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「我々も人間です」消防署へ寄せられる『ひどいクレーム』 消防士に話を聞いた

By - いとう舞香  公開:  更新:

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消防士Bさん

確かに、まだ日本では消防車でスーパーや食事に行くのは一般的ではありません。ですが、パチンコに行ったわけでもなく食事ですよ、食事。

消防団員でも消防署員でも、人間なので食べなければ生きていけません。いつでも出動できる態勢をとった上で食事をするのが、そんなにいけないことでしょうか?消防車が停まっててびっくりしたのかもしれませんが、わざわざ写メ付きでクレームを入れることかと…。

怖いのは、こういうクレームをいちいち受け入れていると、次は「夜はうるさいからサイレン消せ」や「土日はうるさいから訓練するな」など、もっと酷いクレームに繋がり、業務に支障がでることです。

事実、うちの消防署は隣のマンションからのクレームで、土日の午前中はエンジンをかけての訓練は禁止になりましたし、サイレンも大通りに出るまでは減音モードを使うよういわれています。

ちなみにアメリカでは、スーパーに消防車専用の駐車スペースがあったり、消防士がレジに優先的に並ばせてもらったりしています。 スペインでも、出動の帰りにコーヒースタンドに寄ったりはごく普通のことです。

その違いは何でしょう?欧米にもクレーマーはいると思いますが、何より消防士を尊敬する人が日本より遥かに多いのだと、自分は海外に行って痛感しました。一方で、欧米では『ヒーロー』として見られる消防士も、日本では『公務員』と見られることのほうが多いなと。

これは国民性もあるかと思いますが、日本の消防の広報下手&広報不足にも原因があるかと思います。普段はシャッターを閉めていて、「火事がない時は消防は何してるの?」と思われるような市民に遠い存在では、消防車での外食など理解されないでしょう。

子どもだけでなく、大人からも消防車に手を振ってもらえるような市民に近い存在になれるよう、消防の努力もいままで以上に求められると思います。 市民に親しまれる消防となり、日本でも消防車でスーパーに行くのが当たり前な時代を目指していきましょう!

消防士Cさん

うちでは、10年前に業務中の筋力トレーニング(市民体育館での)が禁止になりました。理由は、市民から寄せられた「筋トレばっかりしてないで、仕事しろ!」というクレームに消防長が謝ってしまったからです。

また、同時期に夕飯を作るのも禁止になりました。「業務中に料理をする暇があるなら、訓練しろ!」との市民からのクレームです。

食堂が市民から見える作りになっていたせいもあるのかもしれませんが、やはり、世間様が景気が厳しい時代になると我々の風当たりも厳しくなるのかな…と。日本の消防は『ヒーロー』ではなく、『公務員』っていう目で見られてしまってるんですかね。

当然厳しい声ばかりでなく、ほとんどの方は、感謝の気持ちで迎えてくれます。ですが、たまにそういった厳しい目の方もおられます。

我々は、決して「命をかえりみず守ろう」とは思っていません。我々も自分の命を大切に活動しています。命と引き換えになんて美学は日本だけかもしれません。

命や体を張らなくてもいいように、日々訓練やトレーニングをこなし、知識を蓄えるために努力しています。その過程の1つに、チームでのコミュニケーションの場としてみんなで食事をしたり、筋トレをしたり、それぞれのコンディションを確かめたりするものだと考えます。

それをしっかりと広報しないと、やはり当たり前のように『消防=体を張って守ってくれる』という印象を持ってしまわれるのかな。

消防士Dさん

これは時代の流れかもしれませんが、火災予防週間や年末年始特別警戒で18〜21時くらいに防火広報に行くと「うるさくて子どもが起きたからやめてほしい」と市へ苦情がきました。

「まぁ、そういわれればそうかなぁ」と思ったりもするけどね…。

※写真はイメージ

日々、市民の命を救うために働いてくれる消防士たち。彼らの仕事は肉体的にも精神的にも、とても厳しいものです。

そして、そんな彼らの負担をさらに増やしているのは、市民から寄せられるこういった『過度なクレーム』なのです。

「どんなクレームにも誠実な対応をする」という、日本の風潮。確かに、誠実で丁寧なのは日本のいいところですが、明らかに少数の『過度なクレーム』に従うことは正しいのでしょうか。

「我々消防士も、人間です」

彼らがそういうように、当然、消防士や救急隊員も同じ人間です。食事や休憩をとらなければ、いざという時に力を発揮することができなくなります。

『過度なクレーム』に従う社会、もうやめませんか。

【お詫びと訂正】2017年5月1日17時00分

本記事内に「『消防士』は国の機関に属する地方公務員ですが、『消防団』は準公務員でありほとんどがボランティアで構成されています」という表現がございましたが、『消防士』『消防団』の説明に誤りがありました。訂正し、お詫び申し上げます。


[文・構成/grape編集部]

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