盲目の弁護士が視覚障がいの3つ子を養子に迎えた理由
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アメリカの連邦教育機関の弁護士として活躍するオリー・カントスさん。
45歳になるオリーさんは、先天性の視覚障がいを持っており、目が見えません。
フィリピンからの移民だったオリーさんは、幼少期に「目が見えない」ということを理由にいじめを受けていました。
しかし、懸命に努力し、弁護士としての地位を築きます。アメリカでは「視覚障がい者の約60%が定職に就けない」と言われていることを考えると、オリーさんがどれほど努力をしたのかが、よく分かります。
移民として異国の地に根を下ろし、視覚障がいというハンディキャップを抱えながらも、オリーさんは一歩ずつ着実に自分の道を切り開いてきたのです。そうした経験が、後に彼の人生を大きく動かすことになります。
そんなオリーさんが運命的な出会いをしたのは6年前のこと。教会で、3つ子の男の子たちの話を偶然耳にしたのです…
『人生のコーチ』になることを決意
スティーブン、レオ、ニックの3つ子は当時10歳。コロンビアで生まれ、アメリカのヴァージニア州で母のシーラさんと、祖母の5人で暮らしていました。
約450gと未熟児として生まれた彼らもまた、先天的に視覚障がいがあり、目が見えませんでした。
3人の父親は、アメリカのコロンビア領事館に勤めていましたが、任期を終えると1人で母国へと帰ってしまい、以降、音沙汰はないと言います。
シーラさんと祖母の2人だけで3つ子を支えてきた家族にとって、視覚障がいを持つ子どもたちの日々の生活を整えることは、並大抵の苦労ではなかったはずです。
盲目であることの辛さ、苦しさは誰よりも自分が一番よく分かっている
そう感じていたオリーさんは、人から伝え聞いた3つ子と会ってみようと考えます。
運命の対面…直後から3人はオリーさんを慕うようになります。そして、オリーさんも「3人をサポートしたい」と考えるようになります。
同じように目が見えない状態で育ってきたオリーさんにとって、3人の置かれた状況は他人事ではありませんでした。幼い頃に感じた孤独や不安、そして壁を乗り越えてきた経験が、オリーさんを動かしたのでしょう。
そして、オリーさんはある日、3つ子の母であるシーラさんにこう申し出ました。
「私は3人の『人生のコーチ』になりたいと思っています」
「よろしいでしょうか」
シーラさんがこれを快諾し、オリーさんと3つ子の幸せな関係がスタートしました。
養子に迎え入れ、本当の父親に
3人はこれまで母と祖母に、身の回りのさまざまなことを任せ切りで生きてきました。
学校と教会ぐらいにしか外出をしない狭い社会で生きて来た3人は、10歳にして自分の着替えすらままならなかったと言います。
そんな3人に、オリーさんは自立を促します。
自分のことは自分でやる
身の回りのあらゆることを自分で行えるように、1つずつ丁寧に教えて行ったのです。
着替えはもちろん、整理整頓や料理まで…同じ目線で導いてくれるオリーさんを信頼していた3人は、いつしかオリーさんを「父親のような存在」と認めるようになります。
目が見えないからこそ分かる工夫や日常の乗り越え方を、オリーさんは具体的に伝えることができました。「できない」ではなく「こうすればできる」という姿勢を、自らの体験を通して示し続けたのです。
そんな思いに気付いたオリーさんは、シーラさんに3人を養子に迎え、本当の意味で「父親になりたい」と伝えます。
この時、オリーさんは「シーラさんに不快な思いをさせてはいけない」ということを第一に考えたそうです。
「もし彼女(シーラさん)が『息子たちを奪われた』と感じていたら養子に迎え入れることはしませんでした」
「彼女を不快にさせることは、絶対にあってはならないのです」
シーラさんも、親身になって3人を導いてくれるオリーさんを信頼していました。
そして、シーラさんとオリーさんで親権を分け合うという形で、3人がオリーさんの養子になることを承諾したのです。
「人生のコーチ」として関わり始めてから、オリーさんは一貫して3人の意思と、シーラさんの気持ちの両方を大切にしてきました。養子縁組という大きな決断においても、その姿勢は変わりませんでした。
大人に近づいて行く3つ子
スティーブン、レオ、ニックの3人は16歳になりました。
オリーさんによると、スティーブンは真面目、レオは大らか、ニックは短気と性格はそれぞれ異なると言います。しかし、彼らは少しずつ、着実に自立への道を歩んでいます。
10歳の頃に自分の着替えもままならなかった3人が、今では料理をこなし、社会の場へと踏み出しています。その変化は、オリーさんが6年間かけて積み上げてきたものでもあります。
時には、オリーさんの仕事に同行し、社会勉強をすることも。
オリーさんと3つ子は周りから見ていると、本当の親子にしか見えません。
「血が繋がっているか、いないか」といったことではなく、互いを信頼し合う彼らの関係は、本当の意味での親子と言えるのではないでしょうか。
自分の道を自ら切り開いていったオリーさんの背中を見て育った3人の若者が、“父親”のように自立した人間になることを、オリーさんとシーラさんは確信しています。