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「ペットを安易に飼い、捨てる人が増えた」と怒りの声 保護団体に事実か聞いた

By - いとう舞香  公開:  更新:

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コロナ禍で『気軽に飼い、手放す人』は本当に増加しているの?

いとう

コロナ禍での変化といえば、ネットでは「ペットを安易に飼い、手放す人が増加している」という噂が上がっています。
保護活動をしている側から見ると、それは事実なのでしょうか?里親希望の人が増えた…などはありますか?

梅田さん

うちとしては譲渡する場に来ていただく機会が減ったので、残念ながら里親希望者はむしろ減っていますね…。
コロナ禍前と比べると多分、店に来てくれる人は半減してます。

いとう

えっ!むしろ減っているとは驚きました…。

いとう

保護団体からの譲渡の場合、ほとんどの場合がトライアルや審査を経て里親になることができますよね。
ですが、いってしまえばペットショップではお金さえあれば誰でもペットを飼うことができてしまう…言葉は悪いですが、コロナ禍で『ペットブーム』が到来していますし。

梅田さん

コロナ禍でペットショップの売り上げが伸びているというのは聞いたことがありますね…。

いとう

今回の『ペットブーム』で懸念しているのは、「いつかコロナ禍が明けた時、ペットを捨てる人が増えてしまうのでは?」という点なんですけれども…。

梅田さん

あり得ると思いますね。
今回に限らず、ペットブームの後に手放される動物が増えるというのは、残念ながらよくある話です。
これまで日本では何度も特定の犬種がブームになりましたが、必ずブーム後には「飼えない」という相談や、捨てられるペットが増えるんです。

日本ではこれまで、チワワやミニチュアダックスフンドなどが『ブーム』に

いとう

コロナ禍が終わっても、ペットと歩む人生は続きますからね…。
将来をしっかりと考えた上で、ペットを飼うべきか決めてほしいと思います。

梅田さん

たとえば「コロナ禍で在宅時間が増えたから」と犬を飼い始めて、いつか生活が元に戻った時にちゃんと散歩に行けるのか…とか。
犬の保護活動をしている方からは、すでにそういった話がちらほら出るようになっています。

梅田さん

逆に、うちも含めて猫の保護活動をしてる方から「捨てる人が増えた」という話はまだ聞かないですね。

いとう

現時点で手放す人が増えていない、という点は安心しました。
散歩やしつけという点を考えると、コロナ禍後に手放される可能性が高いのは犬かもしれませんね…。

梅田さん

もちろんコロナ禍は単にきっかけで、ちゃんと飼ってくれる人もたくさんいるとは思います。
ですが、中にはそうではない人も一定数いるとは思うので、そこは懸念していますね。

日本の動物愛護は今後どうなるの?

いとう

2019年に、5年に一度の改正動物愛護法が可決され、日本の動物愛護は1歩前進しましたよね。
とはいえ、生体販売についての決まりだけでなく、動物虐待の厳罰化もまだまだ甘いように感じてしまいます…。

梅田さん

数値規制(※)はダメだと思っていたので、本当によく通ったなあと…。

梅田さん

ただ繁殖業界からの反発もあって、我々からすると納得のいかない数値に押し戻されそうです。
経過措置があるので、決まった数値になるにはまだ5年ほどかかるでしょうし…正直まったく喜べない状況ですね。

いとう

海外は生体販売が禁じられていたり、ペットショップにいる動物も保護動物に限られていたりする場所もありますよね。
日本もいずれは、そうなるといいのですが…。

梅田さん

…実は最近『保護犬や保護猫と称して、本当はそうじゃない動物』が数多く日本に存在しているんです。

いとう

えっ…どういうことですか…?

梅田さん

繁殖リタイアの動物や、病気などで『売り物』として出せない動物を、保護動物と称して業者が安価で販売しているんです。
それはあくどい商売であり、僕は詐欺だと思うんですけれども、残念なことにそういう業者がもう本当にいっぱいいて…。

いとう

え…ええ~!?それは初めて知りました…。恐ろしすぎますね…。
せっかく保護動物を迎え入れようと思った人がいても、詐称された動物と知らずに飼うことになってしまうなんて…。

梅田さん

詐称して売られている動物たちは、本来なら『売り物』にならず命を奪われていた子なんですよね。
ですから、命を救っているという点では必要悪といえるのかもしれませんが…本当に難しい問題です。
ただ、そこで動物を飼う人たちは保護動物だと思っているわけですし、いいことをしようとした人がだまされているのは悲しいですね。

いとう

「生体販売をなくそう」といったところで、現在販売されている動物や繁殖されている動物の行き場がなくなる問題もありますしね。
ですが、「保護動物を迎え入れたい!」という人は、ちゃんとした団体なのかを事前に調べたほうがよさそうです…。

『ねこかつ』が目指す動物愛護のこれから

いとう

『ねこかつ』さんの今後の目標や、動物愛護の今後についてどのように考えていますか?

『保護猫カフェ ねこかつ』ウェブサイト

梅田さん

『ねこかつ』のウェブサイトでも掲げているように、到達点ではなく、まずは通過点として『殺処分ゼロ』を目指しています。

いとう

殺処分については、環境省のウェブサイトで毎年のデータが公表されていますが、すごい数ですよね…。

※環境省によると、令和元年度の殺処分数は犬が5,635匹、猫は27,108匹

環境省のデータを元に作成

梅田さん

これでもだいぶ減ってはいて、ひと昔は何十万匹もの犬猫が殺処分されていました。
ただ、減ってきたからといって「この子は救います。あなたは犠牲になってください」と命の選別をするのはおかしな話なので、ゼロにしなくちゃいけないんです。

梅田さん

殺処分がゼロになったら、「動物の命をむやみやたらと奪っていることが当たり前ではない」という意識に少しずつ変わっていくと思います。
その出発点が、数が多く、身近な存在である犬や猫。そこから動物実験や毛皮問題…そして、動物全般へ世間の関心が高まっていくんじゃないかな…と。

いとう

『殺処分ゼロ』はゴールではなく、動物愛護のスタートラインなんですね。
たしかに動物愛護に限らず身近なものが変わっていくと、それがやがて世間の常識になり、少しずつ価値観が変わったり視野が広がったりしますもんね…。
世の中の意識が変わることで、気軽に飼って捨ててしまう人が減ってほしいです。

梅田さん

犬や猫の平均寿命を考えると、動物を飼うっていうのはとても大変なことなので、ちゃんと覚悟を持った上で飼ってほしいとは思いますね。
人間と同じように犬猫も若いうちは元気ですけど、歳をとれば当然、医療費もかかりますし…。

梅田さん

たとえば60歳の人が犬を飼って、いざ75歳になった時に老犬をしょっちゅう病院まで連れて行って介護をできるのか…とか。
そういうことも意識が高まってくれたらいいなと思います。

里親を検討している人に伝えたいこと

いとう

本日は貴重なお話を聞かせてくださり、ありがとうございました!
最後に、犬や猫の里親を検討している人に向けたメッセージをお願いします。

梅田さん

世の中には、お家を必要としている恵まれない境遇だった子たちが、たくさんいます。
ぜひ、そういった子たちを家族に迎え入れるということを考えていただきたいです。

梅田さん

保護動物を迎え入れるのは、審査やお届けの手続きが面倒くさいというご意見もあるとは思います。
ですが、よほど特殊な団体の方でなければ、ちゃんと犬猫を大切にしてくれる方に譲渡しているので…。
これから何年も一緒にいる家族を迎え入れるということで…少し面倒な手続きかもしれませんが、最初だけは了承していただけたら嬉しいです。

譲渡会で出会いを待っている猫たち

『保護猫カフェ ねこかつ』は里親希望の人だけでなく、猫と触れ合いたい人も、もちろん来店できます。店の収益は保護活動のために使用されるので、来店することが保護活動への支援につながるのです。

また、「コロナ禍で外出しづらい」「行きたいけど店舗が遠い…」という人は、『ねこかつ』のAmazonほしい物リストからペットフードなどを支援することができます。

今すぐに殺処分をなくすことは難しいでしょう。しかし徐々に殺処分数が減ってきたように、一人ひとりの意識が変わることで世の中の常識も変化していくはずです。

新しい『家族』との出会いが生まれる場所

今この瞬間も、行き場を失くして『命の期限』が刻々と迫っている犬や猫たちが、全国に数多く存在します。

もし「ペットを迎え入れたい」と思ったら、保健所や保護団体からの譲渡を検討してみてください。そして家族になったあかつきには、最期までたくさんの愛を注いであげてください。

その行動は、『人間と動物が幸せな社会』の入り口に向かうための大きな1歩になるはずです。

【保護猫カフェ ねこかつ】

川越店:埼玉県川越市新富町1-17-6 3F
大宮日進店:埼玉県さいたま市北区日進町2-851-1 MKビル2F
※各店舗の営業時間や定休日については下記ウェブサイトをご覧ください。

ウェブサイト:保護猫カフェ ねこかつ
Twitter:@nekokatsu_1
Facebook:@cafe.nekokatsu
Instagram:hogonekocafe_nekokatsu


grapeでは、コロナ禍における企業や人々の奮闘を紹介する記事を、特集という形でまとめています。よろしければご覧ください。


[文・構成/grape編集部]

出典
環境省

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