タンスに眠る衣服が、障がい者スポーツに役立つ理由 現役選手が語る 提供:産経新聞社 By - grape編集部 公開:2018-02-22 更新:2018-06-02 エコチャリティー寄付服 Share Post LINE はてな 日本で排出される量:年間約100万トン うち、埋立または焼却処分される割合:70% みなさんはこの数字が何を示しているか、わかりますか。 それは『衣料品』。タンスやクローゼットに眠っている着なくなった服の多くは、まだまだ使えるのにもかかわらず、捨てられてしまっているのです。 「使い道がある限り、衣類が循環・リユース・リサイクルされるように」そんな想いで立ちあがった『ふくのわプロジェクト』では、寄付していただいた衣類を、リユース専門業者に買い取ってもらったり直接販売することで得た収益金で、パラスポーツ・障がい者スポーツを応援しようという活動をしています。 それだけではなく、服のリユースやパラスポーツについてもっと多くの人に広めるため、数多くのイベントも主催しています。 (左から:布矢千春さん、山口大人さん、道端カレンさん、秦由加子さん) 2018年2月8日に開催されたトークショー『ふくのわ☆衣類のリユースでパラスポーツを応援しよう!』では、『服のリユース』と『パラスポーツ』の2つのテーマで、熱いトークが繰り広げられました。 トークショーの第一部では、サスティナブル・ファッション専門のデザイナーとして活躍する山口大人(やまぐち・まさと)さん、ドレスメーカー学院長の布矢千春(ぬのや・ちはる)さん、モデルの道端カレン(みちばた・かれん)さんの3人が登壇し、リユース衣類の最新のトレンドを語りました。 持続可能なファッションは、ステータス 日本と比べて、衣類のリユースが盛んな海外。自分が使わなくなった服は『誰か使いたい人に渡す』という発想を持っている人が多いと言われています。 道端さんによると、多くのモデルの人たちも、普段から古着を上手に取り入れていると言います。 道端:古着には、新しいものでは出ないような雰囲気があります。例えばTシャツのよれた独特な感じだったりとか、バッグの風合いとか…。ハイブランドのものでも古着で取り入れてカジュアルダウンして着ることもオシャレですよね。ただ新しい服を買っていくだけでなく、使い続けるというのは素敵だなと思います。 布矢さんによると、すでにアメリカでは新しい服に対してもサステナブル(持続可能)さが求められるようになっているそうです。 布矢:アメリカで話題になっているアパレル会社では、衣類の製造コストや素材の値段まで公開しているんですね。子どもの労働や安い賃金で作っていないし、素材に関してもサステナブルであることを証明しています。 そして消費者側も、そこの商品を着ることが『サステナビリティの意識がある人』ということで、環境問題を真剣に考えている人ということで、1つのステータスにもなるんです。 古着を着こなせるのは、カッコいいこと! このような海外の事情と比べると、日本は遅れているようにも見えます。しかし山口さんによると、日本人にはもともと衣服やあらゆるものを大切にするというDNAが含まれていると言います。 山口:古着の歴史を文献で見ると、室町時代にはすでに古着という概念があったことが分かります。そして江戸時代の庶民は、人生で5枚だけしか着物を着なかったとも言われています。 あずきが3つ包められる布は捨ててはいけないとも言われていました。このように日本には古くから、悉皆(しっかい)の精神…いわゆる『使い尽くす』という精神があるんですよ。 そして最近では、日本でも衣服をリユースする若者が爆発的に増えているそうです。 山口:リユースチェーン店というものが増えてきたことによって、古着との接点が増えてきて、取り入れるかたが増えてきたのではないかなと思います。 布矢:特に若年層では、お金をかけず気軽に着られて、かつオリジナリティを出せるというところが、人気の理由だと感じています。私の生徒たちも、安いものを探して、たとえば羽織をコートがわりにワンピースの上に合わせたり、とても上手にコーディネートしていますね。 衣類のサステナビリティを意識する学生が増えてきたと語る布矢さん。これがより多くの人たちに広がれば、日本で捨てられてしまう衣類の量も減っていくかもしれません。 パラスポーツが、より身近なものになるように トークショーの第2部では、パラトライアスロン選手の秦由加子(はた・ゆかこ)さんが登壇。競技の魅力や、パラスポーツ選手としての想いについて語りました。 秦さんは13歳で骨肉腫を発症し右大腿部を切断し、小学3年生からやっていた水泳をやめざるを得なくなりました。 就職後、秦さんはパラスポーツの存在を知り、水泳を再開。2010年から12年まで『日本障がい者水泳連盟』の国際大会強化指定選手を務め、13年にトライアスロン競技に転向しました。パラスポーツは、彼女の人生を大きく変えました。 ※写真はイメージ また第1部に引き続き、道端カレンさんも登壇。彼女はモデルでありながらトライアスロンに参戦していて、2017年に館山わかしおトライアスロンと東扇島トライアスロンで女子総合優勝を果たしています。 道端:5年くらい前に、マラソン大会に向けて毎日練習をしていた時に、友達に「そんなにストイックに練習できるんだったら、トライアスロンできるよ」と言われて、トライアスロンを始めました。小学校の時にスイミングスクールに通っていたし、ランもやっていたので「自転車は休む時間なのかな」と思って始めたら、大変なことになりました。自転車結構キツいんですよ。 トライアスロンは水泳、自転車ロードレース、長距離走の3種目を連続して行う耐久競技。パラトライアスロンの場合は、オリンピック・ディスタンス(水泳:1.5キロ、自転車:40キロ、長距離走:10キロ)の半分の距離を制覇しなければなりません。 秦:パラスポーツでは、ないものを道具で補うという面があります。例えば左手の手首がない選手は、バイクの時にブレーキを片方だけでやる必要があったり、私の場合は脚の切断なので、バイク用の義足、ラン用の義足とそれぞれ作ってあります。 車椅子の選手は、手で漕ぐバイクに乗ったりとか、3種目ある中でれぞれの身体の特徴に合わせたいろんな道具を使って挑んでいます。そして種目が変わるトランジションという部分も競技の1つですので、いかに早く道具を取り替えるかというのも重要です。 道端:私が競技に出るとき、パラの選手と一緒になることもあるんですね。スタート前に入水するときに見ることがあります。スイムのスタートはバトルになって、いろんな人とぶつかったりするので、パラの方々は私たち以上に大変なんじゃないかなと思ったりしています。 秦さんは、障がいのタイプに応じたさまざまな道具や工夫が必要で、それを用意するためには多大な費用が必要になる場合もあると言います。 秦:パラスポーツは、無いモノを道具で補うという面も大きいですし、指導者に関しても、なかなか専門的な指導をしていただける人は日本には少ないと思います。なので競技を続けていく上で、パラ選手が苦労している点というのは、まだまだ日本でも進んでないという点は多いのかなと思います。 秦さんがいま掲げているゴールは、東京2020でメダルを取ること。その理由は、表彰台に立つ姿を見せて、多くの人たちに希望を与えたいからでした。 秦:たくさんのかたにトライアスロン競技やパラスポーツを知ってもらいたいです。そこから障がい者の理解につながり、障がいを持っているかた、そうでないかたも「まだまだやれることがたくさんある」とか、「人生まだまだだな」と感じられるような社会になればいいなと思っています。 衣類のリユースを通じて、パラスポーツを応援しよう クローゼットで眠る服から、関わってくれた人みんなが笑顔になる「服の輪」が生まれますように。使い道がある限り、布が久しく循環・リユース・リサイクルできますように。 そんな願いを込められた『ふくのわプロジェクト』は、服のリユースを促しながらパラスポーツを応援する活動を続けています。 毎年、日本の家庭から捨てられる衣類の1%をふくのわで集めることができたなら、車椅子バスケット用の車いすを約200台購入できるそうです。 トークショーの会場には、古着を寄付することができる『ふくのわ回収BOX』が設置され、そこにはあふれるほどの衣類が投函されていました。 また、2016年からふくのわプロジェクトを支えている富士紡ホールディングスの協力で、会場ではアンダーウェア・ブランド『B.V.D.』のチャリティバーゲンが開かれました。売り上げはすべてパラスポーツの発展のために役立てられます。 プロジェクトが本格的にスタートしてから1年4か月。 これまでに全国から寄せられた衣類は、約3万5千キロ。衣類のリユースによる募金金額は100万円を超えたそうです。 『服』から『福』の輪を広げるための活動。あなたも使わなくなった衣服を寄付してみませんか。 ふくのわプロジェクト ※通年で宅配便でも衣類の寄付を受け付けています。詳細はこちらをご確認ください。 [文・構成/grape編集部] Share Post LINE はてな
みなさんはこの数字が何を示しているか、わかりますか。
それは『衣料品』。タンスやクローゼットに眠っている着なくなった服の多くは、まだまだ使えるのにもかかわらず、捨てられてしまっているのです。
「使い道がある限り、衣類が循環・リユース・リサイクルされるように」そんな想いで立ちあがった『ふくのわプロジェクト』では、寄付していただいた衣類を、リユース専門業者に買い取ってもらったり直接販売することで得た収益金で、パラスポーツ・障がい者スポーツを応援しようという活動をしています。
それだけではなく、服のリユースやパラスポーツについてもっと多くの人に広めるため、数多くのイベントも主催しています。
(左から:布矢千春さん、山口大人さん、道端カレンさん、秦由加子さん)
2018年2月8日に開催されたトークショー『ふくのわ☆衣類のリユースでパラスポーツを応援しよう!』では、『服のリユース』と『パラスポーツ』の2つのテーマで、熱いトークが繰り広げられました。
トークショーの第一部では、サスティナブル・ファッション専門のデザイナーとして活躍する山口大人(やまぐち・まさと)さん、ドレスメーカー学院長の布矢千春(ぬのや・ちはる)さん、モデルの道端カレン(みちばた・かれん)さんの3人が登壇し、リユース衣類の最新のトレンドを語りました。
持続可能なファッションは、ステータス
日本と比べて、衣類のリユースが盛んな海外。自分が使わなくなった服は『誰か使いたい人に渡す』という発想を持っている人が多いと言われています。
道端さんによると、多くのモデルの人たちも、普段から古着を上手に取り入れていると言います。
道端:古着には、新しいものでは出ないような雰囲気があります。例えばTシャツのよれた独特な感じだったりとか、バッグの風合いとか…。ハイブランドのものでも古着で取り入れてカジュアルダウンして着ることもオシャレですよね。ただ新しい服を買っていくだけでなく、使い続けるというのは素敵だなと思います。
布矢さんによると、すでにアメリカでは新しい服に対してもサステナブル(持続可能)さが求められるようになっているそうです。
布矢:アメリカで話題になっているアパレル会社では、衣類の製造コストや素材の値段まで公開しているんですね。子どもの労働や安い賃金で作っていないし、素材に関してもサステナブルであることを証明しています。
そして消費者側も、そこの商品を着ることが『サステナビリティの意識がある人』ということで、環境問題を真剣に考えている人ということで、1つのステータスにもなるんです。
古着を着こなせるのは、カッコいいこと!
このような海外の事情と比べると、日本は遅れているようにも見えます。しかし山口さんによると、日本人にはもともと衣服やあらゆるものを大切にするというDNAが含まれていると言います。
山口:古着の歴史を文献で見ると、室町時代にはすでに古着という概念があったことが分かります。そして江戸時代の庶民は、人生で5枚だけしか着物を着なかったとも言われています。
あずきが3つ包められる布は捨ててはいけないとも言われていました。このように日本には古くから、悉皆(しっかい)の精神…いわゆる『使い尽くす』という精神があるんですよ。
そして最近では、日本でも衣服をリユースする若者が爆発的に増えているそうです。
山口:リユースチェーン店というものが増えてきたことによって、古着との接点が増えてきて、取り入れるかたが増えてきたのではないかなと思います。
布矢:特に若年層では、お金をかけず気軽に着られて、かつオリジナリティを出せるというところが、人気の理由だと感じています。私の生徒たちも、安いものを探して、たとえば羽織をコートがわりにワンピースの上に合わせたり、とても上手にコーディネートしていますね。
衣類のサステナビリティを意識する学生が増えてきたと語る布矢さん。これがより多くの人たちに広がれば、日本で捨てられてしまう衣類の量も減っていくかもしれません。
パラスポーツが、より身近なものになるように
トークショーの第2部では、パラトライアスロン選手の秦由加子(はた・ゆかこ)さんが登壇。競技の魅力や、パラスポーツ選手としての想いについて語りました。
秦さんは13歳で骨肉腫を発症し右大腿部を切断し、小学3年生からやっていた水泳をやめざるを得なくなりました。
就職後、秦さんはパラスポーツの存在を知り、水泳を再開。2010年から12年まで『日本障がい者水泳連盟』の国際大会強化指定選手を務め、13年にトライアスロン競技に転向しました。パラスポーツは、彼女の人生を大きく変えました。
※写真はイメージ
また第1部に引き続き、道端カレンさんも登壇。彼女はモデルでありながらトライアスロンに参戦していて、2017年に館山わかしおトライアスロンと東扇島トライアスロンで女子総合優勝を果たしています。
道端:5年くらい前に、マラソン大会に向けて毎日練習をしていた時に、友達に「そんなにストイックに練習できるんだったら、トライアスロンできるよ」と言われて、トライアスロンを始めました。小学校の時にスイミングスクールに通っていたし、ランもやっていたので「自転車は休む時間なのかな」と思って始めたら、大変なことになりました。自転車結構キツいんですよ。
トライアスロンは水泳、自転車ロードレース、長距離走の3種目を連続して行う耐久競技。パラトライアスロンの場合は、オリンピック・ディスタンス(水泳:1.5キロ、自転車:40キロ、長距離走:10キロ)の半分の距離を制覇しなければなりません。
秦:パラスポーツでは、ないものを道具で補うという面があります。例えば左手の手首がない選手は、バイクの時にブレーキを片方だけでやる必要があったり、私の場合は脚の切断なので、バイク用の義足、ラン用の義足とそれぞれ作ってあります。
車椅子の選手は、手で漕ぐバイクに乗ったりとか、3種目ある中でれぞれの身体の特徴に合わせたいろんな道具を使って挑んでいます。そして種目が変わるトランジションという部分も競技の1つですので、いかに早く道具を取り替えるかというのも重要です。
道端:私が競技に出るとき、パラの選手と一緒になることもあるんですね。スタート前に入水するときに見ることがあります。スイムのスタートはバトルになって、いろんな人とぶつかったりするので、パラの方々は私たち以上に大変なんじゃないかなと思ったりしています。
秦さんは、障がいのタイプに応じたさまざまな道具や工夫が必要で、それを用意するためには多大な費用が必要になる場合もあると言います。
秦:パラスポーツは、無いモノを道具で補うという面も大きいですし、指導者に関しても、なかなか専門的な指導をしていただける人は日本には少ないと思います。なので競技を続けていく上で、パラ選手が苦労している点というのは、まだまだ日本でも進んでないという点は多いのかなと思います。
秦さんがいま掲げているゴールは、東京2020でメダルを取ること。その理由は、表彰台に立つ姿を見せて、多くの人たちに希望を与えたいからでした。
秦:たくさんのかたにトライアスロン競技やパラスポーツを知ってもらいたいです。そこから障がい者の理解につながり、障がいを持っているかた、そうでないかたも「まだまだやれることがたくさんある」とか、「人生まだまだだな」と感じられるような社会になればいいなと思っています。
衣類のリユースを通じて、パラスポーツを応援しよう
クローゼットで眠る服から、関わってくれた人みんなが笑顔になる「服の輪」が生まれますように。使い道がある限り、布が久しく循環・リユース・リサイクルできますように。
そんな願いを込められた『ふくのわプロジェクト』は、服のリユースを促しながらパラスポーツを応援する活動を続けています。
毎年、日本の家庭から捨てられる衣類の1%をふくのわで集めることができたなら、車椅子バスケット用の車いすを約200台購入できるそうです。
トークショーの会場には、古着を寄付することができる『ふくのわ回収BOX』が設置され、そこにはあふれるほどの衣類が投函されていました。
また、2016年からふくのわプロジェクトを支えている富士紡ホールディングスの協力で、会場ではアンダーウェア・ブランド『B.V.D.』のチャリティバーゲンが開かれました。売り上げはすべてパラスポーツの発展のために役立てられます。
プロジェクトが本格的にスタートしてから1年4か月。
これまでに全国から寄せられた衣類は、約3万5千キロ。衣類のリユースによる募金金額は100万円を超えたそうです。
『服』から『福』の輪を広げるための活動。あなたも使わなくなった衣服を寄付してみませんか。
ふくのわプロジェクト
※通年で宅配便でも衣類の寄付を受け付けています。詳細はこちらをご確認ください。
[文・構成/grape編集部]