多くの殺処分を乗り越え『ゼロ』達成した動物愛護センター 職員の言葉に考えさせられる
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殺処分が多かった時代を乗り越えて
以前使われていた旧センターには、殺処分を行うための機械や部屋がありました。
建物はすでに取り壊されていますが、談話室には同センターの登録ボランティアが撮影した、殺処分に関する写真が展示されています。
大部屋が6つあって、順番に1つずつ部屋を移動していって…最後の部屋を過ぎると犬は箱に入れられて、炭酸ガスで殺処分されていたんです。
犬たちが入っていた部屋
操作機の『処分起動』のボタンを押すと開始される
「そして、すべて焼かれて骨になるのです」
ここのセンターは2014年度から犬猫の殺処分ゼロを継続しているそうですが、ここに写っている旧センターが取り壊された今は、殺処分の部屋そのものがない状態なんですか?
野犬が多かった時代は1万匹ほど殺処分が行われていたんですが、それだけの数となると、機械がないと対応しきれなかったんです。
ある程度数が落ち着いてきてからは、1匹ずつ注射で安楽死…という形をとっていました。
当時収容されていた犬
飼い犬だった時に使われていたリード
写っているのは、これから命のカウントダウンが始まる犬たちの姿や、ここに連れられてきた時に飼い主が使っていたリードの数々。
きっと、これらの写真には「決して忘れてはならない」という、職員たちの想いが込められているのでしょう。
罪のない動物たちを『処分』しなくてはならなかった当時の職員の気持ちを考えると、胸が痛みます。
そんな時代を乗り越えて殺処分ゼロを達成できたのは、本当にすごいことですね…。
ちなみに、殺処分ゼロを達成したのは何か理由があったんですか?新しい取り組みを始めたとか…。
当時は一般譲渡が今ほど盛んではなかったので、ボランティアさんの協力がとても大きいです!
昔は「猫の殺処分ゼロなんて絶対に無理」といわれていました。なぜかというと、飼育に手間がかかる子猫は殺処分対象だったんです。
それが、ミルクをあげたり譲渡をしたりするボランティアさんの協力によって達成できて…。今でも子猫は、ボランティアさんの協力が必要不可欠な状況です。
神奈川県動物愛護センターの事業概要より
殺処分ゼロは、協力の輪が広がることによって達成できたんですね!
ひと昔前と比べると、世間の動物愛護の意識や飼育環境は、少しずつ改善されているように感じます。社会がいい方向に向かっている証なのかもしれませんね。
昔は神奈川県も何万匹もの野犬がいて、たくさん捕まえて殺処分していたんですよ。それがこれだけ減ったのは、本当にすごいんです!
加えて、今は飼い主が簡単に手放さなくなったり、ちゃんと避妊去勢手術をしたりと、皆さんの意識が変わってきたと思っています。
殺処分ゼロを維持するために
建物の横には、山道へと続く階段があります。その先にあるのは、命を落とした動物たちを弔うための慰霊碑です。
1998年に整備されたこの場所は、『やすらぎの丘』という名前の通り、気持ちのいい風が吹く高台。
この場所には、これまで殺処分された子や、新しい家族と出会う前に命尽きてしまった動物たちが埋葬されています。
『やすらぎの丘』にある慰霊碑
お供え物の水やペット用食品
この慰霊碑は、輸送中や収容中に亡くなった子、そして過去に殺処分された子を弔っています。
周囲には動物たちの遺灰が埋葬されていて、ここで動物慰霊式も行っているんですよ。
慰霊碑に向かって、静かに手を合わせた筆者と廣井さん。
最後に、保護動物を迎え入れることを検討する人へのメッセージを廣井さんにいただきました。
まずは足を運んでもらって、見ていただけたら嬉しいです。そうすれば、どれだけの子が新しい飼い主を待っているかを、分かってもらえると思います。
それぞれの性格や特徴についてちゃんと説明をした上でお譲りをしていますので、「ぜひ一度遊びに来て、見てほしいな」と思っています。
今後について、廣井さんは「もちろん殺処分ゼロを継続していきたいけど、いくら自分たちが努力をしても、どうなるかは分からない」といいます。
2021年現在、犬猫の殺処分ゼロを継続し続けている神奈川県動物愛護センター。しかし、このままゼロを保ち続けるには、社会全体の協力が必要不可欠なのです。
そして、このセンターだけでなく、全国の動物愛護センターでは命のカウントダウンを刻みながら新しい家族を待っている動物が、多数存在します。
1人でも多くの人が「保護動物を迎え入れる」という選択肢を知ることで、全国の動物愛護センターが『生かすための施設』となる未来を拓けることでしょう。
【神奈川県動物愛護センター】
住所:神奈川県平塚市土屋401
開庁時間:8時30分から17時15分(祝祭日及び年末年始を除く、月~金曜日)
ウェブサイト:神奈川県動物愛護センター
Facebook:神奈川県動物愛護センターpr大使 ブッチー
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[文・構成/grape編集部]