「おもやいって何?」通じなくて驚いた 「おもやい」「わけっこ」「ゆいまーる」から紐解く『心』と『つながり』
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
おもやい、わけっこ、ゆいまーる
小さい頃、母はひとつのものを分け合うこと、一緒に使いなさいということを、私たち姉妹にこんなふうに言っていました。
「三人でおもやいにしなさい」
一緒につかうこと、分け合うことを「おもやい」というのだと、ずっと思っていました。
あるとき私が「おもやい」と言ったら、友人がきょとんとした顔をしました。
「おもやいってなあに?」
ちょっとしたカルチャーショックでした。
友人に通じなくて、「おもやい」が九州、山口県あたりで使われている方言だと知りました。
父は鹿児島出身、母は熊本出身。ふたりとも方言ではなく・標準語で話していましたが、おそらくアクセントなどは九州弁だったと思います。
「おもやい」のように方言も紛れ込んでいたかもしれません。
そんな中で私も育っているので、きっと知らず知らずのうちに九州アクセントになっているようです。
おもやい。お催合い。
なんともやさしい響きです。仲良く分け合いなさい。
母がよく言っていた「おもやい」という言葉の響きはまろやかで、妹たちといろいろなものを分け合いながら育ちました。
耳にやさしい、慈しみがこもった言葉。
お互いに優しくなれる、慈しみを感じられる言葉だからこそ、心から「分かち合う」ことができる。
言葉のエネルギーが、行動のエネルギーへとつながっていく。素敵な言葉です。
各地には「おもやい」と同じような意味の言葉があります。
中部地方、近畿地方では「もやいこ」、東北地方ではお互いに融通し合うことを「いあい」、東日本、全国的には「わけっこ」「わけっこさの」と言うそうです。
そして沖縄地方では「ゆいまーる」。「結い(助け合い)」+「まーる(順番)」、物の共有だけでなく、「お互いに助け合って作業を分け合う」という心のつながりも含んだ言葉だそうです。
美しい方言ですね。言葉の中に、私たちが失いかけている『心』『つながり』があります。
今では使われなくなった言葉が多くあります。
「はしたない」という言葉も耳にしなくなりました。
言葉が失われると、その精神も失われるのです。
ということは、「はしたないこと」が平気になっていく。
これは精神文化が失われていくということで、由々しきことなのです。
「おもやい」「わけっこ」「ゆいまーる」の心を大切に。
この言葉と心を手放さないように。
そして私にとってこの言葉は、小さい頃の母の声につながっていく、時空を超える言葉でもあるのです。
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
※記事中の写真はすべてイメージ
[文/吉元由美 構成/grape編集部]