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3人に1人が『仕事と不妊治療の両立』に悩み…約2割が『不妊退職』も

By - grape編集部  公開:  更新:

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※写真はイメージ

日本で起こる深刻な社会問題の1つである、『少子化』。

そこには、仕事と子育てを両立できる環境整備の遅れや高学歴化、結婚・出産に対する価値観の変化、子育てに対する負担感および経済的不安定の増大など、さまざまな要因が絡み合っています。(※1)

その一方で、少子化対策の担い手となる20~40代の日本人男女の半数が「いつかは子供を授かりたい」と考えているという一面も。(※2)

図:将来、子供を授かりたいか?

製薬会社のメルクバイオファーマは、『第4回 妊活®および不妊治療に関する意識と実態調査』(※2)を実施。

全国の20~40代の男女3万人を対象にした事前調査で、将来子供を希望する人に、子供を授かるのに理想的な年齢を聞くと、約3人に2人が「25~29歳」と回答する一方で、 実際の初産は30代以降が約4割と、理想と現実にギャップがあることが分かりました。

さらに、不妊に悩んだ経験を聞くと、全体の5人に1人が不妊に悩んだ経験があることが分かりました。 不妊の悩みは、男性(19.4%)より女性(26.1%)に多く、女性の約4人に1人は不妊で悩んだ経験があります。

また、 年代別に見ると、男女ともに30代が高く、30代女性では約3人に1人(32.9%)、30代男性では約4人に1人(23.1%)が不妊の悩みを経験しています。

WHO(世界保健機関)によれば、不妊の約半数は男性に原因があるとされており、検査をしても原因が分からないこともあります。(※3)

経済的にも負担が大きい不妊治療 本項目は全て(※2)より引用

さらに、自身やパートナーが不妊治療を経験した、または経験している20~40代の男女300人を対象に、不妊治療に関わる経済的な負担に関する本調査を実施。

まず、不妊治療に関する経済的負担について聞くと、全体の89%がなんらかの経済的負担を感じていることが分かりました。

図:不妊治療に関して経済的負担となるもの(複数回答)

不妊治療に関して経済的な負担となるものを聞くと、全12項目のうち1位が「治療費」(74.3%)、次いで「薬剤費」(49.3%)、「通院のための交通費・ガソリン費」(29%)、「サプリメント」(22%)や「漢方」(17.7%)と続きます。

現在、不妊治療でかかる費用の多くが保険適用外です。患者はいつ妊娠できるかゴールが見えないまま、治療費を支払い続けなければなりません。

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不妊治療でかかった治療費の金額について聞くと、平均で総額約130万円にのぼります。また、そのほか不妊治療のためにかかった二次的出費は総額約236万円*、交通費・ガソリン費は月々約2.2万円かかる人も。妊娠できるまで時間がかかれば、さらに金額も膨れ上がります。
*調査で、「二次的出費について負担と感じる」と回答した人たちが回答した平均金額

そのため、6割強の人が経済的な理由で治療を諦めたり、一時やめたり遅らせたり、迷ったりした経験があると答えました。

さらに、約3人に1人は「仕事との両立」(35%)に悩んでいるという結果に。不妊治療経験者の約4人に1人は、通院のために週1日以上、有給休暇を使って不妊治療をしていることも分かりました。

また、厚労省の調査では、不妊治療をしている(または、予定している)人のうち、「職場へは一切伝えていない(または、伝えない予定)」とした人がもっとも多く、「職場ではオープンにしている(または、オープンにする予定)」とした人は、その8分の1程度にとどまっています。

職場でオープンにしていない理由として、「伝えなくても支障がないから」とした人もいたものの、職場で不妊治療していることを受け入れられる風土が十分に醸成されていないことが示唆され、職場内での不妊治療に対する理解や休暇制度を活用しやすい環境づくりが望まれます。(※4)

※写真はイメージ

仕事を休むだけでなく、不妊治療のために退職したり、仕事内容を変えたりするケースもあります。

不妊治療中に働いていた人に、不妊治療のために自身やパートナーが退職や異動をしたことはあるかと聞くと、17.9%が「退職して専業主婦・主夫になった」と回答。「転職」や「異動」を加えると、不妊治療のために約3割の人が仕事を変えています

さらに、残業ができない、欠勤扱いになる、通院しやすい部署異動や転職などによる収入減があったと答えた人にその総額を聞くと、平均で約108万円という結果になりました。

男女ともに加齢による影響を受けますが、特に女性は高年齢になるほど妊娠しにくくなり、不妊治療を必要とする夫婦も増えます。

日本が一刻も早く『少子化』を食い止めるためには、出産・子育て支援施策だけではなく、不妊や妊活について、年齢、性別を問わずより多くの人が理解を深め、早くに行動を起こせるよう、企業を含めた社会全体のサポートの輪を広げていくことが必要なのかもしれません。


(※1)少子化対策白書(内閣府)

(※2)『第4回 妊活®および不妊治療に関する意識と実態調査』

  • 調査方法:インターネット調査
  • 調査期間:①事前調査 2020年4月10日(金)~4月11日(土)/②本調査 2020年4月11日(土)~4月13日(月)
  • 調査対象:①事前調査 全国の20~40代男女3万人/②本調査 不妊治療経験者300人(自身またはパートナーが過去に不妊治療を受けた、または現在不妊治療を受けている人)
  • ※本調査に記載の数値は、小数点第2位以下を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。

(※3)不妊症の原因男女比,1996(WHO)

(※4)事業主・人事部門向け 不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル(厚労省)


[文・構成/grape編集部]

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