真夏に置かれたクーラーボックス 持ち主の男性が亡くなった後…
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ここ数年、世界ではあちこちで記録的な猛暑に見舞われています。熱中症にならないように、野外での活動を控えたり、水分補給したりするなど対策は知られていますが、仕事柄エアコンのない場所で働かなくてはならない人も多くいます。
アメリカのニュージャージー州に住むチャーリーさんは2010年の夏の暑い日、ゴミを収集に来た作業員が青白い顔で汗だくになりながら彼の家のゴミを回収しているのを目にします。
チャーリーさんは急いでキッチンへ行き、水の入ったジャーと数個のプラスチックのコップを手に取り、作業員たちに渡したのです。
その日の午後、チャーリーさんは店に行き、たくさんのボトル入りの水と氷を購入。翌朝、クーラーボックスに水と氷を入れて家の前の木陰に置きます。
そしてやってきた作業員に「ここに冷たい水があるから、いつでも飲んで休んでください」と伝えたのです。
労働者たちを癒す『チャーリーのクーラーボックス』
その日から夏の間ずっと、チャーリーさんの家の前にはクーラーボックスが用意されていました。
そしてこのクーラーボックスのことを知ったゴミ収集作業員を始め、警察官や消防隊員、建設作業員らが立ち寄っては、冷たい水と木陰でしばしの休憩をとるようになったといいます。
チャーリーさんはそれから毎年、夏になるとこのクーラーボックスを用意し続けました。
しかし2018年3月、彼は心臓発作により帰らぬ人となってしまったのです。
亡き夫の遺志を継いで
チャーリーさんがいない2018年の夏。彼の家の前には、いつものクーラーボックスが置かれます。
そこには、こんなメッセージが添えられていました。
ご存知ないかたのために。夫のチャーリーは3月10日に心臓発作のため57歳で急逝しました。
私は彼が続けてきたことを、しっかりと引き継いでいきます。
チャーリーさんが亡くなった後も、妻のベルベットさんが彼の遺志を継いでクーラーボックスを用意しているのです。
6月に彼女はチャーリーさんとの思い出やこのクーラーボックスについての話をFacebookに投稿。
すると、彼の素晴らしい人柄や優しさが多くの人に知れ渡り、あちこちで『#CharliesCooler(チャーリーのクーラーボックス)』を提供する人たちが現れたのです。
またベルベットさんの元には見知らぬ人から、「チャーリーのクーラーボックスに入れてください」とたくさんのボトル入りの水が届くようになったのだそう。
6月のある日、ベルベットさんが外に置いてあるクーラーボックスに水を足して家に入ろうとした時、ゴミ収集車の音が聞こえたのだそう。彼女が振り返ると、乗っていた作業員が全員トラックを降りて一列に並び、ベルベットさんの家と彼女に向かって敬礼をしたのです。
それは亡くなったチャーリーさんと、ベルベットさんに対する畏敬の念でした。
そして作業員たちは1人ずつ、目に涙を浮かべているベルベットさんの元へ歩み寄り、彼女の手を握ってハグをし、チャーリーさんに対するお悔やみの言葉を伝えたといいます。
どんなに暑い日でも、外で働く人たちは休むわけにはいきません。また忙しい時にはたびたび冷たい水を買いに寄り道することもできないでしょう。
そんな時にチャーリーさんのクーラーボックスは、とてもありがたい存在です。
1人の男性が始めた『優しさのクーラーボックス』は、これからも多くの人たちの喉と心を潤し続けていくことでしょう。
[文・構成/grape編集部]