友人が誕生日に夫からプレゼントされたネックレス 「感動力が衰えている」

By - 吉元 由美  公開:  更新:

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吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さん。先生の日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…様々な『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

小さな気づきと感動力

先日、友人が誕生日に夫からプレゼントされた、エルメスの「キュリオジテ」というレザーネックレスを見せてくれました。革の紐に、「目」と「鍵」の形をしたチャームがついています。「目」は金色で、サルバトーレ・ダリの描く目のようです。「鍵」は銀色。小さなチャームなのですが、とても存在感がある。このモチーフにどんなメッセージがあるのだろう? しばし友人とそんな話になりました。

「キュリオジテ」、「好奇心」…そして「目」と「鍵」。目を見開いて世界を見る。いつも好奇心を持って、新しい扉を開いていく。アメリカの海洋学者であるレイチェル・カーソンの言う「神秘さや不思議さに目を見張る感性を大切にすること」「センス・オブ・ワンダー」に通じるメッセージだと思いました。

ああ、最近の私にはこの感性がもっと必要かもしれない。若い頃に比べて感動力が衰えている…。そんな現実を見せられているような気がしたのです。このネックレスを見せてもらった時に心惹かれたのは、このモチーフの持つエネルギーを私自身が必要としていたからかもしれません。

たとえば旅に出る時。情報を集め、現地の写真を見て、準備万端で出かけます。初めて目にする風景なのに「写真と同じだ」とつい確認してしまうことはないでしょうか。私自身、そんなことはない!とあがいてみたいのですが、残念ながらそういうことがあるのです。さまざまな経験を積み重ねてきて、「馴れて」しまったのかもしれません。感動力が薄くなっていることを、時々感じるのです。

五感を大切にする。その場所の風に吹かれ、その場所の音に耳を澄まし、触れて、匂いを嗅ぐ。五感を開いた時に、実感することがたくさんあります。その五感を日頃から開き、多くのことを感じることができたら、感性豊かな毎日を過ごせるのではないか。ひとつのものから、どれだけの想像の翼を広げられるか。意識を広げてみるのです。その積み重ねが仕事や人間関係、人生の豊かさにつながります。大人には、大人の感動力がある。さまざまな経験を積み重ねた心と響き合う感動が、もっと深く胸を震わせるようになるのでしょう。そのためにも「キュリオジテ」そして「センス・オブ・ワンダー」と大切にしたいと、改めて思います。

エルメスのネックレスのモチーフが教えてくれたこと。そんなことに想像をめぐらせるなど、人によってはどうでもいいことでしょう。でも、小さなきっかけから、大切なことに気づくことがあります。必要な人に、必要な時、成長のための必要なきっかけがある。そんな気づきのひとかけらが、人生に彩りをもたらすこともあるのです。


[文・構成/吉元由美]

吉元由美

作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
吉元由美オフィシャルサイト
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