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「最大の英雄だった」 銃撃で死亡の中村哲医師、アフガンの医療・灌がい事業に貢献

By - grape編集部  公開:  更新:

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2019年12月4日午前、アフガニスタン東部ナンガルハル州ジャララバードで現地で農業支援などの活動をしていた日本人医師、中村哲さんの乗る車が武装勢力に銃撃。

中村さんは銃弾を受けて地元病院に運ばれましたが、その後死亡が確認されました。

産経ニュースによると、車に同乗していたボディーガードと運転手のアフガン人5人も銃撃で死亡。犯人は現場から逃走し、警察当局が行方を追っているといいます。

犯行声明はなく、イスラム原理主義勢力タリバンは関与を否定する声明を発表しており、イスラム教スンニ派過激組織『イスラム国(IS)』の関与が疑われているそうです。

中村さんは同日朝に宿舎を出発して、25㎞ほど離れた用水施設の工事現場に向かうため、ジャララバード市内を車で移動中でした。

右胸に銃弾を受け、地元病院に搬送された際は意識があったそうですが、首都カブールで治療を受けるため、カブール北方のバグラム米空軍基地に搬送される途中に亡くなったといいます。

貧困層への医療活動、灌漑(かんがい)事業に貢献

中村さんはNGO組織『ペシャワール会』(福岡市)の現地代表で、1984年からパキスタンで貧困層の診療や医療教育に携わってきました。

2000年にアフガニスタンで大干ばつが発生した際は、感染症が蔓延し乳幼児らの犠牲者が続出。惨状を目の当たりにした中村さんは、水源確保のため井戸を掘る事業にも携わるようになったといいます。

産業が少なく、若者がゲリラに身を投じざるを得ない情勢の中、一連の事業は200万人もの雇用を生み出しました。荒れた大地が緑化し、周辺では農業の再開も進んでいるそうです。

現地で灌漑事業の指導にあたっていた中村さんを称え、2018年には『最大の英雄』『最も勇敢な男』としてアフガン政府から勲章を授与されました。

現地では悲しみの声相次ぐ

産経ニュースによると、アフガンのガニ大統領は「人々は彼の仕事をいつまでも覚えているだろう。このような残虐行為は、アフガンの進歩と繁栄のために働くという国民と国際的パートナーの決意を阻止することはできない」と声明を発表しています。

長年の活動で現地住民からの信頼も厚く慕われていた中村さん。アフガンの首都カブールでは市民から悲しむ声が上がっています。

中村さんを知るムシュタク・ラヒムさんは「中村さんは不毛な土地を耕作可能な土地に生まれ変わらせた。アフガンのために尽力してくれたのに殺害され、私の良心は泣いている」とコメント。

また、SNS上でも事件を伝えるニュースを転載する投稿や「今日はアフガニスタンの暗黒の日」などと、事件を強く批判する声が多く寄せられているといいます。

日本からも、ニュースに対して多くの哀悼のコメントが寄せられました。

・人に尽くした人が、人の暴力によって命を落とすなんて、強い怒りと不条理を感じます。

・こういう人にこそ、国民栄誉賞が贈られるべきだと思う。

・平和のために生きた聖人のような方でした。慎んでご冥福を祈ります。

・この方が残した功績の種子はよい実を結びいつかアフガンに平和をもたらすと思います。天国で安らかに。

ペシャワール会の理事・福元満治さんは、産経ニュースの取材に対し「信じられない。無念」と悲痛な想いを吐露しながらも「このことによって、この事業が中止になることはない。あくまでも事業を継続する。それが中村医師の遺志だろう」と力を込めて答えました。


[文・構成/grape編集部]

出典
産経ニュースペシャワール会

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