「何それ、地図の話?」 Z世代を困らせる昭和ビジネス用語
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退勤後に「ちょっといい?」 上司との雑談は『残業』になる?本記事は、会社での雑談や朝礼など、無給が当たり前のグレーな時間について、社労士の見解を取材して聞いた記事です。

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「この案件は、我が社の一丁目一番地だ。A社とB社の提案がテレコにならないよう、しっかり頼むぞ!」
上司からの熱のこもった指示。しかし、若手社員の頭の中は「一丁目一番地…?地図の話?テレコって一体なんだろう…?」となっており『?』でいっぱい。
悪気はないのに、なぜかZ世代の部下には伝わりにくい『昭和のビジネス用語』が、あなたの職場でも飛び交っていないでしょうか。
専門家「思い込みが、すれ違いを生みます」
無駄をそぎ落とし、ひと言で多くを伝えられるビジネス用語。お互いの共通認識であれば効率的ですが、世代などによってギャップがあり、意味が通用しないことも少なくありません。
それでは、世代間の言葉のすれ違いは、どうして生じてしまうのでしょうか。
大阪府大阪市で、キャリアコンサルタントをしている七野綾音さんに、話を聞いてみました。
――なぜ、Z世代に『ビジネス用語』が伝わらないのでしょうか。
上司のみなさんが若手だった頃、当たり前に使われていた言葉の多くは、当時の働き方や文化の中で生まれました。
しかし、時代は変わり、言葉が使われる前提そのものが、今の若者にはピンとこなくなっているのです。
また、Z世代はテキストでの明確なコミュニケーションに慣れているため、曖昧な表現や、特定の世代にしか通用しない『社内スラング』のような言葉に、戸惑いを感じやすい傾向があります。
決して、勉強不足というわけではありません。
――具体的に、どのような言葉が伝わりにくいのでしょうか。
いくつか、代表的な例を挙げてみましょう。
・一丁目一番地(いっちょうめ いちばんち):もっとも重要で、最優先で取り組むべき課題。
・ガラガラポン:これまでの関係や計画を一度白紙に戻し、ゼロからやり直すこと。
・テレコ:入れ違い、互い違い、あべこべになっている状態。
これらの言葉の裏には、『言わなくても分かるだろう』という、少し前の時代の共通認識があります。その前提が、今はもうない、ということですね。
※写真はイメージ
――上司が若手社員と円滑にコミュニケーションを取るためには、どうすればいいですか。
大切なのは、『自分にとっての常識は、相手にとっての常識ではないかもしれない』という、優しい想像力を持つことです。
難しい言葉を使うのが悪いわけではありません。使う際に、「〇〇って言葉、分かるかな?これは、こういう意味でね…」と、ほんの一言、説明を添えるだけで、部下の安心感はまったく違います。
何より、部下が「それ、どういう意味ですか?」と、気軽に質問できる雰囲気を作ってあげてください。「こんなことも知らないのか」という態度は、若者の成長の芽を摘んでしまいます。
昭和上司に求められる『伝えよう』とする姿勢
この言葉のすれ違いは、どちらかが悪いわけではありません。
もしかしたら、『言わなくても分かるはず』という、ほんの少しの甘えが隠れているのかもしれませんね。
※写真はイメージ
誰しも若手だった頃、上司の背中を見て仕事を覚えたように、言葉もまた、空気感で学んできたはずです。
しかし時代は変わり、今は丁寧な言葉で、一つひとつ確認し合うコミュニケーションが主流となりました。
大切なのは、言葉の選び方そのものよりも、「相手にきちんと伝えよう」とする、その優しい姿勢なのではないでしょうか。
ほんの一言、説明を添える。その小さな思いやりが、世代間の見えない壁を溶かし、若手社員の安心感と成長につながっていくのでしょう。
[文・取材/ことのは 構成/grape編集部]
監修・取材協力 七野綾音
やりがいを実感しながら自分らしく働く大人を増やして、「大人って楽しそう!働くのって面白そう!」と子ども達が思える社会を目指すキャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント。
HP⇒キャリアライフコンパス合同会社