私は、海外赴任の帯同で国内におらず、赴任後半年経っていたのに、何故かビザがまだおりていないという状態だった。
すぐに日本に帰りたいのにビザがないため帰国できず、何回も大使館に出向きなんとか特別ビザを貰えたのは、じいちゃんが亡くなった直後だった。
すぐに航空券をとると、1歳すぎの子供と2人、熊本へ向った。
まさか海外から葬儀に出ることなど想像してもいなかったので喪服もなく、海外の店で黒いワンピースと靴を買い、1番早い飛行機で日本に着くと、関西空港で乗り継ぎ、熊本空港からはタクシーにのり、なんとか葬儀の途中に滑り込んだ。
親戚のおばさんが、「あんた達が入ってきた時、ぱぁっと式場が明るくなったよ。じいちゃん、喜んでくれたんだね。」と言ってくれて、少しだけ救われた気がした。
孫の中であたしだけ、死に目に会えなかったからだ。そして、それをじいちゃんはとても気にしていたという。
「間に合わなくてごめんね、じいちゃん。ひ孫にも、もう一度あってほしかったよ。」
心の中で、そうつぶやいた。
葬儀が終わり、通夜、告別式と記憶はほとんどないが、滞りなく進んでいった。
そしていよいよ火葬の時、みんなで花や手紙、思い出の品などをじいちゃんの棺に入れ、涙ながらに最後のお別れを迎えた。
司会の方が「それでは、喪主様より最後に一言を。」と、ばあちゃんにマイクを向けた。
その時、ばあちゃんはマイクを受け取ると、迷うことなく
「じいさん、最後に一言。」
と、じいちゃんに向けて差し出した。
一瞬の沈黙の後の大爆笑。
「ばあちゃん、じいちゃんもうしゃべれんけん。」
「ばあちゃんから言わないけんとよ。」
あんなに笑った葬儀は記憶にない。
さすが、普段から天然ボケのばあちゃん。
ここでもボケるとは、やってくれる。
おかげで悲しみに暮れていたしめやかな空気から一変して明るい送り出しになった。
あの時はほんとうに心から笑った。
時間が経って思い返すと、しっかり者のじいちゃんに頼りながら生きてきたばあちゃんの、ほんとうに自然な行動だったのだと気づかされた。
「じいさん、最後に一言。」
もしかしたら、じいちゃんもそっと答えていたかもね。
2人が歩んだ生き様を感じて、心から泣けた。
grape Award 2019 優秀賞
タイトル:『最後に一言』
作者:森山 来妙
『心に響く』エッセイコンテスト『grape Award 2019』
grapeでは2017年よりエッセイコンテスト『grape Award』を開催しています。2019年には13歳から83歳までの幅広い年齢層から、567本ものエッセイが集まりました。
その中から最優秀賞・1作品、タカラレーベン賞・1作品、優秀賞・2作品が選ばれました。
入選したその他の作品は、こちらからご確認いただけます。
grape Award 2019 『心に響く』エッセイコンテスト 入賞作品一覧
ラジオで受賞作品を、音楽とともに
2019年12月30日16時30分より、ラジオ番組『grape Award~心に響くエッセイ2019~』がニッポン放送でオンエアされました。
『grape Award 2019』の受賞作品を、人気アナウンサーが作品のイメージに合う音楽が流れる中、朗読。
また、ニッポン放送で番組放送中の清水ミチコさん、原田龍二さん、安東弘樹さんといった豪華なゲストが出演しました。
放送の様子はradikoから、お聴きください。
radkoで『grape Award~心に響くエッセイ2019~』を聴いてみる。
※2020年1月6日までお聴きいただけます。
「目で読む」のとはまた違う感動が得られる『耳で聴くエッセイ』をぜひお楽しみください。
[構成/grape編集部]