「猫のしっぽが取れてんだけど」って!! 結構マズくないですか? 教えて獣医師さん!
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ある時、Twitter上に「うちの猫のしっぽが取れちゃった!」というツイートが投稿されました。
「こんなの初めて見た」「本当に取れたの!?」「猫ちゃん、大丈夫?」と、ネット上は騒然。
しかし、猫は大事に至らなかったようです。
猫の尻尾がこんなにポロッと取れてしまうことがあるのか?
そんな素朴な疑問を抱いた人もきっといますよね?
そこで、なぜ猫の尻尾が取れてしまったのかを獣医師の先生に聞いてみました。
猫は尻尾が切れても平気?
猫は尻尾が切れてしまっても大丈夫なのでしょうか?そして、こういった事態は、よくあることなのでしょうか?
そこで、横浜戸塚プリモ動物病院の獣医師、草場院長に詳しく聞いてみました。
「『そもそも猫の尻尾が何なのか』から説明しましょう。猫の尻尾は、正確には背骨(脊椎)の延長に当たるもので尾椎(びつい)と言います」
「脊椎は、首の頸椎、胸の胸椎、腰の腰椎、そして尾椎に分けられます。尾椎の部分が、いわゆる尻尾の部分ということですね。レントゲン写真で見ると、とても分かりやすいと思います」
出典:横浜戸塚プリモ動物病院
一見、柔らかそうに見えるので、猫の尻尾に骨があるとは意外でした。
ちなみに、基本的にはどの猫も尻尾の先まで、しっかりと尾椎があるとのこと。つまり、Twitterに投稿された猫の尻尾は、骨まで切れてしまっている状態なのでしょうか?
「実際に診察しているワケではないので断言はできませんが、先端の部分が壊死して取れてしまった可能性が高いですね」
基本的には人間と同じ
「人間の指でも起こり得ますが、ヒモで指をキツく縛り、先端に血液が流れないと、指先が壊死してしまいます。猫も同じで、血液の循環がうまくいかなければ、尻尾に限らず、壊死します。たとえ骨がある部分であっても、壊死すれば細胞が死んでしまい、取れてしまうのです」
草場院長は耳が壊死した猫の治療を行った経験もあると言います。壊死が起きてしまう原因はさまざまですが、話題の発端となった猫は、タヌキとケンカしたことで取れてしまったそうです。
「相手が野生のタヌキだとすれば、何らかの細菌が傷口から入り、尻尾の先まで血液が循環しなくなったと考えられます」
「また、相手が野生のタヌキでなくても、噛まれたことで尻尾の動脈が深く傷ついたとすれば、血液循環に障害が起こる可能性もありますね」
猫の尻尾には、イラストのように複数の動脈があります。この動脈が大きく傷つくと、血液の循環がうまくいかなくなる場合があるようです。
「尻尾の動脈は下側(地面側)に集中しています。この動脈をタヌキに噛まれたとすれば、噛まれた部分から先が壊死し、尻尾がポロッと取れてしまうこともあるのです」
キズが治りやすい猫
猫には「基本的に自己治癒力が高い」という特徴があります。ケガにもよりますが、犬だと完治まで1~2週間かかるような傷が、猫の場合は2~3日で治ってしまうことも。しかし、この自己治癒力の高さが裏目に出てしまうこともあるようです。
「今回のケースでも飼い主さんは、表面的には傷が治ったように見えたことで安心したのかもしれませんね。もちろん、それで問題ない場合もありますが、尻尾内部の動脈が傷つき、血流が滞っているケースもあるんです」
大きなケガをしてしまった場合などは、まず動物病院に連れて来てほしいと語る草場院長。来院が難しければ、電話での問い合わせでも構わないと言います。
「いくら猫の自己治癒力が高いとは言え、動脈が大きく傷つけば獣医師による治療が必要になります」
「また、尻尾が切れてしまった場合は、スグにでも動物病院に連れて行きましょう。場合によっては壊死が進行してしまう恐れもあるので、きちんと処置した方が安心です」
尻尾の役割
犬に比べれば、猫の尻尾が持つ役割は少ないものの、やはり尻尾が切れてしまうことでの弊害もあるようです。
「尻尾が担う最も大きな役割は、バランスをとることです。猫は動きが複雑で激しいため、尻尾を使ってうまくバランスをとっていると考えられています。尻尾が切れてしまうことで、運動時にバランスがとれず、転倒してしまうなどのケースも考えられますね」
ほかにも、人間が猫の感情を読み取ろうとする際、尻尾に注目することで多くの情報を得られると言います。
「よく『猫が尻尾を立てている時は気が立っている証拠』などと言われますが、これはその通りだと思います。猫が意図して尻尾を立てているというよりも、本能的なものと考えられるので、僕らも尻尾を見て猫の機嫌の良し悪しを判断するなんてことがあるんですよ」
草場院長は「猫の尻尾は人間で例えるなら、手の小指のようなもの」と語ります。なくても生活はできますが、力が入りにくいなど、やはり不便もあるでしょう。
愛する猫にそんな不便な思いをさせないためにも、ケガをした場合は獣医師に相談し、状況に応じて動物病院に連れて行くことを習慣付けた方が良さそうですね。
今回、取材にご協力いただいたのは『横浜戸塚プリモ動物病院』の草場院長。特化診療やセカンドオピニオンなども行うほか、診療時間が21時までと働く飼い主さんも来院しやすい環境が整った動物病院です。