深夜徘徊する少年 補導のため警察官が追いかけようとしたら…?【実話】
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警察官「なんで盗まなかったの?」 財布を届けた男性への一言に「これは納得だわ」「ごめん、笑ってしまった」落ちていた財布を拾った男性。警察に届けたら、失礼な一言を告げられて?
深夜の街は、昼間とは違う静けさがあり、ガラリと雰囲気が変わります。もちろん地域差はありますが、夜間は犯罪の温床になることも…。
公園やコンビニエンスストアの前などで、たむろしている若者がいると「ちょっと怖いな」と感じる人もいるかもしれません。
本記事では、元警察官の筆者が経験した『少年たちとのエピソード』を紹介します。
深夜の『リアルケイドロ』が勃発!
筆者が警察官として神奈川県内をパトロールをしていたある夜のこと。
時計の針は23時を回り、通りには人影もほとんどありませんでした。
公園の前を通りかかると、中学生くらいの5〜6人の少年が、筆者を見るやいなや、大声で笑いながら一斉に逃走。
補導の時間帯にあたるため、このまま出歩くのを見過ごすわけにはいきません。思わず走って追いかけ、「コラー!出てこい!」と声を張り上げました。
深夜の公園で突如、『リアルケイドロ』がスタート。
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走って追いかけまわしていた矢先、怯えた表情の少年が1人、「ごめんなさい」と出てきました。
筆者は厳しく叱ります。「なぜこの時間に出歩くのがいけないのか」「出歩くことでどんな危険があるのか」ということを伝えることで、危機感を持ってもらうためです。
筆者の流儀として、恐怖だけを与えても意味がないため、最後は必ず優しく諭すことを心がけていました。
厳しく叱責した後に「心配だからもうしちゃいけないよ」と寄り添うことで、自らの反省をうながすのです。
そのためにはまず、しっかり叱らないといけないので、心を鬼にして少年に「スマホで全員呼び出せ!」「ここで待ってろ!逃げんなよ」と言って、筆者はほかの少年を探しに行きました。
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少年たちを厳しく叱った後の珍事件
走り出した筆者のすぐ目の前には、公園でよく見かけるチェーンがありました。
そのチェーンのたるんでいた部分を勢いよく飛び越えた瞬間、空中でハッとします。
飛び越えようとしていたのは、たるんだ部分ではなく、もっともピンと張った部分でした…!暗くて見間違えたのです。
当然足にチェーンが引っかかり、顔面から盛大なヘッドスライディング。怯えていた少年の前で派手に転倒しました。
カッコ悪い姿を晒した筆者は「ごめん、先にネタバラシするけど…」と前置きして、「さっきはわざと大げさに怒ったんだ。最後はみんなで笑って帰ろうな」と伝えました。
少年は困惑しながらも少しずつ表情を緩め、「僕も一緒に探します!」と言って仲間探しに協力してくれたのです。
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非行を繰り返させないためには…
改めて、集まった少年たちを全員叱ると、真剣に耳を傾ける子、怯える子、涙を流す子もいたのが印象に残っています。
最後は優しく諭し、先ほどの『転倒話』をして笑わせ、少年たちを帰宅させました。
それ以降、筆者がこの地域の警察署に所属していた2年間、深夜の公園で叱った少年たちの姿を見ることは一度もありませんでした。
ドジでカッコ悪い夜でしたが、大切なことは確かに彼らに伝わったのでしょう。
感情に任せて怒るのではなく、『相手を思って叱ること』こそ、人の心に届く。この時学んだことは、警察官を辞めて一般の社会人として生活する中でも大切にしています。
記事執筆 りょうせい
元警察官。警察歴10年。
交番勤務を経て、生活安全課の捜査員として勤務。
行方不明やDVなどの「人身関連事案」を対応しつつ、防犯の広報・企画業務を兼務。
現在は警察の経験を生かし、Xや音声配信(StandFM)にて、防犯情報を発信中。
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[文・構成/りょうせい]