穴から顔を出すだけ! 誰でも簡単に仏像に変身できる『2D仏像顔出し看板』って何?
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臨時休業をした整体院 入り口にあった『貼り紙』に「これは仕方ない」「いい職場」2024年11月14日に、ある理由で臨時休業をした、同店。 「お許しください」といった言葉とともに、臨時休業を知らせる貼り紙を、Xのアカウント(@msgCura)で公開したところ、大きな注目を集めることになりました。
「お刺身いけます!」 鯛の1枚に「面構えが違う」「採用決定」マーク(@makunouchi4mark)さんがXに投稿した1枚に、このような声が続々と寄せられています。写っていたのは、スーパーマーケットで見かけたという、1尾の鯛。鯛を見たマークさんは、思わずこうアテレコせずにはいられなかったようで…。
清々しい新緑の風景。
よく見ると木の陰から誰かが顔を出しています。そう、右端の大きな木のそば。
誰か、分かりますか。
これは、ダンボールで作られた『2D(にでぃー)仏像顔出し看板』の「帝釈天」。
顔を出しているのは、『2D仏像顔出し看板』作家のニシユキ(@nisiyukiten)さんです。
『顔出し看板』といえば、観光地の歴史的人物や建築物、またはゆるキャラやご当地グルメなどが描かれた看板に顔を出す穴があいているもの。
「旅行に行ったら必ず顔出し看板で記念撮影する!」という人も多いのではないでしょうか。
しかし、ニシユキさんの看板はダンボール製で持ち運び可能。大きさも体の半分くらいなので、いつでも、どこでも、誰でも、簡単に、仏像に変身できるのです。
そこから顔を出すだけで、ほら、あなたも「仏像」に変身!
模索する中で見つけた「変身」への思い
小さいころから絵を描くのが好きだったニシユキさんは、ずっと美術部に所属し絵を描き続けてきました。
しかし、描きたいものがぼんやりしていて、大学時代には写真を始めたり、先生に勧められるがままにシュールレアリスムの技法を学んだり、とにかく模索を続けていたのだそう。
そんなニシユキさんの転機は2001年。地元の美術館に臨時職員として働く傍ら関わった商店街のアートイベントでした。
ニシユキさん:
裏方として参加したイベントでいろんな人たちと触れ合ううちに、ふつふつと「自分もやりたい欲求」が湧いてきたんですよね。
それで見つけたのが「自分が変身する」という表現だったんです。
ここからニシユキさんの「変身」の歴史が始まります。とはいえ、『2D仏像顔出し看板』に至るまでにはまだまだ紆余曲折がありました。
まず制作したのは『等身大すごろく』。
ピチピチのスポーツウエアにサンバイザーを被って『人生インストラクター』に扮したニシユキさんが、お客さんをすごろくに案内するというコミュニケーションアートを展開します。
ここで変身の面白さ、コミュニケーションから生まれる新しい表現の面白さを実感したというニシユキさん。次に手掛けたのは『着ぐるみ』でした。
蜂をはじめ、鳥、犬、そして尻相撲の力士と、さまざまな着ぐるみアートを製作し展示。
「なぜ尻相撲?」と疑問も湧いてきますが、この着ぐるみでお客さんと尻相撲するパフォーマンスは想像しただけでも楽しそうですね。
しかし、着ぐるみで表現するうちにあることに気付きます。
それは人が心の中に秘めている変身願望。
ニシユキさん:
イベントで「着ぐるみを着てみたい」という方(人)は結構いて。誰しも何かしら変身願望を持っているんだなと気付いたんです。
そうしたら、誰でも変身できる、変身することで完成する、そういう作品を作りたくなって。
そうしてたどり着いたのが『顔出し看板』だったのです。
しかも、「大きなパネルをどこかに設置するのではなく持ち運べる形にすれば、どこでも、誰でも、好きな時に変身できる!」とひらめき、誕生したのがダンボールを材料にした『2D仏像顔出し看板』というわけです。
顔出し看板のテーマは『立体曼荼羅』
変身のテーマに選んだのは、京都の東寺講堂に安置されている『立体曼荼羅』。
『曼荼羅』とは仏教の中でも密教の世界を絵に描いたもので、それを弘法大師空海が具現化したのが東寺の『立体曼荼羅』。大日如来を中心に21尊のほとけさまが配されています。
ニシユキさん:
『立体曼荼羅』を初めて見た時、とにかくその造形美の素晴らしさに感動したんです。
顔出し看板なら、誰でもこの素晴らしい仏像に簡単に変身できるんですよ。
こうして東寺の立体曼荼羅の仏像を「2D」、つまり「平面」にした顔出し看板の製作を始めたのです。
顔出し看板は全て手作り。ダンボールに仏像を描き写し、彩色して切り抜き、その看板をイベントで展示して、お客さんに変身する楽しさを体感してもらいます。
そうして作品を作り続けて約7年半、2021年4月についに21尊全ての『2D仏像顔出し看板』が完成。
現在はその作品たちを連れて様々なアートイベントに参加しています。
広大なアート世界の入り口になりたい
顔出し看板で変身した姿はとてもユーモラス。その姿に喜んでくれる人は多いのですが、一方で「国宝である仏像に変身する」というパフォーマンスに眉をひそめる人もいるのだとか。
しかし、ただ面白おかしく楽しんでいるだけではないとニシユキさんはいいます。
ニシユキさん:
仏像などのアートは、まず興味を持たなければ見る事すらしませんよね。だから、『2D仏像顔出し看板』を素晴らしい仏像の世界を知るきっかけとして見てもらえたらいいなと。
「広大で奥深いアートの入り口担当」になれたら嬉しいと思っているんです。
確かに仏教、密教、曼荼羅と聞くと難しく考えてしまいますが、顔出し看板で変身している画を見るとなんだかほっこりして身近に感じてきますよね。
そして、顔出し看板では見られない本当のお顔はどんな風なのか、実際の仏像にも興味が湧いてきます。
さらに「仏像に変身する」ということにも特別な思いがある、とニシユキさんは語ってくれました。
ニシユキさん:
信仰は人それぞれですが、仏教でいえば「ほとけさま」のように、誰しも心の中に自分の行動や考えを律してくれるような、見守っていてくれるような大きな存在があると思うんです。
「顔出し看板を使って仏像に変身すること」で、自分の中のその存在をちょっとでも感じてもらえたら嬉しいですね。
『2D仏像顔出し看板』を作ってみよう!
自分でも作ってみたいという声に応えて、ダウンロードしてプリントアウトすれば自宅でも製作可能な少し小さめの図柄がニシユキテンさんの公式ウェブサイトにアップされています。
興味があるという方は、ぜひダウンロードして自分だけの『2D仏像顔出し看板』で変身を楽しんでみてください。
このほか、公式ウェブサイトでは、『ほとけさまボールペン』やスタンプして楽しめる『顔出し仏像はんこ』、著名な画家本人をモチーフにした『巨匠ボールペン』など、「アートの入り口担当」のニシユキさんらしいアートグッズを展開しています。
コロナ禍で家にこもっていると気持ちも塞ぎがち。そんな時はニシユキさんの公式ウェブサイトやSNSを覗いてみてはいかがでしょう。
いろんな場所でたたずむ「仏像に変身した姿」や楽しいグッズに、思わずクスッとするはずです。
ニシユキさんは今後も『2D仏像顔出し看板』作家として、さまざまなアートイベントに出展するとのこと。
機会があれば、『2D仏像顔出し看板』でぜひ変身を体験してみてください。今まで知らなかったアートの扉が開くかもしれませんよ。
ニシユキテンさんの公式ウェブサイト
ニシユキテンさんのTwitterアカウント
ニシユキテンさんのInstagramアカウント
[文/ハラアキコ・構成/grape編集部]