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「日本に約6千人」多くが男性にみられる『血友病』とは?

By - grape編集部  公開:  更新:

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スマホやパソコンがあれば、あらゆる情報をいつでも簡単に得られるようになった現代。でも一方で、教えてもらわなければ正しく知りえないこともたくさんあります。

例えば『血友病』という病気。「聞いたことがない」「よく知らない」という人も多いのではないでしょうか。

『血友病』とは、血液が固まるのに必要なタンパク質が不足しているため、血が止まりにくくなる病気のこと。日本には約6千人の血友病患者がいるとされ、そのほとんどが男性だといわれています。およそ男性1万人に1人という割合で発症するそうです(※)

実は、4月17日は『世界血友病デー』。『血友病』のかたの生活の質の向上を願い、制定されました。

その日にちなんで、ラジオ番組『山浦!深谷!イチヂカラ!』(東海ラジオ)の中で、パーソナリティー・深谷里奈さんと三重大学医学部付属病院 輸血・細胞治療部の松本剛史(たけし)先生による対談が放送されました。その内容をご紹介します。

『血友病』を正しく理解するために

深谷:
『血友病』とはどのような疾患なのでしょうか?

松本:
『血友病』のかたは、出血した時に血が止まりにくい体質をもっています。そのため、けがや打撲などで出血すると、止血までに時間がかかります。
もともと、人の身体は出血すると、まず血管が縮んで血液が流れ出るのを防ごうとし、傷口に集まった『血小板』がくっつきあって固まります。さらに、血液中にある『凝固因子(ぎょうこいんし)』というタンパク質の働きで『糊(のり)』を作り出し、より固いカサブタにして傷口をふさぎます。
『血友病』のかたは、この『凝固因子』が生まれつき不足しているのです。

※写真はイメージ

深谷:
なるほど。カサブタを作る材料が少ない、ということですか?

松本:
はい。『血友病』は、遺伝子が関わる生まれつきの病気で、ほとんどが男性に発症します。ただし、遺伝子の変異は突然起こることもあり、血友病患者のおよそ3分の1は、家系に『血友病』の人がいなくても発症したというかたです(※)

※写真はイメージ

深谷:
『血友病』は血が止まりにくい体質ということですが、どのような症状が出ますか?

松本:
実は、鼻血などの目に見える出血より、"内出血"のほうが比較的に多いんです。ぶつけるとよく『青あざ』ができますよね。あれは皮膚の下で出血している状態です。『血友病』では、皮膚の下もですが、ひじ、ひざ、足首などの関節の中や、筋肉の中に出血することが多いんです。

深谷:
身体の外への出血が止まりにくいものだと思っていましたが、"内出血"のほうが多いんですね。しかも、関節や筋肉の中の出血って…想像するだけで痛そうです!

松本:
はい。出血すると、熱をもってはれあがったり、強い痛みがあったりします。同じ関節に出血を繰り返すと、関節が変形し曲げ伸ばしにくくなったり、動かす際に痛みを伴うようになったりするため、日常生活に支障をきたすことがあるんですよ。

『血友病』の治療とは

深谷:
『血友病』のかたは、どのような治療をされていますか?

松本:
血友病患者の多くが赤ちゃんのころに診断され、治療は生涯続きます。治療の基本は、不足している凝固因子を注射で補う『補充療法』です。
『補充療法』には3つの方法があります。1つは出血が起こった時に『凝固因子』を補充する『出血時補充療法』、2つ目は定期的に『凝固因子』を補充して、事前に出血を防ぐ『定期補充療法』、3つ目は運動や旅行などアクティブな活動をする前に注射をする『予備的補充療法』です。
『血友病』は、家族や本人が薬を自分たちで注射して治療することが認められています。多くは小学校高学年になると、練習を経て自分で注射ができるようになります。

深谷:
毎回病院に行かなくても、自宅での注射で出血の予防ができて、出血しても対処ができるんですね。

松本:
『定期補充療法』が普及して出血が減ったことで、関節に障害を起こさず、一般のかたと変わらない生活が送れるようになってきています。スポーツも楽しめるようになり、さらに最近では、新しい治療法も出てきました。

深谷:
出血をあまり恐れずに、スポーツもできるとは驚きです!

松本:
はい。格闘技など接触するスポーツはおすすめしませんが、サッカーや野球などクラブ活動に参加する子どもの血友病患者もたくさんいます。中には、甲子園を目指した球児もいますし、特殊な例ですがエベレストを登頂したアメリカ人もいるんですよ。

深谷:
本日4月17日は『世界血友病デー』なんですよね。

松本:
国際的な患者さんと『血友病』に関わる医療者の団体として、『WFH(世界血友病連盟)』というものがあります。1989年に、WFH創設者の誕生日である4月17日を『世界血友病デー』として制定し、 診断や治療を受けていない方を少しでも減らそうと啓発活動に取り組んでいます。この番組を通じて、たくさんのかたに『血友病』のことを知っていただければ…と。
日本では6千人と数が少ない疾患ではありますが、身近に『血友病』のかたがいらした場合には、この疾患への理解を深めてもらえたらと思います。

深谷:
私も先生のお話を聞いて、『血友病』について知識を深められました。今日はありがとうございました!

※写真はイメージ

『血友病』は古くからあるとされ、歴史上においては、英国ヴィクトリア女王(1819-1901)の子孫が、『血友病』の家系として知られています。

ヴィクトリア女王(1819-1901)自身が保因者であり、その子孫の婚姻を通して、ドイツ、スペイン、ロシアの各王室に『血友病』が広まったそうです。このため、『血友病』は"royal disease"とも呼ばれました。

「血友病は、"病気"というよりも、1つの"個性"、"体質"として考えてもらいたい」と語る、松本先生。

もし、自分や身近な人が、あまり知られていない『血友病』を患ってしまったら、どのように接していいかわからないかもしれません。

でもこのように、一般のかたと変わらない生活が送れるようになってきていること、一方では、関節の破壊が進み、日常生活に支障をきたしているかたや、関節が悪くなくても日常生活を制限されているかたがいることなどを知れば、『血友病』のかたに理解を示せるようになるはず。

そして多くの人が『血友病』について正しい知識を得て、理解を深めることが大切です。

4月17日『世界血友病デー』をきっかけに、『血友病』に関心の目を向けてみてはいかがでしょうか。


(※)小児慢性特定疾病情報センター「血友病A」(2019年4月1日参照)


[文・構成/grape編集部]
[2019年4月作成]

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