耕造が贈った高級腕時計が示唆するのは… 『ザ・ロイヤルファミリー』第2話
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120%堪能する大泉洋の不思議な魅力 『ちょっとだけエスパー』第1話大泉洋さんと脚本家・野木亜紀子さんの最強タッグが放つ、注目のSFコメディードラマがついにスタート! 職と妻を失った主人公・文太が、なぜか「エスパー」として再出発する初回をドラマコラムニストが深掘りします。宮﨑あおいさん、岡田将生さん、北村匠海さんら豪華キャストが演じる「無数の分岐」から生まれる物語の面白さに期待。

ドラマ好きは日曜劇場の初回をどう見た魅力あふれる人と馬 『ザ・ロイヤルファミリー』第1話SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、イラストレーターの渡辺裕子(@satohi11)さん。 2025年10月スタートのテレビドラマ『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)の見どころを連載して...
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SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、イラストレーターの渡辺裕子(@satohi11)さん。
2025年10月スタートのテレビドラマ『ザ・ロイヤルファミリー』(TBSテレビ)の見どころを連載していきます。以下、ネタバレが含まれます。
渡辺裕子さんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
栗須栄治(妻夫木聡)はロイヤルヒューマン社の山王耕造社長(佐藤浩市)にスカウトされ、同社の競馬事業部専任秘書となった。
しかし、耕造の妻・京子(黒木瞳)は競馬を嫌っていて、山王家での栗須の転職祝いの食事会はギスギスしたものに。
そして耕造の息子・優太郎(小泉孝太郎)は、今年中にロイヤルの馬で1勝できなければ競馬事業部を撤廃するという勝負を持ちかける。
耕造は、所有馬のうちロイヤルファイトが一番期待できると考え、一回でも多くレースに出そうとする。
しかし調教の前倒しを迫ったことで、調教師と決裂。ファイトとイザーニャの2頭を引き受ける調教師を探して栗須は奔走するが、なかなか見つからない。
また、関係者の間では耕造の評判が悪いことを知る。
そんな中、元恋人の加奈子から、広中(安藤政信)という調教師を教えてもらい、彼の厩舎を訪ねるが、返答は保留に。
そして京子に呼び出された栗須は、破格の待遇での飲食事業への転属を誘われる…。
高級腕時計が鎖のように…
緑に輝く芝を馬たちが走っていく。先頭は、あの、脚が少し曲がっていると言われた馬・ロイヤルイザーニャだ。
その様子をつぶさに伝える実況と観客の声援がひときわ大きくなった次の瞬間、ふっとすべての音が消える。
聞こえるのは、飛ぶように走るイザーニャと、その背に乗るジョッキーの荒い息遣いだけ。
何かに夢中になった時の、世界には自分たちしか存在していないような美しい時間。
そこで馬たちを包むように主題曲『ファンファーレ』が流れ、爆発するような観客の大歓声が聞こえたことでハッと我に返る。
ほかの馬に追いつかれそうになっているイザーニャの姿に「逃げろ!」とまた声が出て、勝利の瞬間はテレビの前でバンザイしてしまった。
第2話のレースシーンも、あまりにもリアルであまりにも熱かった『ザ・ロイヤルファミリー』。
熱いのはレースだけでなく、物語もどんどん熱を帯びてきている。
経理を任されるのかと思っていたら競馬事業部のマネージャーとなった栗須。
机に馬の資料を山積みされ、目を通せと言われたけれど、競馬についてはまだまだわからないことばかり。
栗須が、競馬関係者たちから知らない言葉を投げかけられてキョトンとしている姿に、初心者なのは自分だけじゃないんだとホッとする。
わからない言葉があってもドラマにはついていけるが、気になる用語が出てきたら、ドラマのウェブサイトで『競馬用語集』を見るとわかるので安心。
あの用語集を、栗須がコツコツ調べたメモだと想像すると少し楽しい。
栗須の一見頼りなさそうな雰囲気を見て、京子は従順そうだと舐めて考え、金の力で操ろうとする。
しかし本当の栗須は従順どころではなく、周りの誰も逆らえないワンマンな社長に「承知…できません」ときっぱりと逆らって意見を言う気概のある、芯の強い人。
競馬の知識を何も持っていない彼にあるものは、なんでも足を使って調べる真面目さ。目の前の人を信じる素直さ。感情がたかぶるとすぐ泣いてしまう涙もろさ。
そして心から馬を愛する心。
こんなに、愛される要素満点の主人公、なかなかいないのではないだろうか。
栗須が、馬たちのために目に涙をためて必死になっている姿を見たら、彼に会った誰もが応援し、味方にならざるを得ない。
そんな栗須のために今回新たに加わった仲間は、広中調教師。
「先生」と呼ばれるのを嫌がり、ノートや携帯などをいつもどこかに置き忘れて探している。
馬のこと以外はいろいろ抜けている変わり者で、でも馬に関しては天才。
まさか、誰もが勝ち目があると考えていたファイトではなく、脚に不安を抱えるイザーニャを走らせるとは、そして勝たせるとは。
そんな広中を理解し、馬を世話するスタッフたちも魅力的。
彼らがいてくれたら、ファイトもイザーニャも、きっとこれから勝ちを重ねてくれると信じられる。
あの人柄で、今後も栗須は味方を増やしていくだろう。
もしかしたら本当に遠い夢の、有馬記念もかなうのではと思わせてくれる。
しかし彼の一番近くにいる社長の耕造が、何度も彼に「生意気だ」「裏切るな」と言うのが気に掛かる。
耕造が栗須に贈った高級腕時計は、栗須を自分に繋ぎ止めるための手錠と鎖のようにも見えてくる。
いつか、栗須はその鎖を外して彼の元を去り、裏切り者と呼ばれるのだろうか。
そして今回は声の出演だけだった目黒蓮。彼が登場するのがその「裏切り」のきっかけになるような気がする。
早く出てほしいような、出る時がこわいような。
[文/渡辺裕子 構成/grape編集部]
渡辺裕子
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