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女性に不評なあの検査 やるワケを医師に聞いたら?

By - grape編集部  公開:  更新:

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『人生100年時代』といわれる昨今。できるだけ長く健康を保ち、いつまでも充実した人生を送りたいものです。

しかし、長く生きれば、生きるほど身近になっていくのが『がん』の存在。

特に乳がんは、日本人女性の9人に1人が患うといわれており、厚生労働省の発表によると、2019年の乳がんの罹患数は9万7,142人でした。

これは、女性が罹患するがんの中では、もっとも多い数字となっています。

厚生労働省『全国がん登録 罹患数・率 報告 2019』を基に作成 ※2023年9月1日時点

社会や家庭において中心となる40~50代にかけて発症しやすいといわれており、治療のためには、早期発見が何より大事ですが「乳がん検診に行きたくない」という声も少なくありません。

特に検診の項目の1つである「マンモグラフィが痛い」、もしくは「痛いと聞く」という声が多く、ネガティブなイメージがある人もいるようです。

マンモグラフィとは乳房専用のX線撮影のこと。乳房を2枚の板で圧迫し、薄く伸ばした状態で撮影するため、検査中に痛みを感じることがあります。

マンモグラフィ

それでは、乳がん検診の際にマンモグラフィを避ける手段や、痛みを和らげる方法はあるのでしょうか。

岡山大学病院の乳腺・内分泌外科、助教の高橋侑子(たかはし・ゆうこ)先生にお話をうかがいました。

――マンモグラフィの目的は?

マンモグラフィは、胸の中にあるしこりなど、異常なものを見つけるためのX線検査で、40歳以上の人は2年に1回受けていただくことが推奨されています。

しこりなどを見つけるためには、胸を圧迫して、なるべく薄い状態にして撮影しなければならないので、個人差はありますが、どうしても痛みが発生してしまうことはありますね…。

――痛みを軽減する方法は?

これも個人差はありますが、閉経前の人に関しては、やはり月経前の乳腺が張っている状態のほうが痛みが強いと思います。
ですので、月経後の比較的胸がやわらかくなっている時期を選んでいただくと、痛みも少し軽減するのではないかと思います。

――マンモグラフィを避ける検査はある?

痛みの件も含め、致し方のない理由がある場合は、超音波検診のほか、最近ではMRI検診を自費診療で行っているクリニックもありますので、マンモグラフィが難しい人も、なんらかの形で検査は受けていただきたいです。

それでも「乳がんが早く見つかって、早期治療につながって、寿命が改善した」というデータがあるのは、今でもマンモグラフィだけですので、40歳以上の人には、できるだけマンモグラフィを受けていただきたいとは思っています。

ただ、胸の形や、脂肪の量などにより、マンモグラフィで異常が見つかりにくい人もいますので、可能であればマンモグラフィと超音波検診を重ねて受けていただいたほうが、やはり早期発見率は高くなります。

マンモグラフィは、乳がんの早期発見において、大きな意味があることが分かります。

痛みをなくすことは難しいかもしれませんが、受診のタイミングを調整することで、個人でもある程度の対策はできそうですね。

それでは、乳がんにならない、もしくは早期発見のために私たちが普段からできることはあるのでしょうか。

――乳がんになりやすい人の特徴や生活習慣はある?

実は分かっていることは意外に少なくて「これが確実に悪い」といえることはあまりないんですが、アルコール多飲と喫煙、高身長はリスクが増加する可能性が報告されています。 ほか、遺伝的素因は関連があるといわれているので、近い親族の中に乳がんになった人がいたら特に注意してもらいたいですね。

それ以外ですと、初潮の年齢が早かった人や、出産を経験していない人は少しリスクが高いといわれています。 反対に多産の人は、リスクが低いといわれていますが、絶対にならないわけではありませんので、定期検診は受けてほしいです。

――セルフチェックの方法は?

乳がんには『見て分かるケース』と『触って分かるケース』がありますが、痛みなどはないので気が付きにくいです。

見ていただくポイントとしては、表面にしこりが出てくると、皮膚が赤くなるだとか、盛り上がってくるだとか、逆に皮膚が変にひきつれることもあります。あとは乳頭が変な方向を向いたり、乳頭から血が混じった分泌物が出たりといった症状が確認されます。
また、乳がんは基本的にビー玉のように硬いです。胸を触った時に硬いものがあったらおかしいと思ってください。

セルフチェックも、胸を薄く伸ばした状態でないと分からないことが多いです。 月に1回程度は、お風呂などで、胸を張って伸ばした状態にして、チェックしてほしいと思います。

――もし、検診で乳がんだと診断されたら?

検診の結果は、『陰性』もしくは『要精密検査』になります。
ただし、この時点では正確にがんかどうか分からないものも含まれていますので、『要精密検査=乳がん』というわけではありません

精密検査で改めて超音波や触診、乳房から採取した細胞や組織を調べる『細胞診・組織診』などを通して初めてがんだと分かるので、結果として『異状なし』となるケースも十分あり得ます。
仮にがんだったとしても、早く見つかれば見つかるだけ、生存率も上がると考えられますし、胸の形をきれいに維持できる可能性も高くなります。
精密検査というだけで動転してしまう人も多いのですが、できるだけ早く検査に行き、本当にがんかどうかを確認するのが大事です。

――「検診に行きたくない」という人へのメッセージを。

乳がんは日本でも増えている病気の1つですが、早く見つければ、生存率はそんなに悪くない病気なんですね。 今はいろいろな治療法も開発されているので、早く見つけて、早く治すことを目標に、やっぱり検診を受けていただくことは大事かなと思います。

40代以上の人は、お住まいの自治体から案内が来るので、それをきっかけにしていただきたいと思っています。継続して受けることで、経年変化を確認できるようになりますので、面倒に感じる人もいるかもしれませんが、ぜひ習慣にしてほしいです。

30代以下の人はまだ必須ではなく、セルフチェックが主になります。しかし、職場の健康診断や、家族が行くタイミングで一緒に行くなど、やがてくる40代以後にむけて、乳がん検診について意識する何かきっかけを作っていただきたいです。気になって受けてみようという場合は、30歳、35歳、40歳などの節目や、ライフイベントの際などに受けていただくのもいいかもしれません。

また、ご家族や近い親族に乳がんや卵巣がんの人がいらっしゃる場合は、早めの年齢から検診を開始するほうがいい場合もありますので、個別に相談してみてください。

「あなたは、がんです」と医師に宣告されて、不安を感じない人はいません。

しかし、がんの治療には早期発見が何より重要です。

早く見つかれば見つかったぶんだけ、家族や大切な人との時間を長く過ごせるのではないでしょうか。

「自分にはまだ関係ない」と、検診に対して前向きでなかった人も、ぜひ定期的に病院やクリニックを訪れてみてください。


[文・構成/grape編集部]

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