殺処分される直前の猫が、新しい飼い主の元へ 捨て猫がきっかけで『猫寺』に
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吐息が白くなり始めた晩秋の早朝、寺の境内をくまなく掃除する修行僧たちに混じって、あちらこちらに猫の姿が…。通称「猫寺」として知られる福井県越前市の禅寺「御誕生寺」の毎朝の光景だ。
平成14年に現在地に建立された御誕生寺が、一体なぜ「猫寺」となったのか?猪苗代昭順(しょうじゅん)副住職(41)によると、寺の建立工事中に、段ボール箱に入れられた4匹の子猫が境内に捨てられていたのが始まりだという。
修行僧らが朝ご飯を運んできた!猫たちは待ちきれず「ニャーニャー」と大合唱=11月13日、福井県越前市の御誕生寺(尾崎修二撮影)
その後も捨て猫が後を絶たず、面倒をみているうちに猫はどんどん増えていき、エサ代や治療費がかさむようになってきた。そこで寺では副住職のアイデアで、SNSなどを駆使して、全国の猫ファンに向けたメッセージの発信をスタートさせた。
これが大きな効果を発揮し、国内各地はもちろん、海外からも猫に会いたいという参拝者が急増。
フェイスブックのフォロワーは6000人を超え「こんな田舎の、何もない寺に…有り難い事です」副住職の口からは感謝の言葉があふれる。
流行りの「ゴメン寝」?いびきをかきながら眠るのは来訪者にも大人気の「レオ」=11月13日、福井県越前市の御誕生寺(尾崎修二撮影)
猫と人の〝縁結び〟
随時開催される「譲渡会」も好評で、寺で面倒を見ている猫の譲渡はもちろん、里親募集の橋渡しにも一役買っている。
御誕生寺の名物となっている猫の食事風景。雨どいを使ったエサ台には誰もが「ナイスアイデア!」と声をそろえる=11月13日、福井県越前市の御誕生寺(尾崎修二撮影)
保健所で殺処分される直前の猫を引き取り、譲渡会で新しい飼い主の元へ送り出したことも。これまで250匹を超える猫が、御誕生寺から巣立っていった。
「御誕生寺の猫が、ある意味“ブランド”として認められてきたのでは」と話す副住職。
多いときには60匹以上の猫であふれかえっていたというが、取材当日は27匹と落ち着いた頭数で、その全てに名前の書かれた首輪が付けられていることからも、猫を大切にあつかっている様子が伝わってくる。
勢ぞろいした猪苗代昭順副住職(後列左端)ら、御誕生寺の皆さん。画面中央でおどけて見せてくれたのが板橋興宗住職=11月13日、福井県越前市の御誕生寺(尾崎修二撮影)
日々の修行に加え、猫の世話まで…大変なのでは?若い修行僧に尋ねてみた。返答は「これが日常です。日々の修行の一部です」ときっぱり。思わず、自身の俗物ぶりを反省してしまう。
副住職によると、近年若いカップルの参拝が増えてきたという。目的は猫かと思いきや、それだけではなく、御誕生寺が「人と猫とを結ぶ場所」という事から「縁結び」の願いを込めての参拝なのだそう。
取材の最後に、寺の僧侶たちに集まってもらい、境内で写真を撮らせていただいた。89歳になる板橋興宗住職は笑顔を浮かべ、若い僧侶の頭に両手のこぶしを乗せておどけて見せた。ユーモアあふれる優しい笑顔は、猫たちを見守る御誕生寺にふさわしい笑顔だった。
御誕生寺の名物となっている猫の食事風景。雨どいを使ったエサ台には誰もが「ナイスアイデア!」と声をそろえる。みんな整然と並んで行儀良く…=11月13日、福井県越前市の御誕生寺(尾崎修二撮影)
「猫たちの世話は日常の生活の一部」と話す修行僧たち。命を大切に思う気持ちにあふれた御誕生寺。安心しきった猫の姿が物語る。=11月13日、福井県越前市の御誕生寺(尾崎修二撮影)
※この記事は2015年12月24日に公開されたものです。
猫特集バックナンバー【肉球マニアに捧ぐ】
[産経新聞写真報道局 尾崎修二]
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