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「なんで病院に…?」 眼科に『クライミング用の壁』がある理由

By - grape編集部  公開:  更新:

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ビジョンパーク

文字の読み書きがしにくくなったり、歩いていてつまずきやすくなったり、日常のあらゆる場面で、不便を感じる視覚障がい。

中でも、完全に見えないわけではないものの、見ることに何かしらの困難さがある状態のことを『ロービジョン』といいます。

視界がボヤけたり、暗く見えたり、一部だけが見えなかったりと、人によって症状もさまざま。

もし、自身や身近な人が『ロービジョン』になったら、どのように向き合えばよいのでしょうか。

病院の中に意外なものが…

兵庫県神戸市のポートアイランド内にある施設『神戸アイセンター』。

病院や研究所など、眼にまつわるさまざまな機関が入った複合施設ですが、中に入るとひときわ目立つ広い空間があります。

ビジョンパーク

この空間は『Vision Park(ビジョンパーク)』 。

眼科を訪れる患者やその家族だけでなく、眼が見えない、見えにくいことで困っている人など、さまざまな人が集うことのできる場所だといいます。

具体的に何ができるのか、フリーアナウンサーの坂本梨紗(さかもと・りさ)さんに、体験してもらいました。

ナビゲーターは、ビジョンパークを運営する公益社団法人NEXT VISIONで常務理事を務める和田浩一(わだ・こういち)さんです。

ビジョンパーク

ビジョンパークは、大きく5つのエリアに分かれています

体験用の白杖(はくじょう)を手に持ち、まず訪れたのは『リーディングエリア』。

このエリアには数多くの本や新聞、雑誌などが用意されており、さまざまな情報に触れることができます。

エリア内には拡大読書器も置かれていて、ロービジョンの人も文字が読みやすくなる工夫がされています。

ビジョンパーク

次に訪れたのは『シミュレーションエリア』。

ここには、車の運転を体験できるシミュレーターがあり、周りの人や車の動き、信号などを見ながら、安全に運転ができるかどうかを測れます。

ビジョンパーク

ほかにも学校を模したような空間があり、日常生活をサポートしてくれるグッズの使い方を体験しながら学ぶことも可能です。

ビジョンパーク

続いては、『アクティブエリア』。

実際に身体を動かすための空間で、クライミングウォールが設置されていました。

ビジョンパーク

ロービジョンの人にも見やすいように、一部のホールド(突起)は光るようになっています

開放されている日には、子供から高齢者まで、多くの人たちが意欲的に取り組んでいるようです!

ビジョンパーク

施設の中央にある『キッチンエリア』は、その名の通り、巨大なオープンキッチンになっているスペース。

ビジョンパーク

音声で案内してくれる電子レンジや炊飯器などがあり、実際に料理を作ったり、ワークショップを開催したりすることもあります。

ビジョンパーク

最後に紹介するのは『リラクゼーションエリア』。

自然音が流れる癒しの空間で、多くの人が憩いの場として利用しているようです。

ビジョンパーク

ビジョンパーク、よく見ると…

目的別にさまざまなエリアがあるビジョンパークですが、施設内を歩いていると、いくつかの段差がある造りになっていることが分かります。

これは、日常生活に潜む危険を体験してもらい、「白杖を持って歩くことで、段差があっても安心して歩けるんだ」と気付いてもらうことが目的。

ビジョンパークで過ごすことで、日々学びと成長が生まれるのだといいます。

ビジョンパーク

病院で治療を受けても、視力が完全には回復しないことを知り、ショックを受けてしまう人は少なくありません。

ビジョンパークは、運動や料理などの体験を通して『目が見えにくくても、元気に人生を楽しんでいる人と出会う場所』でもあるのだとか。

クライミングを始めたり、拡大読書器を活用して裁縫に挑戦したりなど、新たな生きがいを見つけて、立ち直った人も多くいるそうです。

ビジョンパーク

誰でも訪れることができるビジョンパークでは、目が不自由な人と、そうでない人が積極的にコミュニケーションを取る姿も多く見かけるといいます。

当たり前に混ざり合い、同じように生活すれば、きっと互いの理解は深まるはず。

ビジョンパークは、お互いを知るためのきっかけを与えてくれそうですね。


[文・構成/grape編集部]

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