道行く人に無視されて、困っていたおじさん そこへ男性配達員がやってきて…?
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道路標識、縦読みすると… 1枚に「これは気付かなかった」「面白い看板」目的地の方向や距離、道路上の警戒情報などを視覚的に伝える、道路標識。普段から車を運転する人であれば、頻繁に目にするでしょう。なおき(@528_frs)さんがXに公開した道路標識の1枚に、5万件を超える『いいね』が寄せられています。
北海道のコンビニ 駐車場で撮影した1枚に「怖すぎるだろ…」「五度見したわ」北海道で男性が撮影した1枚。写った光景に道民以外が「ウソだろ…」
2020年5~8月にかけて、ウェブメディア『grape』では、エッセイコンテスト『grape Award 2020』を開催。
『心に響く』と『心に響いた接客』という2つのテーマから作品を募集しました。
『grape Award 2020』心に響くエッセイを募集! 今年は2つのテーマから選べる
今回は、応募作品の中から『配達の仕事は、人助けと思ってます』をご紹介します。
8月の猛暑、歩いているだけで溶けてしまいそうな中、私は団地を歩いていた。
この団地は新しくデザインされたところで、1階にお店や歯医者、クリニックもある。すぐ横には大きなイオンモールがあり、子育て世帯も多く暮らす。
私がイオンへ歩いていると、足を引きずったおじさんが、通りがかる人に声をかけていた。でも、みんな通り過ぎてしまう。
おじさんは汗を拭きながら困った表情。あまり見ない顔だし、暑い炎天下だから、みんな自分のことに必死、誰も足を止めない。
そこに、いつも団地を回ってくれている宅配の配達員さんが通りかかった。
彼はおじさんのほうに寄って行って何か話をし、小走りでその場をあとにした。
そしてすぐに台車をガタガタと押しながら走ってもどってきて、なんとその台車におじさんがちょこんと腰かけた。どういうことだろう?
配達員さんはゆっくりと台車を押し始めた。私は驚き、向かう方向が一緒だったこともあって、様子を見ることにした。
配達員さんは、あの緑の帽子と制服を着ているし、通常荷物を運ぶ台車におじさんが座っているという不思議な光景で、周囲の人もちらちらと見ていた。
二人はそんな視線を気にする素振りもなく、そのままイオンに入り、エレベーターで2階へ、何かを探しているようだ。
そして、イオンの中にある小さな整形外科の前で台車を止めた。おじさんはゆっくりと立ち上がり、病院の前の椅子へ座り直し、泣きそうな顔をして言った。
「こんなに親切にしてもらったのは、生まれて初めてだ。本当に助かった。痛くてとても歩けなくて、どうしようかと思ってたんだ」
配達員さんは笑顔でこう返した。
「よかったです。とても痛そうだったから、何かできればと思ったんです。配達の仕事は人助けと思ってるんで、これも同じです」
「きみ、どこの支店に勤めているの?会社に感謝を伝える電話をしたい。ぼくにとって忘れられない出来事になった」とおじさんが言うと、「〇〇店ですが、私は社員ではなくてアルバイトですし、きっと名前言われても会社の人わからないと思います。いいんです、気にしないで下さい!」
「そうなのか…なにもお礼ができなくて申し訳ない、せめてこれで飲み物でも買って。暑いからね。本当に有難う」
汗をかいた配達員さんは頭を下げて笑顔で挨拶し、また台車を押して去っていった。私はおじさんに聞いてみた。
「どうされたんですか?」
「ここに来る前に自転車で転倒してしまって、どうも骨をやってしまったようで痛みがひどくて整形外科を探してたんだ。ぼくはネットで検索した△△という整形外科に向かって歩こうとしてたけれど、それがどこにあるかあの配達員さんに聞いたら、そこは遠いって言うんだ。足を引きずりながらこの炎天下でそこまで歩くのは大変だ、すぐ近くのイオンの中にも整形外科がある、って教えてくれてね。僕を心配して、台車まで持ってきてくれたんだよ。ちょうど手が空いたところだから、これでよければ押していけます、って。彼は、子育て中で出掛けるのが難しいお母さんに生活品を届けたり、重いものを持つのが難しい高齢の人へ届け物をして「ありがとう」って言われたりして、この仕事は人助け、親切そのものと感じ始めたらしい。だから、困っているぼくを見過ごさすに声をかけて助けてくれたんだ」
おじさんは安心した顔で私に話してくれた。
そうか。彼らの仕事には、人助け、親切という誇りが刻まれているんだ。配達員の仕事を美しいと思った。
いつも気持ちの良い挨拶と笑顔で届け物をしてくれる緑の帽子の配達員さんが大好きだ。
grape Award 2020 応募作品
テーマ:『心に響いた接客エッセイ』
タイトル:『配達の仕事は、人助けと思ってます』
作者名:綾乃
エッセイコンテスト『grape Award 2020』の審査員が決定!
2017年から続く、一般公募による記事コンテスト『grape Award』。第4回目となる2020年の審査員には、grapeでも人気の漫画『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』シリーズでおなじみの漫画家・松本ひで吉さんが決定しました。
さらに『Jupiter』などの作詞を手がけた作詞家でエッセイストの吉元由美さんや、映画化もされた『スマホを落としただけなのに』などで人気を博する小説家の志駕晃さんも審査員として作品を読みます。
心に響く作品として選ばれるのは、どのエピソードでしょうか。結果発表をお楽しみに!
『grape Award 2020』詳細はこちら
[構成/grape編集部]