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ケニア全ての女性が、命を落とさず出産できるように…現地医師と日本企業の挑戦

By - grape編集部  公開:  更新:

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日本から1万キロ以上離れた場所にあるアフリカ・ケニア。日本の1.5倍の面積を持つこの国には、4600万人の人々が住んでいます。

ケニアは今、深刻な問題を抱えています。それは、妊産婦と子どもの死亡率が高いことです。10万人に400人の妊産婦が命をおとしています。これはなんと日本の66倍です。5歳未満時の死亡率も、日本の23倍と、とても胸が痛む現状です。

この現状を改善しようと、ある日本の企業が奮闘しています。

大事なのは『地域住民の自立』

ケニアのナロク県には、遊牧民のマサイ族が住んでいます。彼らは、家畜の水と牧草を求めて移動します。

この地域は乾燥していて、道路、電気、通信などのインフラ設備がありません。気象が変動すると食料不足の恐れが生じ、乾季には深刻な水不足となります。住居も、窓などがないため換気が悪く、衛生環境は劣悪の状態です。

慣習として、早婚・強制婚・一夫多妻制などが現在でも認められているマサイ族。妊娠・出産・子育ての面においても、現代医療の知識を知らずに、伝統的な分娩介助に頼ったり、予防接種を怠っているのです。

全ての妊婦が、病院で出産できるように

マーガレット・ジェンガ医学博士は、ワールド・ビジョン・ケニアの保健事業のアソシエイト・ディレクター。ケニアにおける27健康保健分野を総括しています。

彼女の目標のひとつはケニアの全てのお母さんが、医療施設で子どもを産むことです。

医療施設での出産率を100%にするのが目標です。全てのお母さんが、技能を持った保険スタッフのもとで子どもを産むべきです。ケニアでは産科医療を無償化する新しい制度が始まりました。ですが、技能を持った産科医療の重要性に、まだ多くの人々が気付いていないのです」

マーガレット博士の目標を達成するためには、巡回診療を行ったり、地域住民への教育を行ったり、診療所を設立したりすることも重要です。

Mother to Mother SHIONOGI プロジェクト

ワールド・ビジョンとタッグを組み、ケニアのコミュニティの保健状態を改善しようとしているのは、製薬会社の塩野義製薬株式会社。

医薬品業界で新薬の登場が少なくなっている時代に入っても『人々の健康を守るために、最もいい薬を速やかにお届けする』という会社の基本的理念を崩さず、研究開発を続けてきたそうです。

アフリカ・ケニアで起きている妊産婦死亡の問題について、塩野義製薬として何ができるのか…そこで、多くの女性・お母さんが使っている総合ビタミン剤『ポポンS』シリーズの売り上げの一部を使い、ケニアの保健衛生に貢献していこうと考えました。それが『Mother to Mother SHIONOGIプロジェクト』です。

プロジェクトについて、執行役員・海外事業本部長の竹安正顕さんはこう語ります。

ポポンSは女性の方々、そして妊産婦の方々にご愛用いただいておりますが、売り上げの一部をもってアフリカのケニアのお母様がたの支援をしていくということでMother to Motherと名付けさせていただいております。

プロジェクトが開始したのは2015年10月。まだ1年ほどしか経っていませんが、すでに効果が出ているそうです。

インフラ整備の一環として、塩野義製薬の診療所を建てまして、去年11月からオープンをいたしました。1年目で、産前健診受診者が大幅にアップしていますし、HIVのカウンセリング・検査を受けた妊産婦数も大幅に増えております。そして5歳未満児の予防接種完遂児数も着実に増加しています。

塩野義製薬のプランは3年間。マーガレットさんの想いを現実にするためには、設備投資だけではなく、教育などにも貢献していかなければいけないと考えています。

最終的な目標は現地の方々の保健活動の自立を目指したいと思っています。そのためには、自ら勉強していただく。そして勉強していただくために、教育をするワーカーにいかに保健衛生の大事さを伝えるか。

特にジェンダーギャップもございますので、女性のみならず男性・ご主人の皆様にも内容を聞いていただくということも含めて総合的な教育プログラム・啓発活動をしていくというのがまず第一です。そして知識を付けながら、それを行政にいかに跳ね上げていくかというのがもう一つの課題かと思っております。

未来の世界をつくるのは子どもたち…。塩野義製薬は、ケニアの子どもたちの健康に奉仕できるよう、医療施設をさらに充実させたり、スタッフを増員したり、検査機器を導入するなどして、プロジェクトをさらに展開していく予定です。

部族の慣習を含め、人々の考え方を変えていくことは、出資したりするだけでは解決するものではありません。長い時間をかけて、現地に何度も足を運んで、努力をしていかなければなりません。

そんな中、竹安さんはプレスの人たちに「ぜひ現地を見に来てください」と発言しました。それだけケニアへの思い入れがあるのだな、と感じました。

適切な保健衛生が、より多くの人々に届くことを切に願います。


[文・構成/grape編集部]

取材協力
塩野義製薬株式会社

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