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有給休暇の買い取り、法的にアリ? 専門家の回答に「そうだったのか」

By - ことのは  公開:  更新:

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有給休暇

※写真はイメージ

年度末が近づくと、「今年も有給休暇を使いきれなかった…」と嘆きながらカレンダーを見ている人もいるでしょう。

SNSでも「使い切れなかった有給休暇を会社に買い取ってほしい」といった投稿が多く見られます。

多くの会社員が一度は夢見る、有給休暇の買い取り。

それは、単なる願望なのでしょうか。それとも、実現可能な裏ワザがあるのでしょうか。

社労士「原則として、認められていませんが…」

大阪府茨木市で、社会保険労務士法人こころ社労士事務所を運営する香川昌彦さんに、話を聞いてみました。

――余った有給休暇を、会社に買い取ってもらうことは可能ですか?

原則として『これから取得できる有給休暇』を、事前にお金で買い取ることは法律で禁止されています。

なぜなら、有給休暇は、労働者の心身のリフレッシュを目的とした『休むための権利』だからです。

お金を渡す代わりに「有給を使わずに働いてね」とすることは、この権利を奪うことになってしまうため、認められていません。

休暇届の書類とプラカードの写真

※写真はイメージ

――では、買い取ってもらえるケースは、一切ないのでしょうか?

例外も存在します。

まず、退職が決まり、残った有給休暇を消化しきれない場合、退職日以降は『休む権利』を行使できなくなるため、残った日数を会社が任意で買い取りできます。

また、有給休暇が付与されてから2年経過すると、時効となるため『休む権利』が消滅します。

この消滅してしまった過去の有給休暇も、会社が買い取り可能です。

さらに、法律で定められた日数(法定日数)を超える、会社独自の休暇については、会社が自由にルールを決められます。

就業規則などで『法定日数を超えた分は、年度末に買い取る』といった定めがあれば、それに従って買い取ってもらえます。

――どのケースでも、必ず買い取ってもらえるのですか?

いいえ、そこが重要なポイントです。

上記のいずれのケースにおいても、会社に買い取る義務があるわけではありません

あくまで、会社と従業員、双方の合意があって初めて成立するものです。

特に退職時は、引き継ぎの都合などで有給を消化しきれない場合、買い取りをお願いできるか、上司や人事部に一度相談してみる価値はあるでしょう。

一番は、やっぱり『休む』こと

有給休暇の買い取りは、不可能ではありませんが、退職時など特別な場合にのみ認められ得る、例外的な措置です。

一番大切なのは、買い取りを期待するような状況になる前に、計画的に有給休暇を消化することでしょう。

旅行の計画を立てる女性の写真

※写真はイメージ

もちろん、そのためには、会社や同僚との協力は欠かせません。

「休むのは権利だから」「人手が足りないから」と一方的に主張せず、お互いの状況を尊重し、歩み寄る姿勢が大切です。

「休むのも仕事のうち」とよく言いますが、リフレッシュしてこそ、また新たな気持ちで仕事に向き合えるもの。

買い取りを期待するよりも、まずは次の休みにどこへ行こうか、何をしようかと、楽しい計画を立ててみてはいかがでしょうか。


[文・取材/ことのは 構成/grape編集部]

香川昌彦さんの顔写真

監修・取材協力 香川昌彦

社会保険労務士法人こころ社労士事務所 代表社会保険労務士
大阪府茨木市を拠点に、就業規則の整備や評価制度の構築、障害者雇用や同一労働同一賃金への対応などを通じて、労使がともに豊かになる職場づくりを力強くサポート。
ネットニュース監修や講演実績も豊富でありながら、SNSでは「#ラーメン社労士」として情報発信を行い、親しみやすさも兼ね備えた専門家として信頼を得ている。
HP⇒こころ社労士事務所 Instagram⇒ibaraki_sharoshi_kokoro

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