お茶くみやコピーは女性の仕事? 大手旅行会社の歴史が「勉強になる」 提供:株式会社JTB By - grape編集部 公開:2024-03-05 更新:2024-03-11 会社国際女性デー2024旅行 Share Post LINE はてな ひと昔前までは、『お茶を出す』『コピーを取る』など、ちょっとした雑務は女性が任されることが多く、男女の働き方や待遇に差がありました。 しかし現代では、『女性活躍推進法』などによる後押しもあり、性別に関係なく社会で活躍できる環境の整備が進んでいます。 「私、育休ないの?」総務に伝えると… 旅行会社の大手、株式会社JTB(以下、JTB)は、2023年時点で、社員全体の62%が女性です。 今でこそ多くの女性社員が活躍している同社ですが、以前は男性の比率が圧倒的に高かったといいます。 フジサンケイグループのgrapeと、FNNプライムオンラインは、共同で取材を行い、JTB初の女性役員であり、男女雇用機会均等法が施行された際の1期生でもある、髙﨑邦子さんに、これまでの道のりをうかがいました。 ナビゲーターは、フジ・メディア・ホールディングス、サステナビリティ推進室の木幡美子さんです。 写真左=髙﨑さん、写真右=木幡さん 木幡さん 入社当時(1986年)の会社の風土はどのような感じでしたか? 髙﨑さん 100人くらいの規模の支店で、大体2割くらいが女性でしたが、経理や営業アシスタント業務をしている人がほとんどで、法人営業としては、私が女性初でした。女性は早めに出社して机を拭くとか、会議の資料を人数分コピーするとか、そういう慣習がある時代でしたね。 課長時代の髙﨑さん 木幡さん 自身がキャリアを重ねていく中で、女性活躍のために必要だと感じたことはなんですか? 髙﨑さん まずは育休や時短勤務などの制度を整えることが最初だと思います。次に作った制度をしっかりと浸透させて、使ってもらうことが重要です。私が課長の時代、管理職の育休制度がなかったんです。総務に「管理職が育休を取得した場合は?」と尋ねると、総務は「気付かなかった!すぐに作るね」といい、翌週には管理職にも育休ができました。つまり、会社は気が付いていないだけだったんですよね。当時からとても柔軟な会社で、必要だと分かれば即対応してくれたことは幸いでした。 女性側も「我慢しておけばいい」「波風を立てたくない」と思うかもしれませんが、声を上げていくことが重要だと思いましたし、私も今はそれを受ける立場です。みなさんにも声を上げていただき、会社の制度をよりよくしていきたいと思います。 木幡さん 髙﨑さんは、JTBで働く女性にとっての『ロールモデル』になっていらっしゃるんですね。 髙﨑さん 私は、『ロールモデル』ではなくて『ロールパーツ』だと思っているんです。人それぞれ個性や価値観は違うので、後輩には私だけでなく、ほかの人のいいところも取り入れてもらって、自分のオリジナルを作り上げてくれたらと思っています。その人もまた、次の世代のパーツになってくれたらいいですね。 髙﨑さん 現在、JTBでは『Diversity(多様性)』『Equity(公平性)』『Inclusion(包括性)』『Belonging(帰属性)』の頭文字を取った『DEIB(ディー・イー・アイ・ビー)』という考え方を推進しています。 例えば、2023年現在、社員の62%が女性ですが、毎年の社員意識調査で、「どの役職までなりたいか?」と聞くと、男性は「部長職」と答える人が多くて、女性は「私は管理職にふさわしくない」と回答する人が多いんですよ。このギャップを埋めるための研修や組織活動をしています。 髙﨑さん 意思決定をするセクションにも、もっと女性が入ってきてほしいと思っています。そのためには、『DEIB』の中でも『B』が非常に重要です。『帰属性』と訳されますが、私は『心理的安全性』と表現しています。それをしっかりと担保することによって、誰もがいろいろなことに挑戦できるようになり、新たなビジネスも生まれていきます。 「お客様にいい商品を提供した。結果として作った人を見たら半分が女性だった」という状態が理想ですね。 木幡さん 『DEIB』推進のために、具体的にどんな取り組みをしているのですか? 髙﨑さん ベースになるのはコミュニケーションです。『縦横無尽のコミュニケーション』と私は呼んでいるのですが、トップダウン、ボトムアップだけではなくて、タテ×ヨコ×ナナメを含めてコミュニケーションを取るということが大切です。特徴的なものとして『Smile活動』を行っています。これは全国150の事業所から、それぞれ『Smile委員長』を選任し、研修、イベントなど、それぞれの組織のコンディションに合った企業風土改革につながる活動をするものです。さまざまなコミュニケーション活動を通して事業所ごとの『働きやすさ、働きがい』を社員同士で作り上げています。年齢も性別もキャリアも関係なく、部長が委員長の個所もあれば、新入社員が務めている個所もあります。 木幡さん 今後の展望について教えていただけますか? 髙﨑さん 多様な人財それぞれが、もっと輝けるようにするため、さらに『DEIB』を推進していきたいと考えています。社員一人ひとりが持てる力を最大限発揮することと、経営と社員のベクトルの合致と共感を目指して『DEIB』のメッセージである『違いを価値に、世界をつなぐ』ということをしっかりと実行していきます。 ビジネスの現場において、まだ男女の差異が大きかった頃から、多くの女性が活躍できる礎を築き上げた髙﨑さん。 会社に働きかけるだけでなく、さまざまなセミナーなどを開催し、社員たちの意識改革にも取り組んできたといいます。 今後は髙﨑さんだけでなく、現在働く社員の一人ひとりが、誰かの『ロールパーツ』となっていくのでしょう。 それでは、JTBで働く女性社員たちは、現在の環境をどのように感じているのでしょうか。 さまざまな分野で活躍する、3名の社員にお話をうかがいました。 【ビジネスソリューション事業本部 マーケティングチームマーケティング担当マネージャー 前澤美保さん】 営業職として10年以上働いていますが、今までに「女性だから」「女性なのに」という理由で、働きにくいという思いを抱いたことはありませんでした。営業マンでも、ウーマンでもなく、1人の営業パーソンとして接してもらえることで、自分らしく働くことができています。 前澤美保さん 【ビジネスソリューション事業本部 事業推進チームグループリーダー(事業推進担当) 安達原祥子さん】 私は『Smile委員』として活動しています。コミュニケーション活性化を目的にした活動を通して、普段、仕事では関わらない人とも交流ができて、それが業務の連携につながるというケースもたくさんありました。最終的には、お客様のサービス向上につながればいいなと思っています。 安達原祥子さん 【ビジネスソリューション事業本部 第一事業部営業推進グループ 幸田紗也佳さん】 私はこれまでに育休を2回取得しています。取得する時も、上司や同僚に相談しにくいような雰囲気はまったくありません。育休中には上司が定期的に近況報告や応援メッセージをくれて、特に「待っているよ」という言葉は産後気持ちが不安定な中で、本当に励みになりましたし、復帰の時も温かく迎え入れてくれました。 復帰してからも、やりたい職種にも手を挙げればチャレンジさせてくれる土壌がありますし、勤務地や担務といった希望も聞いてもらえて助かっています。 幸田紗也佳さん 女性社員たちの声から、全員が生き生きと働いていることが伝わってきました。 男女による壁や差異を感じることもなく、ライフステージが変わっても、活躍し続けられる環境があるようです。 さまざまなセミナーや組織活動などを通して、現在の形を作り上げてきたJTB。 現在では『どうする?女性活躍推進!未来への投資として取り組むべき理由とは』という企業担当者向けの資料を作成しています。 実際の事例を織り交ぜながら、企業が女性活躍推進に取り組む重要性、施策のポイントを伝えるものです。 毎年3月8日は『国際女性デー』。JTBの取り組みは、多くの人が女性の生き方や働き方を考えるための『ロールパーツ』になりそうですね。 『DEIB』について詳しく知りたい FNNプライムオンラインの記事はこちらから [文・構成/grape編集部] Share Post LINE はてな
ひと昔前までは、『お茶を出す』『コピーを取る』など、ちょっとした雑務は女性が任されることが多く、男女の働き方や待遇に差がありました。
しかし現代では、『女性活躍推進法』などによる後押しもあり、性別に関係なく社会で活躍できる環境の整備が進んでいます。
「私、育休ないの?」総務に伝えると…
旅行会社の大手、株式会社JTB(以下、JTB)は、2023年時点で、社員全体の62%が女性です。
今でこそ多くの女性社員が活躍している同社ですが、以前は男性の比率が圧倒的に高かったといいます。
フジサンケイグループのgrapeと、FNNプライムオンラインは、共同で取材を行い、JTB初の女性役員であり、男女雇用機会均等法が施行された際の1期生でもある、髙﨑邦子さんに、これまでの道のりをうかがいました。
ナビゲーターは、フジ・メディア・ホールディングス、サステナビリティ推進室の木幡美子さんです。
写真左=髙﨑さん、写真右=木幡さん
入社当時(1986年)の会社の風土はどのような感じでしたか?
100人くらいの規模の支店で、大体2割くらいが女性でしたが、経理や営業アシスタント業務をしている人がほとんどで、法人営業としては、私が女性初でした。
女性は早めに出社して机を拭くとか、会議の資料を人数分コピーするとか、そういう慣習がある時代でしたね。
課長時代の髙﨑さん
自身がキャリアを重ねていく中で、女性活躍のために必要だと感じたことはなんですか?
まずは育休や時短勤務などの制度を整えることが最初だと思います。次に作った制度をしっかりと浸透させて、使ってもらうことが重要です。
私が課長の時代、管理職の育休制度がなかったんです。総務に「管理職が育休を取得した場合は?」と尋ねると、総務は「気付かなかった!すぐに作るね」といい、翌週には管理職にも育休ができました。つまり、会社は気が付いていないだけだったんですよね。当時からとても柔軟な会社で、必要だと分かれば即対応してくれたことは幸いでした。
女性側も「我慢しておけばいい」「波風を立てたくない」と思うかもしれませんが、声を上げていくことが重要だと思いましたし、私も今はそれを受ける立場です。みなさんにも声を上げていただき、会社の制度をよりよくしていきたいと思います。
髙﨑さんは、JTBで働く女性にとっての『ロールモデル』になっていらっしゃるんですね。
私は、『ロールモデル』ではなくて『ロールパーツ』だと思っているんです。人それぞれ個性や価値観は違うので、後輩には私だけでなく、ほかの人のいいところも取り入れてもらって、自分のオリジナルを作り上げてくれたらと思っています。その人もまた、次の世代のパーツになってくれたらいいですね。
現在、JTBでは『Diversity(多様性)』『Equity(公平性)』『Inclusion(包括性)』『Belonging(帰属性)』の頭文字を取った『DEIB(ディー・イー・アイ・ビー)』という考え方を推進しています。
例えば、2023年現在、社員の62%が女性ですが、毎年の社員意識調査で、「どの役職までなりたいか?」と聞くと、男性は「部長職」と答える人が多くて、女性は「私は管理職にふさわしくない」と回答する人が多いんですよ。このギャップを埋めるための研修や組織活動をしています。
意思決定をするセクションにも、もっと女性が入ってきてほしいと思っています。そのためには、『DEIB』の中でも『B』が非常に重要です。『帰属性』と訳されますが、私は『心理的安全性』と表現しています。それをしっかりと担保することによって、誰もがいろいろなことに挑戦できるようになり、新たなビジネスも生まれていきます。
「お客様にいい商品を提供した。結果として作った人を見たら半分が女性だった」という状態が理想ですね。
『DEIB』推進のために、具体的にどんな取り組みをしているのですか?
ベースになるのはコミュニケーションです。『縦横無尽のコミュニケーション』と私は呼んでいるのですが、トップダウン、ボトムアップだけではなくて、タテ×ヨコ×ナナメを含めてコミュニケーションを取るということが大切です。
特徴的なものとして『Smile活動』を行っています。これは全国150の事業所から、それぞれ『Smile委員長』を選任し、研修、イベントなど、それぞれの組織のコンディションに合った企業風土改革につながる活動をするものです。さまざまなコミュニケーション活動を通して事業所ごとの『働きやすさ、働きがい』を社員同士で作り上げています。年齢も性別もキャリアも関係なく、部長が委員長の個所もあれば、新入社員が務めている個所もあります。
今後の展望について教えていただけますか?
多様な人財それぞれが、もっと輝けるようにするため、さらに『DEIB』を推進していきたいと考えています。社員一人ひとりが持てる力を最大限発揮することと、経営と社員のベクトルの合致と共感を目指して『DEIB』のメッセージである『違いを価値に、世界をつなぐ』ということをしっかりと実行していきます。
ビジネスの現場において、まだ男女の差異が大きかった頃から、多くの女性が活躍できる礎を築き上げた髙﨑さん。
会社に働きかけるだけでなく、さまざまなセミナーなどを開催し、社員たちの意識改革にも取り組んできたといいます。
今後は髙﨑さんだけでなく、現在働く社員の一人ひとりが、誰かの『ロールパーツ』となっていくのでしょう。
それでは、JTBで働く女性社員たちは、現在の環境をどのように感じているのでしょうか。
さまざまな分野で活躍する、3名の社員にお話をうかがいました。
【ビジネスソリューション事業本部 マーケティングチーム
マーケティング担当マネージャー 前澤美保さん】
営業職として10年以上働いていますが、今までに「女性だから」「女性なのに」という理由で、働きにくいという思いを抱いたことはありませんでした。営業マンでも、ウーマンでもなく、1人の営業パーソンとして接してもらえることで、自分らしく働くことができています。
前澤美保さん
【ビジネスソリューション事業本部 事業推進チーム
グループリーダー(事業推進担当) 安達原祥子さん】
私は『Smile委員』として活動しています。コミュニケーション活性化を目的にした活動を通して、普段、仕事では関わらない人とも交流ができて、それが業務の連携につながるというケースもたくさんありました。最終的には、お客様のサービス向上につながればいいなと思っています。
安達原祥子さん
【ビジネスソリューション事業本部 第一事業部
営業推進グループ 幸田紗也佳さん】
私はこれまでに育休を2回取得しています。取得する時も、上司や同僚に相談しにくいような雰囲気はまったくありません。育休中には上司が定期的に近況報告や応援メッセージをくれて、特に「待っているよ」という言葉は産後気持ちが不安定な中で、本当に励みになりましたし、復帰の時も温かく迎え入れてくれました。
復帰してからも、やりたい職種にも手を挙げればチャレンジさせてくれる土壌がありますし、勤務地や担務といった希望も聞いてもらえて助かっています。
幸田紗也佳さん
女性社員たちの声から、全員が生き生きと働いていることが伝わってきました。
男女による壁や差異を感じることもなく、ライフステージが変わっても、活躍し続けられる環境があるようです。
さまざまなセミナーや組織活動などを通して、現在の形を作り上げてきたJTB。
現在では『どうする?女性活躍推進!未来への投資として取り組むべき理由とは』という企業担当者向けの資料を作成しています。
実際の事例を織り交ぜながら、企業が女性活躍推進に取り組む重要性、施策のポイントを伝えるものです。
毎年3月8日は『国際女性デー』。JTBの取り組みは、多くの人が女性の生き方や働き方を考えるための『ロールパーツ』になりそうですね。
『DEIB』について詳しく知りたい
FNNプライムオンラインの記事はこちらから
[文・構成/grape編集部]