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「置き配利用時の習慣にして!」 元警察官が注意を呼びかけ

By - りょうせい  公開:  更新:

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不審者の写真

※写真はイメージ

あなたは日頃、「オートロックつきマンションだから安心」と思っていませんか。

2025年8月、神戸市のマンションで起きた事件では、犯人が住人の後ろにぴったりついて入る『共連れ』の手口で侵入し、エレベーター内で凶行に及びました。

オートロックは確かに有効な防犯設備ですが、その間隙を縫って襲いかかる犯行が起きてしまう現実を示した事件といえるでしょう。

さらに最近は、国土交通省が『置き配』を普及させるために、配達員がオートロックを一時的に解錠できる仕組みを支援する方針も打ち出しています。

これは住民にとっての便利さだけでなく、配達業者の業務効率化というメリットも期待されていますが、防犯性の低下を懸念する声も上がっていますよね。

本記事では、元警察官である筆者の視点から、オートロックのメリットと限界、そして補うべき具体的な対策について解説します。

オートロックのメリット

まずはオートロックのメリットから見てみましょう。

1.エントランスを突破しにくい

外部の人間が建物内に自由に入れず、不審者の侵入を抑制できます。これはオートロック最大の利点です。

エントランスの写真

※写真はイメージ

2.空き巣から狙われにくい

空き巣リスクの低下も大きなメリットの1つ。

警察統計でも、一戸建てに比べて集合住宅の侵入被害は少ない傾向があります。犯人は『侵入しづらく、逃げにくい建物』を避けるため、オートロックつき物件は対象から外されやすいのです。

3.逃走経路が限定される

出入口が管理されているため、侵入後の逃走が難しくなります。犯人にとっては大きなリスク要因となり、心理的な抑止力になるのです。

4.不審者が長居しにくい

インターホンや監視カメラと連動している場合、共用部に不審者がとどまると目立ちやすくなります。管理人や住人も異変に気づきやすい環境です。

オートロックのメリットが『ピンチ』になる行動・状況

では、オートロックの盲点はどんなことが挙げられるのでしょうか。

1.共連れを許してしまう

共連れを許してしまうと、オートロックであっても突破されてしまいます。ほんの少しの油断が、高いセキュリティの安全性を崩れさせかねません。

2.置き配制度による解錠リスク

国土交通省が普及を進めている『置き配』は便利で、配達業者の効率化にもつながります。

しかし、業者を装った不審者が、正当な理由を持って建物内に入れる口実にもなり得ます。オートロックの安心感が逆にリスクに転じる瞬間です。

3.裏口や窓の無施錠

犯人は必ずしも正面から入るとは限りません。非常口や裏口、一階の窓やベランダが無施錠だと、オートロックを完全に無視して侵入されてしまいます。

どれだけエントランスを固めても、最後は住人の基本的な施錠意識が欠かせません。

オートロックの写真

※写真はイメージ

オートロックの効果を守るための対策

筆者はオートロックを過信せず、以下の4点に気をつけるべきと考えます。

1.共連れや侵入を防ぐ住人の意識

エントランスで見知らぬ人と一緒に入らないことが基本。入る前には一度周囲を見渡し、異変がないか確認しましょう。

また、訪問者が来た時も、インターホンで姿や要件をしっかりと確認したうえで開錠することが大切です。

こうした小さな意識の積み重ねが、自分だけでなくほかの住人の命を守ります。

2.置き配利用時の確認

置き配は便利ですが、制度の仕組みがセキュリティリスクを含むことを理解しておく必要があります。

配達員以外が敷地内に入っていないか注意を払い、建物内で不審者を見かけたらすぐに管理側に報告しましょう。

それに加えて、自身の荷物がいつ届くのかを常に確認する習慣をつけることも大切です。

届くはずのない荷物が届いたり、予定時刻が大幅に異なったりするなど、少しでも異変を感じた時は、管理人や警察へ相談してください。

3.裏口・窓の施錠を徹底する

エントランスを守っても、裏口や窓が無施錠では意味がありません。特に1階や低層階では補助錠や防犯フィルムを活用し、侵入に備えた対策を講じましょう。

4.建物全体の防犯力を上げる

管理組合レベルでは、防犯カメラやセンサーライトを設置することで共用部の安全性を高められます。

住人同士で声を掛け合い、不審者の出入りに気づきやすい雰囲気を作ることも効果的です。

女性が会話する写真

※写真はイメージ

オートロックは、建物への侵入を物理的に難しくし、空き巣や不審者を遠ざける有効な防犯設備です。

ですが、共連れや置き配、裏口や窓の無施錠といった隙を突かれると、そのメリットが一瞬で失われてしまいます。

大切なのは「オートロックがあるから安心」と思い込まないこと。

住人の意識と行動、建物全体の対策、各家庭の工夫が合わさって初めて、防犯力は最大限に発揮されます。

安心のための設備を『どう使い、どう補うか』。この視点を持つことが、被害を防ぐ一番の近道です。


[文・構成/りょうせい]

りょうせいさんの顔写真

記事執筆 りょうせい

元警察官。警察歴10年。
交番勤務を経て、生活安全課の捜査員として勤務。
行方不明やDVなどの「人身関連事案」を対応しつつ、防犯の広報・企画業務を兼務。
現在は警察の経験を生かし、Xや音声配信(StandFM)にて、防犯情報を発信中。
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