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ある日、免許証の裏を見ると?「気付かなかった…」「ちゃんと考えなきゃ」

By - grape編集部  公開:  更新:

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健康な人にとっては、あまり身近なこととして捉えにくい"臓器移植"。『グリーンリボン』や『ドナーカード』といった言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。

「自分とは関係がない話」と思いがちですが、"臓器提供の意思表示"によっては、誰もが誰かの命を救う側にも、救われる側にもなる可能性があります。

"聞くだけで元気になる情報"を届けるラジオ番組『ぐっさんの健やかDAYS』(ニッポン放送)。2019年12月2日の放送では、『臓器移植』について紹介されました。

パーソナリティーを務めるお笑い芸人・山口智充(ともみつ)さん、アナウンサー・東島衣里(ひがしじま えり)さん、日本移植学会理事長 東京女子医科大学 消化器外科 教授の江川裕人(えがわ ひろと)先生が対談した内容をご紹介します。

『臓器移植』とは?

東島さん:
今回は"臓器移植"。言葉としてはもちろん知っていますが、くわしいことまでは分かりません。先生、教えてください。

江川先生:
"臓器移植"とは、心臓、腎臓、肺、肝臓などがさまざまな病気で働かなくなり、薬やほかの手術で治すことができなくなった時、最後の頼みの綱として、ほかの人から臓器をいただいて治療する方法です。

日本でも、胃や大腸の手術と同じように『保険診療』で行われています。余命半年という患者さんが社会復帰できる治療ですが、生きた人や亡くなった人から臓器をいただかなくてはなりません。お2人は『運転免許証』や『健康保険証』の裏にある、『臓器提供の意思表示欄』を書いていますか?

山口さん:
えっ、『運転免許証』や『健康保険証』?今取り出してみましたけど…そんな欄があることすら知らなかったです。

東島さん:
そうですよね…。どのくらいの方が意思表示をされているんですか?

江川先生:
最新の内閣府調査によると、すべての年齢の回答者の約4割が、自らの臓器を「提供したい」と前向きに考えています。50歳未満だと6割の方が前向きに考えています。でもそれに対し、『運転免許証』などに意思表示をしている人はたったの13%程度なんです。

山口さん:
うーん、そうかー…。

東島さん:
ということは、臓器提供をしたい気持ちがあっても、その意思が伝わっていないということですよね。

江川先生:
そうなんです。つまり、「したい」という人は多いのに、意思表示をしている方は少ない。ただ意思表示がないと、"臓器提供"することが難しいんです。

※写真はイメージ

東島さん:
それはなぜなのでしょうか?

江川先生:
最大の理由は、脳死になった時に最終決定するのは、ご遺族の方々であるという点です。「遺体に傷をつけたくない」というのが多くの日本人の心情なので、どうしてもためらってしまう。

でも、生前に「臓器提供をしたい」という話を故人から聞いていたら、思いを叶えてあげようと辛さを乗り越えて、提供できるかもしれません。

山口さん:
「逆にしたくない」という意思表示も可能なのでしょうか。

江川先生:
はい、大切なことです。「私はイヤ」という話を聞いていたのであれば、その時が訪れた時に「お断りします」とはっきりいえます。知らなかったら「本当はしたかったのかも…」と悩むことになってしまうんですね。

東島さん:
普段から家族の中で話をして、万が一の時はこうしたいという意思の確認をすることが重要なんですね。

江川先生:
死後の"臓器提供"には、脳死による死後の提供と、心臓が停止した後の死後の提供があります。どちらの場合も、生前に"臓器提供"の意思をカードなどで意思表示しておくことが大切です。

山口さん:
"臓器提供"の意思を表示していない場合はどうなるのですか?

江川先生:
2010年、『臓器移植法』の一部改正に伴い、"臓器提供"に関する内容が変更になっています。本人が書面による"臓器提供"の意思を表示していない場合でも、家族の同意による脳死判定や臓器の提供が可能になりました。

これにより、15歳未満の方でも脳死後に家族の同意があれば臓器を提供することが可能となります。今年は小さなお子様の提供が増えています。親御様が「せめて臓器だけでもどこかで生きて欲しい」という思いで提供を選択されると伺っています。

東島さん:
つまり、意思表示がない場合には、家族が判断されるということなのですね。

江川先生:
はい。ですから、普段から家族と話し合っておくことが重要になってきます。

※写真はイメージ

山口さん:
ここまででも知っているようで知らなかったことばかりです…。臓器を提供できる年齢は上限があるんですか?

江川先生:
上限はありませんが、年齢と共に臓器もだんだん歳をとるので、取り出して移植するという手術の負荷にその臓器が耐えられるかという問題はあります。年齢の目安はありますが、少しでも多くの患者さんを助けるために、日本では年齢をできる限り制限しないようにしています。

山口さん:
逆に、提供を受けられる側の年齢制限はあるんですか?

江川先生:
子どもの場合、心臓や肺などは、体内で受け入れられるサイズが小さいので、子どもからもらわないと入らないんです。だから昔は、15歳未満の患者さんが心臓・肺の移植手術を受けるには海外に行かざるを得ませんでした。でも今では、日本でも移植を受けられるようになったんです。

東島さん:
提供された臓器はどうなるのですか?

江川先生:
移植を待つ患者さんへ、国が管理する厳格なルールに則り移植されます。現在日本にいる移植待機者は1万3千人。でも年間で移植を受けられる人はそのわずか2%なんです。

山口さん:
そんなに少ないんですか!?この瞬間にも移植を待っている方がたくさんいらっしゃるんですね…。

江川先生:
亡くなった時に"自分には必要のないもの"を必要とする見ず知らずの人に渡せることは、最上級の愛情だと私は思っています。「亡くなったらどうする」ということだけではなく、"誰かのためにできること"を考えるのが、"臓器提供の意思表示"につながるのかもしれません。

東島さん:
『運転免許証』や『健康保険証』の裏をめくると、確かに"臓器提供"に関する記載がありますね。ほかにも意志を表示する方法はありますか?

江川先生:
インターネットによる登録、『臓器提供意思表示カード』や『臓器提供意思表示シール』を利用するといった方法もあります。

山口さん:
インターネットではいつでも登録することができるのでしょうか?

江川先生:
はい。インターネットによる登録をするには(社)日本臓器移植ネットワークの『臓器提供意思登録サイト』へアクセスしてください。『臓器提供意思表示カード』や『臓器提供意思表示シール』については、各地方自治体の役所の窓口、郵便局、コンビニエンスストアなどで手に入れることができます。

東島さん:
まずは、『運転免許証』や『健康保険証』の裏面を確認し、自分の死後、臓器をどうしたいかなど気持ちを考えて、家族と話してみることから始めてみるといいかもしれませんね。

山口さん:
意思表示は変更することはできるんですか?

江川先生:
はい。意思表示は"今"を示すものです。気持ちが変わったら、何度でも二重線で消して書き直すことができます。一番大切なことは、普段から自分の気持ちを家族に伝えておくことです。

山口さん:
伝えるのも大事だし、「あなたはどう思う?」って聞いて、家族で意思を共有するのも必要ですよね。

東島さん:
家族が悩まないために。知らない誰かのために。"臓器提供の意思表示"大切な人と一緒に考えてみることが大切ですね。今回は『臓器移植』についてお話を伺いました。江川先生、貴重なお話をありがとうございました!

※写真はイメージ

"臓器提供"について、普段から関心を持っている人はまだまだ少ないのが現状です。まず、私たちの誰もができるのは、"臓器提供"を「する」「しない」という自分の意思を示すこと。

より多くの人が"臓器提供の意思表示"をすることで、今はまだ"奇跡的なこと"であっても、いつか"当たり前のこと"となるくらい、移植医療がもっと発展するはずです。

ぐっさんの健やかDAYS:『DAYS』内 毎週月曜日 14時40分ごろ~ 放送


[文・構成/grape編集部]
[2019年11月作成]

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