電車内に真っ白のマネキン?フラッシュをたいて撮影すると、衝撃を受けた 提供:ヤンセンファーマ株式会社 By - grape編集部 公開:2018-10-20 更新:2019-03-09 動画医療病気道端アンジェリカ Share Post LINE はてな 2018年10月5日(金)、六本木・東京ミッドタウンの一角に真っ白なマネキンが出現! これはただの現代アート…ではありません。一体どんなメッセージが込められているか、想像できますか。 ある疾患を持つ人の悩みをアートで表現 自然光のもとでは白く見えるマネキンですが、右端の1体にご注目。 フラッシュをたいて撮影すると、このように身体の所どころに模様のようなものが浮かび上がります。 これは乾癬(かんせん)の疾患啓発プロジェクト『HIKANSEN project(ヒカンセンプロジェクト)』のキックオフ・イベントとして開催されたアートイベント『ふれられなかったにんげんもよう展』の展示の1つ。 イベントの様子についてはこちらの動画をご覧ください。 乾癬とは? 乾癬とは、いまだ根治療法が確立していない慢性の皮膚疾患で、日本には50~60万人の患者がいると推定されています。※1※2 乾癬になると、皮膚が赤くなる『紅斑(こうはん)』、皮膚が盛り上がる『浸潤・肥厚(しんじゅん・ひこう)』、その表面を覆う銀白色の細かいかさぶた『鱗屑(りんせつ)』、それがフケのようにボロボロとはがれ落ちる『落屑(らくせつ)』が起こります。 症状の見た目や『感染』を想起させる病名によって生まれる誤解から、人によっては、どこにいても、誰といても視線を感じてしまうなど、精神的な負荷が大きい疾患といわれています。※3 先ほどのマネキンは、そんな乾癬患者の悩みを『見える化』したアート作品だったのです。 HIKANSEN projectの名称には「乾癬は感染しない(非感染)」ことの理解を深め、患者さんが悲観せずに生活できる社会をつくっていくという意味が込められています。 SNSで反響を呼んだ道端アンジェリカさんの乾癬公表 オープニングセレモニーでは、アンバサダーに就任したモデルの道端アンジェリカさん、NTT東日本関東病院皮膚科部長・五十嵐敦之先生、一般社団法人INSPIRE JAPAN WPD 乾癬啓発普及協会・山下織江さんによるトークセッションも行われました。 山下「乾癬とアートを結びつけたのは初めての試みですが、患者さんの悩みをよく映し出している展示にとても感動しました」 五十嵐「4つのシーン(電車、会議室、美容室、寝室)を見て、患者さんの日常生活の悩みを改めて知らされました」 各シーンに複数のマネキンがあるのは、避けたり、避けられたりする『人間模様』を表しているといいます。 山下「私はどれも経験があるんですけど、特に美容室のシーンが印象的でした。症状がひどいときは鱗屑といってフケがたくさん落ちてくることで悩んでいたので。一度カミングアウトすれば楽なのですが、その後の気まずい雰囲気に耐えられず、美容室を転々としていた時もありました」 そんな乾癬患者の心の影を表すように、マネキンが置かれたアートブースはモノトーンで構成されています。 山下「乾癬のような見た目問題のつらいところは、当事者も周りの人も、なかなか声に出さないということ。心の問題は緊急性のある問題ではないので放置されがちです」 五十嵐「患者さんを診ていても、対人関係で一歩踏み出せないところがあると思います」 まったく知られていないか、知られていても誤った認識をされていることもある乾癬。 しかし2017年に道端アンジェリカさんが自身のインスタグラムで乾癬であることを告白したことがきっかけで注目を集めるようになりました。 山下「アンジェリカさんの話題は患者会の中でも一気に広まりまして、若い人から年配の人まで勇気をもらったと聞きました。私たちINSPIRE JAPAN WDPは全国各地で啓発活動を行っているのですが、地方でもアンジェリカさんの話題が上がることはしばしば。患者会への問い合わせもいままでにないくらい増えました」 いまでは明るく話すアンジェリカさんですが、以前は人にいえず悩んでいたといいます。 アンジェリカ「自分が乾癬になるまでこの病気のことは知りませんでした。病院で診断されてからも、気持ち悪いと思われたくないと思ってしまって、親しい人ほどいえず。特に、近距離で仕事をするヘアメイクさんやスタイリストさんにはいろいろな理由をつけて隠していましたね」 乾癬の症状は人目にさらされる場所に現れることが多く、発症後は周囲の視線を気にして行動が消極的になってしまう人も少なくありません。 さらに、かゆみや痛みなどで精神的・身体的なストレスも多く、生活の質(Quality of Life=QOL)が大きく低下する病気でもあります。 アンジェリカ「昨年インスタで乾癬を告白したのは、そんな生活に疲れてもいたし、悔しかったから。話して楽になりたいなって」 アンジェリカさんの場合は、妊娠を機に症状が落ち着いたこともあり、現在は乾癬と上手に付き合いながら子育てを楽しんでいるといいます。 3人はトークセッションをこのような明るいコメントで締めくくりました。 五十嵐「乾癬は患者さんのQOLの低下が問題。誤解をなくし、みなさんに正しく理解してもらうことが何よりも大切だと思います」 山下「治療法も増えたので、患者さんには乾癬を理由に何かを諦めないでほしいと思います。親身に相談に乗ってくれる医師や患者会の仲間たち、今回のアートイベントに携わってくれた企業も、みんな仲間です。一緒に頑張りましょう」 アンジェリカ「まずは『乾癬は感染しない』ということをみんなに理解してもらえれば、私たちも生活しやすいし、前向きになれます!」 乾癬患者の日常は私たちの正しい理解から始まる トークセッション終了後には、「乾癬が変えてしまった日常は、わたしたちにも変えることができる。」というメッセージ・ボードにおいて、3人が花飾りを付ける演出も行われました。 壁一面がカラフルな花で埋め尽くされた、展示最終日。これだけ多くの人が乾癬を知りました。 これまでは認知度が低く、知っていても「うつるのでは?」という誤解があった乾癬を、大胆にもアートで魅せるという実験的試み。 身体に浮かび上がった数々の模様は、誤解を恐れずにいえば、とても美しく見えました。 「乾癬は、『感染』しない。」 私たち一人ひとりが乾癬に対する正しい理解を深めることで、患者さんが悲観せずに生活できる社会を作っていきたいですね。 HIKANSEN project(ヒカンセンプロジェクト) ※1Kubota, K., et al.: BMJ. Open., 5:1, 2015. ※2照井正 他:臨床医薬, 30:279, 2014. ※3世界保健機関「世界乾癬レポート」,2016. [文・構成/grape編集部] Share Post LINE はてな
2018年10月5日(金)、六本木・東京ミッドタウンの一角に真っ白なマネキンが出現!
これはただの現代アート…ではありません。一体どんなメッセージが込められているか、想像できますか。
ある疾患を持つ人の悩みをアートで表現
自然光のもとでは白く見えるマネキンですが、右端の1体にご注目。
フラッシュをたいて撮影すると、このように身体の所どころに模様のようなものが浮かび上がります。
これは乾癬(かんせん)の疾患啓発プロジェクト『HIKANSEN project(ヒカンセンプロジェクト)』のキックオフ・イベントとして開催されたアートイベント『ふれられなかったにんげんもよう展』の展示の1つ。
イベントの様子についてはこちらの動画をご覧ください。
乾癬とは?
乾癬とは、いまだ根治療法が確立していない慢性の皮膚疾患で、日本には50~60万人の患者がいると推定されています。※1※2
乾癬になると、皮膚が赤くなる『紅斑(こうはん)』、皮膚が盛り上がる『浸潤・肥厚(しんじゅん・ひこう)』、その表面を覆う銀白色の細かいかさぶた『鱗屑(りんせつ)』、それがフケのようにボロボロとはがれ落ちる『落屑(らくせつ)』が起こります。
症状の見た目や『感染』を想起させる病名によって生まれる誤解から、人によっては、どこにいても、誰といても視線を感じてしまうなど、精神的な負荷が大きい疾患といわれています。※3
先ほどのマネキンは、そんな乾癬患者の悩みを『見える化』したアート作品だったのです。
HIKANSEN projectの名称には「乾癬は感染しない(非感染)」ことの理解を深め、患者さんが悲観せずに生活できる社会をつくっていくという意味が込められています。
SNSで反響を呼んだ道端アンジェリカさんの乾癬公表
オープニングセレモニーでは、アンバサダーに就任したモデルの道端アンジェリカさん、NTT東日本関東病院皮膚科部長・五十嵐敦之先生、一般社団法人INSPIRE JAPAN WPD 乾癬啓発普及協会・山下織江さんによるトークセッションも行われました。
山下「乾癬とアートを結びつけたのは初めての試みですが、患者さんの悩みをよく映し出している展示にとても感動しました」
五十嵐「4つのシーン(電車、会議室、美容室、寝室)を見て、患者さんの日常生活の悩みを改めて知らされました」
各シーンに複数のマネキンがあるのは、避けたり、避けられたりする『人間模様』を表しているといいます。
山下「私はどれも経験があるんですけど、特に美容室のシーンが印象的でした。症状がひどいときは鱗屑といってフケがたくさん落ちてくることで悩んでいたので。一度カミングアウトすれば楽なのですが、その後の気まずい雰囲気に耐えられず、美容室を転々としていた時もありました」
そんな乾癬患者の心の影を表すように、マネキンが置かれたアートブースはモノトーンで構成されています。
山下「乾癬のような見た目問題のつらいところは、当事者も周りの人も、なかなか声に出さないということ。心の問題は緊急性のある問題ではないので放置されがちです」
五十嵐「患者さんを診ていても、対人関係で一歩踏み出せないところがあると思います」
まったく知られていないか、知られていても誤った認識をされていることもある乾癬。
しかし2017年に道端アンジェリカさんが自身のインスタグラムで乾癬であることを告白したことがきっかけで注目を集めるようになりました。
山下「アンジェリカさんの話題は患者会の中でも一気に広まりまして、若い人から年配の人まで勇気をもらったと聞きました。私たちINSPIRE JAPAN WDPは全国各地で啓発活動を行っているのですが、地方でもアンジェリカさんの話題が上がることはしばしば。患者会への問い合わせもいままでにないくらい増えました」
いまでは明るく話すアンジェリカさんですが、以前は人にいえず悩んでいたといいます。
アンジェリカ「自分が乾癬になるまでこの病気のことは知りませんでした。病院で診断されてからも、気持ち悪いと思われたくないと思ってしまって、親しい人ほどいえず。特に、近距離で仕事をするヘアメイクさんやスタイリストさんにはいろいろな理由をつけて隠していましたね」
乾癬の症状は人目にさらされる場所に現れることが多く、発症後は周囲の視線を気にして行動が消極的になってしまう人も少なくありません。
さらに、かゆみや痛みなどで精神的・身体的なストレスも多く、生活の質(Quality of Life=QOL)が大きく低下する病気でもあります。
アンジェリカ「昨年インスタで乾癬を告白したのは、そんな生活に疲れてもいたし、悔しかったから。話して楽になりたいなって」
アンジェリカさんの場合は、妊娠を機に症状が落ち着いたこともあり、現在は乾癬と上手に付き合いながら子育てを楽しんでいるといいます。
3人はトークセッションをこのような明るいコメントで締めくくりました。
五十嵐「乾癬は患者さんのQOLの低下が問題。誤解をなくし、みなさんに正しく理解してもらうことが何よりも大切だと思います」
山下「治療法も増えたので、患者さんには乾癬を理由に何かを諦めないでほしいと思います。親身に相談に乗ってくれる医師や患者会の仲間たち、今回のアートイベントに携わってくれた企業も、みんな仲間です。一緒に頑張りましょう」
アンジェリカ「まずは『乾癬は感染しない』ということをみんなに理解してもらえれば、私たちも生活しやすいし、前向きになれます!」
乾癬患者の日常は私たちの正しい理解から始まる
トークセッション終了後には、「乾癬が変えてしまった日常は、わたしたちにも変えることができる。」というメッセージ・ボードにおいて、3人が花飾りを付ける演出も行われました。
壁一面がカラフルな花で埋め尽くされた、展示最終日。これだけ多くの人が乾癬を知りました。
これまでは認知度が低く、知っていても「うつるのでは?」という誤解があった乾癬を、大胆にもアートで魅せるという実験的試み。
身体に浮かび上がった数々の模様は、誤解を恐れずにいえば、とても美しく見えました。
「乾癬は、『感染』しない。」
私たち一人ひとりが乾癬に対する正しい理解を深めることで、患者さんが悲観せずに生活できる社会を作っていきたいですね。
HIKANSEN project(ヒカンセンプロジェクト)
※1Kubota, K., et al.: BMJ. Open., 5:1, 2015. ※2照井正 他:臨床医薬, 30:279, 2014. ※3世界保健機関「世界乾癬レポート」,2016.
[文・構成/grape編集部]