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【持続可能な恋ですか? 第10話 感想】最終話、私たちの心の中にもある『持続可能』

By - grape編集部  公開:  更新:

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Twitterで人気ドラマの感想をつづり注目を集める、まっち棒(@ma_dr__817125)さんのドラマコラム。

2022年4月スタートのテレビドラマ『持続可能な恋ですか?〜父と娘の結婚行進曲〜』(TBS系)の見どころや考察を連載していきます。

どんな生き方を選んでも自由な時代だからこそ、自分にとって価値ある未来がぼやけて見えてしまうことがある。

自分らしく生きるとはどういうことか、そして本当の幸せや未来まで持続可能な愛とは何を指すのか…。

誰かが正解を教えてくれるわけではない、この永遠の問いの答えはどこにあるのだろうか。

親子の『ダブル婚活』から始まった愛の物語はついに最終回。

父・林太郎(松重豊)と娘・杏花(上野樹里)の親子が見つけた、答えとは・・・。

颯からのプロポーズに、答えが出せずにいる杏花

颯(磯村勇斗)から結婚してマレーシアに一緒に来てほしいとプロポーズされた杏花だったが、直ぐには答えを出せずにいた。

自分は何も変わらず、自分らしいままでいられるし、南国でのヨガも杏花の思い描く働き方だ。颯は杏花にとって『最高の条件』なのだ。

でも、そう簡単に決断できることではない。

「いっぱい考えて、俺のこと」という颯の言葉からも、この想いは嘘じゃないという本気が伝わるのだ。

杏花は本気で向き合って、自分の本当の想いを確かめたかった。

そんな杏花は、晴太(田中圭)がその様子を見かけていることは知らなかった。

そして晴太は、颯から「もう遅いです、俺たちもう…」と伝えられ、この恋の終わりを意識する。

「足るを知ることは難しいんじゃないか?」

杏花はそんな中でも自宅でのリモートのヨガなど、仕事面は順調だった。

ヨガで語ることで、自分を整理してきたが、この日説いたのは『足るを知る』という教えだった。

丁度レッスンを聞いていた林太郎が、老子の言葉としてのその教えを杏花に語り出す。

「自分が本当に何を求めるのかそれを知らなければ、今の自分で十分だと、足るを知ることは難しいんじゃないか?」

杏花の頭には、晴太と過ごした思い出、一緒に見た景色が浮かだ。

自分が本当に求めるもの…。会う理由なんて何もなくても会いたい、そんな思いから、杏花は晴太と会うことを決める。

しかし、二人の間には微妙な空気が流れる。会話も間があく。最後に話すことは、いつも晴太が話を聞いてくれていたくだらない話。

二人は思いを隠したまま、そして杏花が颯とマレーシアに行くと勘違いしたまま別れ、すれ違いの溝が深まっていく。

一方の颯は最愛の人の手をこんなところで簡単に手放すわけにはいかないからと、アプローチをかける。

そんな颯に応えたいと思う杏花。それでもこれで十分だと思える自分を3人はまだ掴み切れていなかった。

人間だけが言葉を持つ理由

一方の林太郎は、交際することになった明里から、杏花に挨拶をしたいからといわれて沢田家を訪れることになる。

林太郎は近頃一人暮らしのために頑張っていたが、直前になっても二人で言い争いながら掃除していた。

大人になっても仲の良い二人にほっこりするし、とりあえず見られないだろうと、ものを投げ込む二人には親近感が湧いてくる。

そして林太郎と明里の素敵な関係性を、杏花は目の当たりにしていた。

「骨にも個性があるんです」と話す明里に「私は日向さんに骨抜きです!」と、バカップルと言われんばかりの仲の良さを見せつける。

それでも杏花はそんな父の笑顔を見て満足そうに微笑む。

そして、「お父さんと、結婚させてください」と明里に言われ、驚きながらも嬉しそうな林太郎を見て、杏花は「末長くよろしくお願いします」と答える。

ここに新しい『家族』が生まれた。生きてきた環境も性格も違う誰かと共に生きていく、家族。

その中で当然理解できないことが出てくる。伝わらないことがある。

林太郎も陽子と全て分かり合えたわけではなかった。

とっくに捨てられたと思っていた離婚届に込められた、陽子の「林太郎を自由にしてあげたい」という気持ちにも気づけなかったのだ。

どんなに言葉を尽くしても、分からないことは存在する。それでも人は『伝える』という行為を繰り返し、命を繋いできた。

「言葉っていうのは、誰かに気持ちを伝えるためだって、一生懸命に話す杏花が教えてくれた。気持ちを伝えたい相手がいることが、幸せなことだ」

人間だけが言葉を持ったのは、はじめは愛を伝えるためだとも言われる。

気持ちを伝えたい相手が今生きていることは、かけがえのない奇跡なのだ。

この林太郎の言葉が杏花の胸に刺さり、杏花は一歩踏み出すのだ。

晴太が気付いた本当の『答え』

「颯、ごめん、私結婚はできない」

その理由が晴太なのかと聞かれ、杏花は静かに頷く。

颯を誰よりも悲しませたくないのは、本当の家族のように思っているからなのだ。

現代の家族のカタチは様々だ。家族だと思えば、血の繋がりも住む場所も関係がない。

だが、颯にとってはそれが何よりの壁だった。

それでも颯が杏花を想う気持ちは変わらない、伝わって受け止めてもらえただけで、十分だった。

そして颯は晴太に林太郎の人前式の招待状を渡すのだ。

晴太は林太郎や安奈(瀧内公美)からも背中を押され、本当の思いに気付かされる。

杏花と林太郎が34年間築き上げてきた愛情

そして林太郎と明里の人前式、最初に式場の扉を開けたのは式の主役である2人ではなく、晴太だった。

目の前の杏花への気持ちが晴太の中で溢れ出して止まらなかった。

お父さん、お母さん、どっちでもない、大切な虹朗(鈴木楽)と杏花と共に、自分達の家族のカタチを作っていきたいと思うのだ。

「今の気持ちが永遠に続くって信じてって…冷静に考えたら無茶な話で、結婚すること自体普通じゃないと思うんですよ」

上手く言えない晴太にいつものように、「ちょっと何言ってるかわからない」と笑う杏花だったが、「分からないけど、分かりたいです。誰より晴太さんのこと」と答える。

「じゃあ聞いてください。普通じゃないくらい、杏花さんが好きです。僕と結婚してください」

杏花はプロポーズを受け入れる。そんな二人の様子を見ていた林太郎は驚きつつ、心からの祝福を贈る。

この人前式は林太郎だけではなく、林太郎が誰よりも幸せになってほしいと願う杏花の二人が、それぞれが大切に想う人との持続可能な未来へ歩み出すための式だった。

34年間お互いお世話になりましたの気持ち、そしておめでとうの気持ち。

親子は顔を見合わせ、お互いを讃えあう。二人が34年間、築き上げてきた愛情は本物だ。

最終話のテーマはきっと『持続可能』

それから一年後。

林太郎と明里は事実婚。そして杏花は晴太が始めた大好きなカレー屋を営む側でヨガ教室を開く。

颯はマレーシアに渡り学校を作るという夢を叶えるため邁進していた。

そして林太郎は一人、辞書編纂の仕事で『結婚』の語釈を考える。

愛し合う男女が、正式に一緒に生活するようになること。

林太郎は陽子と杏花との宝物のような思い出、そして今自分の心の中に住む明里を思って、また言葉を綴り直す。

『結婚』とは、愛し合う他人同士が、わかり合いたいと願い、共に歳を重ね、互いの変化を慈しみ、それでもなお分かり合えないことを知る営み。古来人類が繰り返してきた、とわに続く愛情へのむちゃな挑戦。

この物語は、自分にとって本当の幸せとは何かを、誰かを愛することを通して、決められた語釈だけではない答えを見つけていく父と娘の奮闘記が描かれてきた。

そして彼らは、二度と来ない特別な毎日、限られた時間を費やしてもいいと思える大切な人と巡り合い、新しい自分に出会ってきた。

そして今、この瞬間を目いっぱい感じ、自分らしく幸せに生きるための、自分だけの答えを見つけたのだ。

持続可能な恋は、颯の言う通り叶わなかった恋とも言える。どう変わるのも自分の気持ち次第だからだ。

だが、叶った恋だって続けることができる。それこそ、恋が愛へと変わり、時を経て形を変えながら持続可能を目指していく営みと呼べるのだ。

『持続可能な恋ですか?』には毎話テーマがあった。最終話のテーマはきっと『持続可能』だろう。

その持続可能という語釈はきっと、私たちの心の中にもあるはずだ。


[文・構成/grape編集部]

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