警察と企業、どっちがやりがいがある? 両方で働いた元警察官の『本音』とは…
公開: 更新:

※写真はイメージ

深夜徘徊する少年 補導のため警察官が追いかけようとしたら…?【実話】深夜の街は、昼間とは違う静けさがあり、ガラリと雰囲気が変わります。もちろん地域差はありますが、夜間は犯罪の温床になることも…。 公園やコンビニエンスストアの前などで、たむろしている若者がいると「ちょっと怖いな」と感じる人...

「サングラスをなくした」と交番へ駆け込んだ男性 続く展開に、警察官が爆笑【実話】交番に寄せられる相談の中で、もっとも多いのは落とし物です。 警察官にとっては数多く取り扱う事案の1つでも、落とし主にとっては胸が締めつけられる一大事です。 大切なものをなくしたショックと不安を抱えながら、勇気を振り絞って...
警察官として10年間勤めたことがある筆者。現在は退職し、一般企業で働いています。
どちらの世界にも身を置いてみて感じたのは、常識や文化がまったく違うということ。
時にカルチャーショックを受けることもありますが、どちらにもよさがあり、どちらも尊い仕事だと感じています。
今回は、警察と企業の『違い』を実体験を振り返りながら、感じたギャップやそれぞれの魅力を紹介したいと思います。
元警察官が会社員になると?
まずは筆者のちょっと笑えるエピソードを紹介します。
「チカンしたらいいんじゃない?」
ある日、同僚からパソコンの画面を見ながら「これはさ、チカンしたらいいんじゃない?」と言われました。
筆者は思わず、「ちょっと冗談やめてくださいよ」と言ってしまいましたが、同僚は「えっ?」と困惑した様子で返答。
警察時代、筆者は女性被害者の捜査を担当していたこともあり、『置換』と聞いて即座に『痴漢』を連想してしまったのです。
その場は笑いに包まれましたが、筆者にとっては冷や汗もの。『置換』という便利なワザを、この会社で初めて知りました。
それくらいパソコンのスキルが低かったのだと思います。
※写真はイメージ
筋トレ関連の言葉?
似たような勘違いはほかにもあります。『PDCA』という言葉を初めて聞いた時、筆者は「何かの成分かな」と思いました。
警察で聞き慣れているアルファベット4文字といえば『BCAA(アミノ酸)』。
警察では身体を鍛えることも仕事のうちだったので、筋トレ関連の言葉には詳しかったのです。
『PDCA』が業務改善のフレームワークと知った時には、まるで別の国の会話をしているような感覚でした。
「了解!」を使わなくなり…?
会社員になった現在では、警察時代とは『受け答え』も変化。
ある日、警察時代の先輩と会った時、頼みごとをされて「承知しました!」と返したところ、先輩に「今の返答で警察を辞めたんだと実感した」と言われました。
当時は、やりとりもスピード重視の場面が多く、基本的には「了解!」が口癖だったので、「承知しました」と言われて面食らったらしいです。
一般企業で感じた『自由』という選択
一般企業に勤めてよかったことは、とにかく時間を自由に使えることです。
「明日、泊まりがけの旅行に行こうかな」「今日、お酒を飲もうかな」と思い立って行動できます。
この『気まぐれの自由』が、こんなにありがたいものだとは知りませんでした。
警察時代は、休日でも事件が起きれば夜中でも呼び出される生活。どれだけ休んでも、頭の片隅には常に『仕事』がありました。
今はようやく、心から休める『休日』を味わっています。
※写真はイメージ
もう1つは、毎日家で眠れることの幸せです。警察には必ず当直勤務があり、仮眠は数時間。事案が入れば一睡もできずに朝を迎えることもありました。
ある夜、立ったまま同僚に報告をしていた時、あまりの眠気から会話の途中で気絶したことも…。
「…えっ?なに?」と目を覚ました自分に、同僚が苦笑いしていたのを今でも覚えています。今は自宅のベッドでぐっすり眠れることが、何よりのご褒美です。
警察で得た『人を見る力』と唯一無二の誇り
一方、警察官を経験してよかったことの1つは、人を見る目が養われたという点。
心理学を学んだわけではありませんが、10年間さまざまな人と向き合う中で、表情やしぐさ、言葉と言葉の間から『心の動き』を感じ取る力が自然と身につきました。
「今の話題は関心がありそう」「この話は触れられたくなさそう」など、相手の微妙な変化を読み取る力は、警察で培った宝物です。
※写真はイメージ
もう1つは、警察の仕事そのものが『唯一無二』だということ。
人を守り、悪を正し、事件を解決するという使命感は、どんな仕事にも代えがたいものでした。
企業でも感謝されることはありますが、被害者や住民から直接言われる「ありがとう」は、重みがまったく違います。その充実感は、警察でしか味わえないものでした。
防犯アドバイザーとして活動する今も、人の役に立ちたいという気持ちは変わりませんし、役に立っているという実感は得られています。
ただ時々、あの制服を懐かしく、恋しく思う時はあるのです。
警察と企業、それぞれの現場にある『誰かを守る力』
前述の通り、それぞれによい部分がある警察と企業。警察は厳しさの中で人を守り、企業は自由な発想で社会を支えています。
どちらも『誰かのために働く』という意味では同じ。形は変わっても、人の役に立つ仕事はできるのです。
警察官として過ごした日々が、今の筆者の活動にも生きています。
本記事を読んで少しでも「警察官も大変な中で、住民のために頑張っているんだな」と感じてもらえたら、現職の警察官たちにとっても励みになるでしょう。
もちろん、中には「あまり感じがよくないな…」という警察官もいるかもしれません。
それでも、誰かを守ろうと本気で向き合っている警察官がたくさんいることが、少しでも伝われば嬉しいです。
記事執筆 りょうせい
元警察官。警察歴10年。
交番勤務を経て、生活安全課の捜査員として勤務。
行方不明やDVなどの「人身関連事案」を対応しつつ、防犯の広報・企画業務を兼務。
現在は警察の経験を生かし、Xや音声配信(StandFM)にて、防犯情報を発信中。
⇒X
[文・構成/りょうせい]