「もし修理業者がやって来たら…」 元警察官が注意を呼びかけ【震災時の防犯】
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「これは本当に大切」「常識になってほしい」 『7万いいね』を集めた注意喚起とは厳しい冷え込みの日が増えてきた、2025年12月上旬現在。商用車メーカーに勤務している、@trucknakanohitoさんが、Xに投稿した『ある注意喚起』が話題になっています。






2025年12月8日、青森県で大規模な地震が発生し、不安な日々を過ごしている人も多いのではないでしょうか。
余震や避難所での生活など、落ち着かない環境の中での生活が続いていることと思います。
そんな混乱や不安の最中、残念ながら『その隙につけ込む犯罪』が発生してしまうことがあります。
災害時は地域全体が不安と疲れに包まれ、普段とは異なる状況に置かれることで、思わぬトラブルに巻き込まれやすくなるのです。
これは、誰にでも起こり得ることですが、今回のテーマは不安をあおるためのものではありません。
過去の災害では実際にどのような犯罪が起きたのか、それに対してできる備えは何か…。
それを知っておくことで、被害を防げる可能性は確かに高まります。
今は、地域みんなで声をかけ合いながら、できることから守りを固めていくことが大切です。
今回は、過去の災害で実際に起きた犯罪の事例と、その対策について、元警察官である筆者の視点からお伝えします。
SNSの投稿が呼び込む『空き巣』のリスク
「災害時、不安な気持ちを誰かに聞いてほしい…」という思いから、SNSに「避難所に来ています」「自宅が倒壊しました」などと投稿したくなる気持ちは、痛いほど分かります。
緊張が続く中で、気持ちを吐き出すことはとても大切ですし、周囲の温かい声に救われることもあるでしょう。
しかし、その投稿内容によっては『家が長期間空いている』という情報を、犯罪者に与えてしまうことがあります。
実際、2011年に発生した東日本大震災では、SNSに投稿された『避難中』『家に戻れない』といった情報を基に、空き巣が行われた事例が確認されています。
投稿から位置や生活状況を割り出され、長期間不在と判断された家が狙われたのです。
SNSでは以下のような情報が組み合わさり、家の場所や生活状況が推測されてしまうことがあります。
・投稿の断片的な内容。
・写真に映り込んだ背景。
・過去の投稿の位置情報。
・コメント欄のやり取り。
吐き出したい気持ちは大切にしつつ、住所や行動が推測できる情報を避ける、写真の背景に注意するなど、少しの配慮が自分と家族を守る力になります。
災害時こそ、SNSの使い方が防犯の分かれ道になるのです。
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家屋の修繕を装った詐欺や偽ボランティアに注意
地震によって家屋が倒壊したり、屋根が損傷したりすると、不安につけ込むように近づいてくる人がいます。
「無料で修理します」「見回りのボランティアです」と声を掛けて家に上がり込み、金品を盗む、あるいは高額な修繕費を請求するといった詐欺や窃盗が、過去の災害でも実際に発生してきました。
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特に注意したいのが『屋根の修繕』です。屋根は地上から状態を確認しづらく、専門知識がなければ損傷の程度を判断できません。
この見えにくさを逆手に取り、わずかな作業をしただけで「修繕しました」と説明し、後から高額な費用を請求する手口が報告されています。
被害に遭わないためには、以下のような点に注意することが重要です。
・名乗った団体が実在するか確認する。
・官公庁の職員を名乗る場合は、所属と氏名を照会する。
・修繕を依頼する際は、現状と進捗を写真で残し説明を求める。
・家屋に詳しい人に相談し、1人で判断しない。
・突然の訪問者とは玄関先で対応し、家には入れない。
少しでも違和感を覚えたら、ためらわずに警察へ相談・通報してください。
「もし違ったら申し訳ない」と思う必要はありません。災害時は判断が難しい場面が多いため、その後の確認は警察が行います。
避難所では『お互いを守り合う意識』で守る
避難所には多くの人が出入りし、普段接点のない人と生活をともにすることになります。
そのため、所持品の紛失や盗難などのトラブルが起きる可能性も…。
貴重品は肌身離さず持ち歩き、荷物だけを置いて席を外すことは避けましょう。
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また、出入りする人をさりげなく観察し、『見慣れない人が紛れていないか』『不審な行動がないか』という点に目を向けることも大切です。
何より効果的なのは、周囲の人と声をかけ合い、お互いを避難者として認識し合うこと。
誰が同じ空間で過ごしているのかが共有されるだけで、防犯効果が高まり、安心して過ごせる環境づくりにつながります。
大切なのは1人で悩まないこと
災害時は、不安や緊張の中で「少し気になる」「なんとなく違和感がある」と感じる場面が増えます。
そんな時は、ためらわずに警察へ通報してください。
「大げさかな…」と躊躇(ちゅうちょ)せずに、判断が曖昧でも、大きくとらえた通報で問題ありません。その後の整理や確認は警察が行います。
不安な状況だからこそ、1人で抱え込む必要はありません。
周囲の人や警察に頼り、勇気を持って声を上げることが、自分自身と地域を守る大きな一歩になります。
地域の力、そして警察の力を合わせて、不安につけ込まれる隙をつくらないようにしていきましょう。
[文・構成/りょうせい]