「みんなうまく潰せなかった」 アレを食べるスプーンに「初めて知った」
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- 取材協力
- 燕物産株式会社
イチゴをつぶす機能がついていおり、イチゴミルクを作る時などに活躍する『いちごスプーン』。
かつてブームになった懐かしのアイテムですが、令和の今、再び人気が出ているのを知っていますか。
『いちごスプーン』の開発秘話を知るべく、燕物産株式会社(以下、燕物産)の専務取締役である、捧開維(ささげ・かい)さんに話を聞きました。
1751年創業の燕物産は、新潟県燕市にある日本初の金属洋食器メーカーです。数々のカトラリーを製造・販売しており、高級レストランに納品実績のある『いちごスプーン』を生み出しました。
『いちごスプーン』が生まれた理由
――『いちごスプーン』製造のきっかけは?
昭和の時代、イチゴは品種改良が進んでおらず、今よりもすっぱいものでした。
生でそのまま食べるにはおいしくないことが多く、皿に牛乳とイチゴ、砂糖を加えた後、イチゴをスプーンで潰しながら混ぜて食べていました。
スプーンのヘッドの裏で潰していましたが、丸いイチゴを膨らんだヘッドで潰そうとしても、安定せず転がってしまい、うまく力を加えることができません。
非常に使いにくく、手間だったものを解決できないかと考え始めたのがきっかけです。
『いちごスプーン』のヘッドの裏にはイチゴの模様が!(燕物産株式会社提供)
――製造にいたるまで大変だったことは?
ヘッドの膨らみをどのように変形させるのか、試行錯誤の連続でした。
ただ平らにするだけでは、転がってしまい解決になりません。わずかですが、逆に凹ませることでフィットさせることに成功しました。
形状の目処がたった後、硬いステンレス材でどのように再現させるかも大きな壁に。
無理に力を加えると、金属であっても割れてしまいます。また、金型に負荷がかかるため、壊れやすく、修理ばかりで量産が難しかったそうです。
――『いちごスプーン』はなぜ人気商品に?
やはり、日常のお困りごとを解決するアイテムは評判を呼び、口コミで広がったのだと想像しています。
どのご家庭でも1本は必ずあるアイテムになるまで人気になりました。
――先割れタイプと割れていないタイプがあるが、種類が増えた理由は?
先割れタイプを開発したのは、私の祖父である9代目・捧吉右衛門です。
最初に開発した『いちごスプーン』は、先が割れていないタイプ。祖父は潰して食べる際、イチゴを刺して食べる動作があることに気付きました。
そこで、スプーン1本で食べられるよう『先割れ』という刺す機能を追加。
イチゴを刺せる尖りを持たせつつ、ケガをしないように丸めなければならないのは、かなりの工夫が必要だったそうです。
『いちごスプーン』(燕物産株式会社提供)
――『いちごスプーン』のバリエーションはほかにもある?
ヘッドの種類は、ノーマルタイプと先割れタイプの2種類です。
持ち手の部分である、ハンドルには複数のデザインがあり、弊社のオンラインショップで購入できる『Status』シリーズだけでなく、『月桂樹』『Quartz』『Current』『Polka Dots』『Fleru』シリーズなどが存在します。
――イチゴ用以外にも、フルーツ用に作られたスプーンはある?
『いちごスプーン』と同じように、日本で生まれたカトラリーがあります。
例えば『グレープフルーツスプーン』。今では、グレープフルーツは切って皮を剥いて食べていますが、昔は半分に切ってそのまま、スプーンでくり抜いて食べていました。
『グレープフルーツスプーン』は果実をくり抜けるように、ヘッド部分の縁がギザギザなのが特徴。果肉は切れるけれど、口は切れないようにすることは大変でした。
『メロンスプーン』と『スイカスプーン』もありますが、実は両方とも同じもので、『パフェスプーン』とも呼ばれます。
ハンドルが非常に長く、ヘッドが小さめ、先割れタイプになっているのが特徴。先割れの部分を使い、種を取り除いて食べます。
グレープフルーツスプーン(燕物産株式会社提供)
――今も果物用のスプーンは売られている?
カトラリー専門メーカーとして、すべて金型があり製造が可能です。最近では『いちごスプーン』が再注目され売れています。
メロンスプーン。別名スイカスプーン(燕物産株式会社提供)
――懐かしむ人が増え、またブームが広がりつつある?
この3~5年ぐらいに少しずつブームになっている感じがします。弊社のInstagramでもプチ反響がありました。
昭和レトロ、純喫茶ブームが追い風なのではと予想しています。
人気が再燃しつつある『いちごスプーン』。「初めて知った」という人はこの機会に懐かしのアイテムを使ってみてはいかがでしょうか。
[文/キジカク・構成/grape編集部]