手を合わせて祈ることは、神様に覚悟を伝え、誓いを立てること
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
祈りは神様との約束
新しい年へ。慌ただしい大晦日が暮れ、街は静かになる。そして日付が変わると、なぜかそれまでの空気が清まった感じがする。
一年の始まりと終わりには、何か不思議な流れがあります。カウントダウンで賑わう街でも、誰もが新しい年へと気持ちもリセットすることを期待しているのでしょう。
年をまたいでお参りをする二年参り。日付が変わる少し前に家を出て、家族で二年参りをしたものでした。
ずいぶん昔のことですが、二十代の初め、作詞家になろうと決心して毎晩遅くまで勉強をしていた頃です。神様との向き合い方が変わりました。いわゆる『願掛け』『願う』という気持ちではなく、気づくとただただ必死に手を合わせ神様に誓っていたのです。
少し大袈裟に聞こえるかもしれませんが、作詞の勉強は私にとってまさに人生の受験勉強でした。自分の特性を生かして生きていく大きなチャレンジをするために、自分で自分にプレッシャーをかけました。
例えるなら、向こう岸に橋を渡せるかどうか……そんな気持ちです。
「神様、頑張りますからどうか見ていてください」
手を合わせながら、心の中でただこれだけを神様に伝えました。何度もその言葉を繰り返しながら、胸が熱くなっていきました。このとき神様に参拝するとは、感謝をして、覚悟を伝えることだと思ったのです。
お願い事を並べるのではなく、所信を表明するのだと。すると、より気持ちが強くなる。あきらめない心に薪をくべるような感じです。
神社の境内では火が焚かれていました。パチパチと音を立てながら、火の粉が空に昇っていく。人々の祈りを天に届けているようです。
あの頃の真夜中のシンとした深い寒さ。そしてずいぶん昔のことになりましたが、あのときの静かな高揚感をいまでもよく憶えています。
祈り、覚悟を伝えながら胸が熱くなり、時に涙がこぼれる。生かされていることへの感謝を伝えながら泣きそうになる。そのときに、祈りは自分の中に力となって宿るのです。
新しい年に誓いを立てる。そして神様と約束をする。お願いは、「頑張りますから見ていてください」と。2020年は厳しい年でしたが、この厳しい体験を礎に、2021年を力強くまいりましょう。
※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」