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「このままでは…」ある社長が、マンション耐震偽装問題で気付いた『責任』

By - grape編集部  公開:  更新:

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「幸せを考える。幸せをつくる。」

65歳以上の人口が20%を超える『超高齢化社会』を迎えようとしている日本。社会構造の変化に伴なってライフスタイルが多様化し、新しい『住まい』のあり方が求められています。

マンションを中心とした不動産開発を行う総合デベロッパーのタカラレーベンは、「幸せを考える。幸せをつくる。」の企業ビジョンのもと、これまで時代に合った『住まい』を多くの人々に提供してきました。

全国のマンション供給戸数が5年連続でトップ10に入り、東北エリアにおいては3年連続ナンバー1(※同社調べ)、2018年5月に発表された前中期経営計画では最終利益を約10億円上方修正し、2期連続で過去最高益を更新したタカラレーベン。

2022年の創業50周年を控え、現在の事業展開と今後の展望について、島田和一代表取締役社長にうかがいました。

独自のポジションを確立してきた『総合不動産デベロッパー』

経済の波とダイレクトに呼応し、活況の時代と厳しい時代とを幾度となく繰り返してきた不動産業界。

そのうえ、異業種からの参入が多い業界でもあり、時代とともにめまぐるしくプレーヤーが入れ替わってきました。そんなシビアな業界の中で、財閥系や鉄道系、商社系のように大きなバックボーンを持たず、自らの力だけで独自のポジションを確立してきたのがタカラレーベンです。

創業は1972年、『宝工務店』の名でスタート。一戸建ての分譲事業から始まり、1990年代半ばからは分譲マンション事業を軸に成長の一途を遂げてきました。そして1990年代半ばから続いたマンション大量供給時代の真っ只中、2001年に株式市場に上場しました。

代表取締役社長の島田和一さん:

「私たちは創業時から一貫して、初めて住まいを購入されるかたたちをメインの顧客層と考え、『誰もが無理なく安心して購入できる理想の住まい』を提供してきました。

バブル経済の崩壊とリーマン・ショックという業界を根幹から揺るがすような苦しい時代も経験しましたが、当社の一貫したコンセプトと営業力が功を奏し、着実に実績を積み上げることができました。

その結果がいまの安定供給とシェア拡大につながっていると思います」

好調な分譲マンション事業ばかりに目がいきがちですが、現在の事業領域は大きく広がり、もはやデベロッパーという枠を超えているといっても過言ではありません。

島田社長:

「現在でも新築分譲マンションの企画・開発・販売がコア事業で、当社グループ売上高の約7割に当たります。

以前は9割以上だったことを考えると、ずいぶん比率が下がっている印象ですが、これはマンションの供給量が減ったのではなく、あくまでもほかの事業が伸びた結果からきています。

その代表的な事業が、不動産賃貸事業、不動産管理事業、発電事業の3本柱です」

まず不動産賃貸事業は、近年の観光インバウンド増加に伴い、同社が開発したホテルが京都を中心に次々とオープン。そうした物件の開発だけではなく、物件を取得して『REIT』(※1)市場への参入や運営にも携わってきました。

不動産管理事業においては、同社グループのレーベンコミュニティが開発した独自のサービス品質管理システム『SQMS®』(※2)が好調で、他社が管理するマンションからの管理会社変更案件(リプレース)を多く獲得。

今後も管理戸数を積み上げながら、管理事業から派生する大規模修繕工事受注にも広げていきたいそうです。

そして現在、新築分譲マンションに次いで大きな軸となっている事業が発電事業。2013年から参入しているが、関東エリアを中心にメガソーラー発電施設の開発を手掛けています。2018年9月時点で38施設を所有し総発電規模は約107メガワット、2020年3月期までに200メガワットの稼働を目標にしているそうです。

LS塩谷2発電所

企業ビジョンの制定とCSRの強化

同社が株式上場した2001年は、1994年から続いていた第6次マンションブームの真っ只中。バブル経済崩壊後の長期にわたる地価下落により、住まいの都心回帰現象が起こり2005年まで毎年8万戸前後のマンションが売り出されていました。

島田社長:

「デベロッパーとしてはもちろんいい時代だったともいえますが、さすがに供給8万戸時代があれだけ長く続いていると、このままであるわけがないだろう、という小さな疑問が湧いてきました。

単に大量に供給して利益を追求するのではなく、社会的責任を持つ企業としてより進化しなければならないのではないかと。その危機感が確信に変わったのが、2005年に起こったマンションの耐震偽装問題です。

いま思えばこれが業界に向けた1つの警鐘だったのでしょう」

それを機に企業の社会的責任の大きさを強く感じたと語ります。

島田社長:

「そこから3年間、考えに考えた結果、2008年に『幸せを考える。幸せをつくる。』という企業ビジョンを発表しました。

私たちが提供している住まいは、生命を維持する最も大切な場です。人の暮らしと幸せを誰よりも真剣に考えたい、そしてすべての人が安心して暮らせる住まいと街をつくりたいという思いをあらためて表明しました」

第一種市街地再開発事業『レーベン富山桜町』

時を同じくし、CSRも意識的に強化。「価値あるライフスタイルの創造」「高品質で快適な空間の提供」「環境・文化の醸成」「コミュニティの形成」の4軸をつくり、上場企業としての責任をより強化していきました。

島田社長:

「住宅を供給する会社ですから、やはり住宅の供給を通した社会貢献が基本になります。たとえば当社グループが力を入れている太陽光発電システム搭載マンションは、その代表例です。

再生可能エネルギーであることも重要です。また、住宅の供給エリアが全国に広がってきているので、地域とのつながりを軸にした地域貢献にも力を入れています」

レーベン千葉ニュータウン中央THE PREMIUM

そんな地域貢献の施策の1つが、『レーベンクラフト』プロジェクト。

同社がマンションを供給している地域の特産品を、都市部のマンションに住む人が独自のスマートフォン向けアプリを利用して購入できる仕組みです。 地域の活性化に貢献するとともに、都市のライフスタイルにも新しい価値を提供することにつながっています。

そのほかにも、震災復興イベント『ツール・ド・東北』『東北・みやぎ復興マラソン』の協賛や、プロサッカーチーム『カターレ富山』の協賛、各地のお祭りやイベントなど、同社がつながりをもつ地域のイベントやスポーツ、文化のサポートを積極的に行っています。

さらに、自治体と組んだ地域の再開発の提案も力を入れている分野です。地方都市の多くは中心市街地の活性化が大きな課題になっていて、その分野はデベロッパーとして力になれる部分でもあるそうです。

島田社長:

「地域の課題を解決する社会貢献であるとともに、1つのビジネスチャンスともとらえています」

今後の新築分譲マンション市場の可能性

人口減少や少子高齢化、そして増え続ける空き家の問題など、住宅産業を取り巻く環境は厳しいといわれています。その中で、確実に成長を続ける同社のメインブランド『LEBEN』、都市部の単身者・DINKS向けコンパクトマンション『NEBEL』の役割はどういったものなのでしょうか。

島田社長:

「当社として、家族みんながいつまでも安心して安全に快適に暮らせる住まい『LEBEN』を安定的にしっかり供給し続けるということが当社の根幹であることは変わりません。

それとともに、新しいニーズとして増えていくことが予想されるのが『NEBEL』です。コンパクトマンションの需要は何も都市部に限ったことではありませんし、若い世代だけでなく高齢単身者もいっそう増えていきます。

マーケット、ニーズの変化を見据えながら、より時代に合った住まいを提供していくことが当社の使命であると思っています」

左:レーベン新小岩innovia 右:ネベル恵比寿

不動産業界では1つの節目になるともいわれている2020年まであと2年。そしてタカラレーベンは創業50周年という大きな節目を2022年に迎えます。

島田社長:

「事業を拡大していく方向ではありますが、やはり当社にとって最も大きいのは新築分譲マンション事業です。

新築分譲マンションは来期においても1700戸、一戸建て分譲住宅は190戸の引き渡しを計画しています。さらに、中古マンションのリニューアル再販事業、流動化事業も市場動向に合わせて展開していく予定です。

この10年でマンションの価値も市場も驚くほど様変わりしました。今後も間違いなく価値観が大きく変わっていくマーケットに対してライフスタイルの新常識をつくり、創業50周年に向けて邁進していきます」

同社では創業50周年に向けて、新たに「ライフスタイルに、新常識を。」というスローガンを掲げています。

テレビCM連動ポスターイメージ

同社は今後どのような新しい価値を創造し、新しい常識を提案してゆくのでしょうか。地域や社会をより良い方向へ導いてくれる新しいライフスタイルの新常識に期待が集まっています。


(※1)『REIT』は金融商品の一種。投資家から預かった資金をもとに不動産などに対して投資し、購入した物件の賃料収入や、物件の売買で得られた収益を投資家に分配する。

(※2)『SQMS®』は品質マネジメントシステムに関する国際規格『ISO 9001』をより業務に適応させた、オリジナル発展形のサービス品質管理システム。マンション管理における、財務管理から資産管理、建物管理、組合運営の支援まで、この独自の品質基準をもとに取り組んでいる。


[東洋経済ONLINE × grape]

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