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日本の近代史を、ペーパークラフトで 100年を180秒に凝縮すると

By - grape編集部  公開:  更新:

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2017年6月18日に、あるTVCMが公開されました。幕末から明治維新、そして戦後の経済成長…100年あまりの時を経てめまぐるしい変化を遂げてきた日本の近代史を、なんとペーパークラフトにして表現したのです。

数千枚にもおよぶまっさらな紙に命が吹き込まれ、歴史が目の前で繰り広げられているような臨場感があります。

激動の歴史を、新しい観点で

ペーパークラフトの開始地点は明治後期。近代化に伴い、海外の文化を多く取り入れてきた日本でしたが、街には日本家屋が立ち並び、庶民の生活はまだ着物を身につける人がほとんどでした。家庭の食卓は、いまだ和食が主だったものの、牛鍋(すき焼き)やあんパンは大人気だったそう。

一方で、不平等条約が改正されることにより、他の国とより平等に接することができるようになりました。また、国産飛行機が初めて飛行に成功するなど、技術の進歩も多く見受けられました。

そんな明治後期の情景を再現しているのは、全て無彩色の紙。しかし光の動きや紙の質感、音楽によって、当時の活気がリアルに伝わってきます。

焼け野原からの再出発

第2次世界大戦の敗退により、多くのものを失った日本国民は、苦しい生活を余儀なくされました。

食料から日用品…手に入れられないものがたくさんある中、必死に働き、必死に生きていきました。

その努力が実り、高度経済成長を迎えた日本。世界第2位の経済大国まで上り詰め「東洋の奇跡」と称されるようになりました。

日本の歴史を180秒におさめた、ペーパークラフトのTVCM。たった100年間に、こんな激動があったのかと再認識させられます。

1つの視点から見る、日本の100年

この動画のもう1つの特徴は、激動の時代とともに歩んできた出光興産の歴史を通して振り返っていること。

出光興産の前身である出光商会は1911年(明治44年)、北九州の貿易港・門司で石油販売業をスタートさせます。創業者の出光佐三は、潤滑油(機械油)の販路を開拓していくなか、漁船の燃料を灯油から軽油に切り替えることを提案するなどのアイディアを通じて、顧客の信頼を得てきました。

戦後の環境でもだえた企業の姿

その後、満州鉄道への車軸油開発をはじめ、上海で大規模油槽所を竣工するなど、海外に販路を拡大していった出光。しかしそれは敗戦によって、ほぼ失われてしまいました。

それでも敗戦のわずか2日後には「愚痴をやめて再建にとりかかろう」と従業員に呼びかけた出光佐三。ラジオの修理販売、印刷、農業、漁業、醤油・食酢の製造など、さまざまな事業に取り組み、復帰を目指したそうです。出光も、戦後の困難に真正面から向き合っていたのです。

その後も、大型タンカーを就航させたり、イランからの石油製品輸入を実現させたりと、石油の安定供給のためにあらゆる施策をとってきました。

あまりにも多くの出来事があった日本の近代史。出光の社史は、単なる会社のうつりかわりを示すものではなく、その激動の時代に立たされたプレイヤーから見た、歴史の証人でもあるんですね。

歴史を変えた人々のエネルギーを、紙に込める

2017年6月20日の出光興産創業106年を記念して『1日限り』放送されたこのTVCM。日本の激動の近代史とともにある、出光の歴史を表現するために選んだ手法が、ペーパークラフトによるストップモーション・アニメーションでした。

ストップモーション・アニメーションは、1コマ1コマを写真撮影し、それを繋げてアニメーションを作成する手法。1秒のアニメーションを作るのに数百枚のペーパークラフトが必要で、1日に数秒分しか撮影できないそうです。

制作に携わった人によると、題材のスケールの大きさに負けない、最も時間と労力をかけられる表現を突き詰めた結果だったのだとか。丁寧に準備されたペーパークラフトの1枚1枚からは、激動の歴史に込められた熱さが伝わってきます。

まっさらな紙のみで、出光興産106年の歴史を凝縮したこの動画。その歴史を通じて伝えたい理念や想いを、あえて言葉を一切使わずに表したからこそ、心に訴えかけてくるのかもしれません。


[文・構成/grape編集部]

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