私たちにとって日本語は『母なる言葉』 今、日本人に求められていることとは
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
「母なる……」ということ
先日、ある会で「日本語という精神文化を守る」というテーマで卓話をさせていただきました。
言葉は時代の流れの中で変化するものです。新しい言葉が生まれ、失われていく言葉もある。新しい言葉の精神性が生まれ、失われていく言葉と共に、その精神性も失われます。
例えば「はしたない」という言葉を聞かなくなりました。すると、「はしたない」ことに無自覚になる。世の中に「はしたない」ことが増えるのです。
日本語にはその意味を現実にする霊力、言霊が宿っていると、いにしえの人たちは信じていました。
「敷島の大和の国は 言霊の幸はふ国ぞ 真幸くありこそ」
(大和の国は言葉の力で咲き誇る国です。ご無事で行ってらっしゃい)
これは万葉集に収められた柿本人麻呂の歌で、遣唐使を送る際に、無事を祈って詠んだ歌とされています。「真幸くありこそ」と言葉にすることで、無事を祈ったのです。
現代の私たちが『言霊』というものを意識し、大切にしたら、社会は今とは違っているかもしれません。
ポジティブな言葉を使うというのも、言霊を大切にすることにつながります。もう一歩進んで言うなら、ポジティブな言葉を自分のためだけでなく、必要としている誰かのために使うという気持ちもあるといいなあと思います。
私たちにとって日本語は『母国語』『母語』、母なる言葉です。そして、日本は『母国』。『母なる海』『母なる自然』という言葉もあります。
このような言葉から、私たちは母なるものに守られ、育てられているということがわかります。日本語の『海』(うみ)は、「産む」から来ているのでしょう。海は生命の源です。
誰もがお母さんは大切にしますよね。大人になる間に、母を嫌いになったり、疎ましく思う時期もあるかもしれない。
でも、私たちの胸の奥にある源は、死を迎えるときにさえ母を恋しく思うのではないでしょうか。
7年前に母を亡くしたとき、自分の『根』を失ったような気がしたものでした。母の大きさをわかったつもりでいても、失ったときにその大きさを思い知ります。
何があっても、どんなときも子を守る。母である私も、命を賭けて娘を守るでしょう。
母なる言葉、母なる国、母なる自然。そこには母なる思いがあります。母なる日本語、国を守るとは、その精神性、国柄を守る、ということ。
自然に育まれていることをありがたく思うこと。お母さんを恋しく、大切に思うように。それが今、多様性を大切にすることと共に、日本に、日本人に求められていることだと思うのです。
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」