松本潤の『足腰の強い受けの演技』があったからこそ… 『19番目のカルテ』最終話
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25年以上トップアイドルの松本潤だからこその自然体 『19番目のカルテ』第7話医療は『学』かつ『術』を痛感。クロスする4つの師弟関係から見える変化。かなさんが描く『19番目のカルテ』の連載コラムです。
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SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2025年7月スタートのテレビドラマ『19番目のカルテ』(TBS系)の見どころを連載していきます。以下、ネタバレが含まれます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
『19番目のカルテ』(TBS系)の最終回。自分が赤池登医師(田中泯)だとしたら、どう思うかを考えながら見た。
登場人物に特異な能力や奇抜な展開がない、きわめて地味で誠実な今作を見届けた視聴者は、おそらく作中の誰かに自分を重ね、感情移入しながら見ていたのではないかと思う。
もう仕事はある程度まで成し遂げた。扶養するべき家族もいない。平均寿命から考えたら第3コーナーも回ってゴールが近い。
そんなときに重篤な病を得て、治療に莫大な金銭が必要、もしくは見知らぬ誰かの臓器を譲られて治す必要があるのだとしたら。
自分にかかる社会的なリソースは、未来のある誰かに使ってほしいと思うかもしれない。もちろん頻繁に襲いかかる痛みや不安に激しく揺れるだろうが。
治ると治らない、治すと治さないの狭間。数字では割り切れない理想と現実がある。
とある地方都市の総合病院に総合診療科が新設され、総合診療医の徳重晃(松本潤)がやってくる。
当初は他の専門家の医師たちに胡散臭く思われて敬遠されていたが、様々な患者の診察を通じて徳重は他の医師たちの信頼を得ていく。
徳重の背中を追って総合診療医を志す滝野みずき(小芝風花)もまた、迷いながら経験を積んでいる。
そんな中、徳重の師である赤池が病に倒れてしまう。治療を勧める徳重を赤池は拒否し、口を閉ざしてしまう。
最終話は、脚本家・坪田文が繊細に編み上げてきた言葉に満ちていた。
個人的に感動を覚えた二つの会話がある。一つは整形外科の成海(津田寛治)と滝野のやりとり。
「なれたのか。何でも治せるお医者さんに」
「まだまだです」
足腰の強い受けの演技だろう。「ああ…。まだってことは、いつかはなれるんだな」
照れ気味にひねくれたエールを贈る成海と、滝野の確かな信念が伝わるやりとりだ。
そして、もう一つは、徳重が赤池に生体肝移植を伝えるやりとり。
徳重は「なぜ、諦めようとしているんですか」と静かに赤池に問う。
諦めようとしていると指摘するその言葉が、図らずも諦めきれていない赤池の真情をくっきりと浮かび上がらせる。
坪田文の書くセリフは、隠された想いを浮かび上がらせる繊細なレリーフのようだ。
そして最終回では病名がつくことで救われた患者の黒岩(仲里依紗)と、あえて病名を探さないことで安堵させた患者の高岳恵生(新井美羽)の両方を描き、最後まで正解を決めつけない包容力あふれる脚本だった。
日曜劇場といえば、アップダウンの続くスピーディな展開と、胸のすく勧善懲悪のラストが定番であり、またそれが楽しいのだが、今作はその真逆をいく希な作品になった。
物語は淡々と緩やかに進む。意見の違いはあるが悪人は出てこない。
見どころの徳重の問診は、常にゆっくりと確かめるようなやりとりが繰り返される。
定番の逆をいくこのドラマを、いつも引き込まれるように見ていた。
このチャレンジングなドラマの土台となったのは、間違いなく松本潤の足腰の強い受けの演技だろう。
田中泯、6話の石橋蓮司らのそうそうたるベテラン俳優に対しても、小芝風花、新田真剣佑ら若手に対しても、そしてどの回のゲストと対した時も、松本潤の安定感ある佇まいが相手の俳優を輝かせていた。
松本は根っから俯瞰の人、逆算の人なのだと思う。
なるほど、松本潤自身が何よりゼネラリスト、オールラウンダーで、それこそが総合診療医の徳重晃に重なっていたのだと得心するのだった。
今作はドラマとしての秀逸さはもちろん、総合診療という診療科の存在を社会に広めたという意味でも特異な作品となると思っている。
『コウノドリ』(TBS系)が周産期医療の重要さと過酷さを知らしめたように、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)が家事労働の価値を社会に再考させたように、優れたエンタテインメントは水面に投げた小石のように、やがてさざ波を作る。
10年、20年後、この国で総合診療科が当たり前になり、取りこぼされる患者が減ったとき、徳重晃が語りかける優しい「聞かせてください」が、水面の小石だったと懐かしく思うだろう。
そしてぜひ、何らかの形で今後も続編が見たい秀作である。
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[文/かな 構成/grape編集部]
かな
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