多くの殺処分を乗り越え『ゼロ』達成した動物愛護センター 職員の言葉に考えさせられる
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動物愛護センターの『譲渡の流れ』は意外とシンプル
保護動物の譲渡って条件が厳しいイメージがあるんですが、講習と面談以外だと、どんな条件があるんですか?
施設によって異なりますが、うちの場合は「神奈川県在住で、原則65歳以下の成人」となっています。
実は2020年度に対象年齢が『原則』になって、65歳以上でも譲渡が可能な場合があるんです。
その場合は高齢の小型犬とか、散歩の必要がない猫とか…飼い主さんの生活や年齢に合わせてご紹介しています。
建物のあちこちに『飼い主さん募集中!』の貼り紙が
「最期まで面倒を見る」というのは前提条件ですが、突然何が起こるかは分からないので、万が一飼えなくなった時の預け先はちゃんと確認していますね。
あと、お住まいが動物飼育可能かとか、ご家族の合意はとっているかとか…。
ネットだと「保護団体は譲渡の条件が厳しすぎる」という声を目にするんですが、愛護センターは比較的条件が少ないんですね…。
とはいえ、「新しい飼い主さんと幸せになってほしい!」という想いはどちらも同じだとは思いますが。
確かに条件は少ないかもしれませんが、面接の時にいろいろとお尋ねした上で、適正に飼っていただける方にお譲りする…という形です。
ハードルが下がって「誰でもぜひ!ウェルカム!」と思いつつも、ちゃんと大切に育てていただけるよう譲渡の際はしっかりと説明しています。
殺処分を防ぐためにも間口を広げたいけど、ちゃんと大切に育ててくれる飼い主さんの元に行ってほしい、というジレンマですよね。
本当にそうなんです。動物愛護センターの場合、最後は殺処分という選択肢自体は残っているので…。
猫の紹介用プロフィールがたくさんあるが、これもほんの一部
職員が1枚ずつ特徴を書き込んでいる
建物のあちこちに保護動物のプロフィールが掲示されていますが、全部職員さんが作ってるんですよね。どれも特徴がこまかく書いてあって愛が伝わってきます!
そして、犬と比べると猫が圧倒的に多いように感じるのですが…。
プロフィールだとみんなかわいく写っているけど、保護されてきた頃はまだ人馴れしていない子たちもたくさんいたんです。それが、今では顔つきが優しくなってきて…!
今の収容動物は犬が20匹ほどなんですが、猫はつい最近、多頭飼育崩壊があって100匹ほど一気に増えてしまいました…。
猫たちは廣井さんが大好きな様子!
現在は、犬猫兼用の部屋も猫で埋まっているのだとか
ひゃ、100匹…!?そんなに急に増えて、世話は大変じゃないんですか…?
もうわりとギリギリですよ!ここは所長も獣医師で、このセンターには私も含めて獣医師は12人ほどいて。
ボランティアさんの助力があるとはいえ、現在は猫だけでも200匹を見ています。
全部で猫が50匹の時期もあれば、多頭飼育崩壊で突然100匹ドーンと増えることもあって…。
犬の収容数はわりと少なくて、希望者も多いんです。ここにくる子はほとんどが成犬ですね。
職員でプロフィールや行動評価のリストを共有していて、クセのある子の場合はドッグトレーナーにアドバイスをもらっています。
お散歩大好きな13歳のひゅうがくん
ちょうどお食事タイムで「ご飯まだかな~」の後ろ姿
ちなみに2019年度は犬猫で計100匹ほど飼い主からの引き取りがあったそうですが、どういった事情が多いんですか?
ネットの譲渡でよく見るのは、飼い主の引っ越しや病気、家族のアレルギー発覚といった理由ですが…。
ここでもそんな感じで、飼い主の病気や急逝などの、のっぴきならない事情も多いですね。
ただ、あまりにも身勝手な理由の場合は押し返すこともあります。「飼ったはいいけどなつかない」とか。
愛護センターは行政であり、法律にのっとって引き取っているんです。
でも、二つ返事で引き取るんじゃなくて、飼い主の引っ越しが理由なら「前日まで譲り先を探すよう頑張って!」と根気強く説得します。
人生は何が起こるか分からないため、ペットを手放さざるを得ない人もいるのでしょう。
しかし、のっぴきならない事情であれ、身勝手な理由であれ、事情が分からないペットにとっては、家族に手放されたことには違いありません。
飼い主がペットを手放すにあたって、廣井さんは愛護センターの役目についてこのように考えているといいます。
人それぞれ事情があるので、その判断自体は仕方がないとは思います。
でも我々はそういった問い合わせが入ったら、まずは何十分でも何時間でも動物を飼う責任について話すんですよね。
そこで分かってくれる人もいれば、「もういい!」って電話をバーンって切る人もいて…。
結果的に手放すことになっても、ちゃんと伝えることで1人でも多くの人が飼い主の責務について考えてくれれば…という一心です。
あと、飼い主が所有権放棄される際、「やっぱり殺処分されちゃうんですよね?」とよく聞かれるんです。
もちろん1匹でも多くの子に新しい家族を見つけられるよう、私たちは努力をしていますが…キャパシティの問題があるので「殺処分される可能性もあります」ということはお伝えせざるを得ません。
「飼うなら捨てない、捨てるなら飼わない」
いくら神奈川県動物愛護センターの職員が努力しても、殺処分ゼロの継続がいつ終わってしまうかは誰にも分かりません。
次のページでは、実際に使われていた殺処分機の写真を見ながら、命を落とした動物たちについて話をうかがいます。