「うわ、懐かしッ!」「小学校で読んでたわ~」 偉人漫画、今と昔の違いにビックリ!
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- 出典
- 株式会社小学館
子供時代に、世界の偉人についての漫画を読んだことがある人もいるのではないでしょうか。
偉人の生涯というのは、子供に「自分も頑張ろう」と思わせたり、「この道に進みたい」と決意させたり、よい影響を与えることがありますよね。
2022年現在でも偉人の生涯を描いた漫画は出版されており、根強い人気を誇っています。
しかし、昔と今では社会は変化し、科学技術も進歩しています。
とりまく環境は変化していますが、現在刊行されている偉人漫画は、昔と比べて違いがあるのでしょうか。
偉人漫画の今昔について、偉人漫画のシリーズを出版している株式会社小学館に取材しました。
漫画化される偉人とは?
小学館では『学習まんが人物館』というシリーズが展開されています。偉人の生涯を漫画化したもので、これがいわゆる偉人漫画です。
『学習まんが人物館』を担当している、株式会社小学館・第二児童学習局の安達健裕さんに話を伺いました。
――現在の『偉人漫画』ですが、昔と比べてどんな違いがある?
昔に比べて、多種多様な分野から取り上げられることが多くなっているかとは思います。
それは時代の流れや子供たちを囲む生活環境の変化によるものなので、必然といえるのではないでしょうか。
ただし、偉人漫画の題材となる人物については、本質的なところでは変わっていない部分もあると思います。
――それはどんな点?
何かを成し遂げたということです。
弊社シリーズで、ある程度昔のものを分類してみると、下記のようなラインナップになります。
【政治家】ジョージ・ワシントンやジョン・F・ケネディ、ナポレオン・ボナパルトなど。
【発明家・起業家】トーマス・エジソン、ライト兄弟、本田宗一郎など。
【音楽家・漫画家・作家】モーツァルト、ベートーベン、手塚治虫、高村光太郎など。
【医者・科学者】野口英世、キュリー夫人など。
【障害や困難に立ち向かった人】ヘレン・ケラー、ナイチンゲール、アンネ・フランクなど。
【天下を取った武将】織田信長、豊臣秀吉、徳川家康など。
【海外の女王】エリザベス女王、マリーアントワネットなど。
――なるほど。図書館などで見る定番の人たちだ。
みなそれぞれが、何かを成し遂げたといえる人物です。
恐らく、昔の文部省時代の学習指導要領に沿って、教科書などで取り上げられていた人物がかつては『偉人』として公認されており、それに則った形で偉人漫画も刊行されてきたのではないかと思います。
努力して何かを成し遂げることが美談であり、その成し遂げた形が、大統領になった、革命を起こした、何かを発明・発見したなど分かりやすい人物が、学習漫画・偉人漫画の題材になったのではないでしょうか。
※写真はイメージ
最近の偉人もラインナップに入る!
――人物のラインナップ、偉人漫画化する人物はどう決めている?
過去の人選基準については正確には把握しておりません。しかし、当初は『人物館』というシリーズを成立させるために定期的に刊行していたので、まずは最初の10人(日本5人、外国5人)の人選は一気に行われたと思われます。
実際に下記の順で刊行されました。
【日本の偉人】
豊臣秀吉、手塚治虫、野口英世、植村直己、本田宗一郎
【外国の偉人】
ジョン・F・ケネディ、キュリー夫人、トーマス・エジソン、ヘレン・ケラー、モーツァルト
現在では、その人物を今取り上げる意義、読者の興味を引くフックなどを吟味して可否を決定しています。
フックというのは、例えば明治維新150年の時には、『維新の三傑』をそろえるために、漫画『大久保利通』、『木戸孝允(桂小五郎)』を刊行したり(『西郷隆盛』は既刊)、大河ドラマ『青天を衝け』の放映開始に合わせて『渋沢栄一』を刊行したり、といったことです。
――その時に興味を引きやすい人物も取り上げられると。
学習指導要領や個人の価値観に変化が生じたことや、ある程度、偉人として認知されていた人物の偉人漫画が出そろったこと、漫画そのものが活字よりも先行できる文化が生まれたことで、偉人としての認知度の低かった人物でも取り上げられる機会が増えてきているとは思います。
また、子供達の興味や英雄像も多様化し、ゲームクリエイター、声優、YouTuberなど、なりたい職業も多種多様になっているので、人選の際にはなるべく幅広い分野に目を広げているのが現状です。
――時の経過で偉人の認識も変化する?
ここ数年の傾向として、何かをきっかけに認知度が上がった人物、時間が経ったことで評価が固まってきた人物を多く取り上げています。
例えば、下記のような人物です。
・『ポケットモンスター』を作った、ゲームクリエイターの田尻智
・大河ドラマで注目された、柔道家の嘉納治五郎、マラソン選手の金栗四三、明智光秀、渋沢栄一、北条政子
・『Apple』の共同創業者の1人である、スティーブ・ジョブズ
・小学校の国語の教科書に掲載されるようになった点字の発明者、ルイ・ブライユ
・新紙幣の顔になる、微生物学者の北里柴三郎
・将棋の七冠である羽生善治(発売当時)
いずれにせよ、彼らも何かを成し遂げた人物であることに変わりはありません。
今後の展望としては、女性の偉人漫画が増えていくような予感がしています。誰とはいえませんが、温めている企画もありますよ。
『学習漫画』としての苦労は?
――偉人とはいえ、生まれてから亡くなるまで、ずっと立派な人だったということはないはず。その人のネガティブな部分についてはどう対応している?
ネガティブな部分を描くことに意味があれば描きますし、ないと判断したなら描きません。これは昔も今も変わらないと思います。
伊藤博文が若い頃に品川のイギリス公使館焼き打ちに参加したことなどは描いていますが、女性好きだったことは特に描いていません。
また、発刊後に評価が覆る可能性があることから、評価の定まっていない人物を取り上げることは基本的にしていないのです。そういった意味で、存命の人物も基本的には取り上げていません。
例外として『学習まんが人物館』シリーズではなく、『学習まんがスペシャル』というレーベルから出すことはあります。
現在『レーナ・マリア』『松井秀喜』『田尻智』『羽生善治』『平成の天皇』を発刊し、例外的な形で『くまモン』を発刊しています。
――文献が残っていないこともあると思うが、リアリティの追究など作画面で意識していることは?
なるべく史料に基づいた描写を心がけています。
幸い、私どもの編集室では学習まんが『日本の歴史』『世界の歴史』を出しており、作画資料については一通りそろっているので、古い装束や建物なども、かなり忠実に描いています。
一方で、ストーリーを盛り上げるための演出は行っていますが、確認の取れない事象をどうしても描かなくてはいけない場合は、注釈を加えて読者へ注意喚起しています。
例えば『このエピソードは、後世の創作ではないかともいわれています』と注釈を入れたものもありました。
基本的に図書館などにも置かれるシリーズなので、残酷な描写、グロテスクな表現、差別語など、悪影響を与えるような表現には留意しています。これは一般の書物と同じかもしれませんね。
――読者にメッセージを。
いつか親の元を巣立っていくお子さんの、人生の羅針盤となるような人物を、これからも紹介していきたいと思っています。
『歌は世に連れ世は歌に連れ』という言葉がありますが、流行歌だけではなく、偉人漫画も時代の流れとともに変化しているようですね。
実は、偉人漫画というのは大人になってから読んでも、驚きや発見があって面白いものなのです!
子供のいる親であれば、ぜひ子供に買ってみてあげてくださいね。子供が読んでいない時には、童心に帰ってぜひあなたも読んでみましょう。
[文/デジタル・コンテンツ・パブリッシング・構成/grape編集部]