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目が不自由な人が使う白杖 まったく見えていない人ばかりではなく…?

By - grape編集部  公開:  更新:

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中外製薬

街を歩いている時に、白杖(はくじょう)を持っている人を見かけたら、あなたはどのような印象を持ちますか。

恐らく、多くの人が「この人は目が見えないのだろう」と思うでしょう。

しかし、白杖を持っている人が、必ずしも全盲とは限らないことをご存じでしょうか。

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※写真はイメージ

目が不自由な人の中で、目がまったく見えない『全盲』の人は全体の1~2割程度で、残りの8~9割は『ロービジョン』という状態です。

完全に目が見えないわけではありませんが、視界がボヤけたり、暗く見えたり、一部だけが見えなかったりなど、見ることに何かしらの困難さがある人を指します。

そのため、全盲でなくても白杖によるサポートを必要とする人は多くいるのですが、まだまだ『視覚障がい』への理解が進んでいるとはいえません。

見えにくくても、できることは増えている

grapeは、兵庫県神戸市にある『神戸アイセンター』を訪問。

『視覚障がい者』のイメージを変えるため、さまざまな支援活動をしている公益社団法人NEXT VISIONにお話をうかがいました。

リモートでインタビューに答えてくれたのは、副理事長で眼科医の三宅琢(みやけ・たく)先生。

インタビュアーは、フリーアナウンサーの坂本梨紗(さかもと・りさ)さんです。

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坂本さん

まずはNEXT VISIONについて教えてください。

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三宅先生

NEXT VISIONは、社会の視覚障がい者に対する認識を変えることを目的に作られた団体です。

『目が見えない、見えにくい=何もできないかわいそうな人』ではなく、『見えなくても工夫することでできることがある、見えにくいからこそできることがある』という視点を大切にしています。

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坂本さん

具体的にはどのような取り組みをされているのですか?

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三宅先生

視覚障がいがある人が、困っているのは『働けないこと』と、『遊べないこと』です。仕事と趣味がちゃんとできて、人とのつながりがあれば、目が不自由でも希望を持つことができます

『目が見えなくても働ける、遊べる』ということを伝えるため、『isee!運動』という取り組みを行い、就労やゲームのイベントなどを開催してきました。

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三宅先生

これは目が不自由な人も、そうでない人も参加していただけるもので、お互いが同じ空間で生活をすることが当たり前になるためのきっかけづくりにしています。

「目が見えにくくても、こんな工夫をすればできるんだ」など、双方の「知らなかった」ということをゼロにしたいと考えています。

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坂本さん

なるほど…。ゲームのイベントというのはどういうものですか?

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三宅先生

G-1グランプリ』というイベントを開催しています。Gは『GAME』の頭文字で、テレビゲームのようなデジタルから、カードゲームなどのアナログなものも含んでいます。
ゲームはちょっとした工夫をするだけで、晴眼者と同じ動かし方ができますし、子供から大人まで楽しめる優秀なコミュニケーションツールです。

ゲームというツールを使って「このゲームは、こうすればできる」というアイディアを発表をしてもらい、実用的・画期的なものを表彰しています。

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坂本さん

すごく面白そうですね!就労イベントについてはいかがでしょうか?

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三宅先生

isee! “Working Awards”』というイベントを主催していまして、これが当団体の一番大きなイベントです。これもゲームと同じく「こんな工夫をしたことで、視覚障がい者が働くことができた」という成功事例や、アイディアを発表してもらい、表彰するイベントです。

恐らく「視覚障がい者を雇っても、何を任せればいいかが分からない」という企業は多いでしょう。このイベントを多くの人に発信することで「こうすれば視覚障がいの人を雇える」と知ってほしいと考えています。

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三宅先生

近年では、スマートスピーカーなどのAI機器や、『Chat GPT』のような対話型AIも登場していますので、目が見えるかどうかよりも、的確な指示が出せるかどうかのほうが大切です。

現に全盲の方で、私よりもパソコンを使った文章の入力が速い人もいますし、目が見えるかどうかが、個人の労働力とイコールにならないと知ってもらえたらと考えています。

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「サポート機器なども進化している現代、目が見えなくても、見えにくくてもできることはどんどん増えている」と三宅先生は語りました。

NEXT VISIONが主催する『G-1グランプリ』や『isee! “Working Awards”』などのイベントは、多くの視覚障がい者が希望を持つきっかけになりそうですね。

また、NEXT VISIONは『神戸アイセンター』内に、『Vision Park(ビジョンパーク)』と呼ばれる空間を提供しています。

中外製薬の写真

『来ただけで元気になれる場所』というコンセプトで開設された施設で、眼科を訪れる患者やその家族だけでなく、目が見えない、見えにくいことで困っている人など、さまざまな人が集う同施設。

運動のためのクライミングウォールや、料理のためのキッチンなど、目的ごとにスペースが用意されていて、日々多くの人がコミュニケーションを取りながら、さまざまなことにチャレンジしているといいます。

ビジョンパークで新たな生きがいを見つけて立ち直ったという人も多くいるそうですよ!

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坂本さん

ありがとうございました。短い時間でしたが、お話を聞いて私も意識が変わりました!

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三宅先生

我々は視覚障がい者のためだけに活動しているわけではありません。人生100年時代といわれる昨今、長く生きていればいつか必ず目が悪くなります。つまり全員にとって自分ごとなんです。

ビジョンパークは、誰が来ても『気付き』を得られるような空間ですので、自分の身の回りに目が不自由な人がいない人ほど、訪れてほしいと思っています。

目が見えなくなる、もしくは見えにくくなってしまったことに絶望し、仕事を自ら辞めてしまったり、外で活動できなくなったりする人は多くいるそうです。

そういった人たちに対し、気付きや学びを提供し続けることで、再び希望を持ってもらうための取り組みをしている、NEXT VISION。

そして、希望を持った視覚障がい者がスキルを発揮するためには、周囲の人間や社会全体の理解も大切です。

まずは目の不自由な人もそうでない人も、視覚障がいを理解することが、当たり前のように共存できる世の中への第一歩となりそうですね。


[文・構成/grape編集部]

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