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自分が去った後に何が残るのか 『わすれられないおくりもの』を受けとって思うこと

By - 吉元 由美  公開:  更新:

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電車に乗っている女性の写真

吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

『わすれられないおくりもの』を受けとって思うこと

思いがけないメールをもらったことがありました。母が亡くなって数ヶ月後、何を見ても母を思い出し、(もう会えない)という現実の不思議さの中にいた頃です。

「お母様にとても優しくしていただきました」

両親が仲人を務めた結婚式でのこと、母はおそらくお嫁さんのことを気遣い、安心できるように言葉をかけたのだと思います。

facebookで母のことを書いたのを読み、亡くなったことを知ったその人は50年近く前のことを思い出し、わざわざ連絡をくれたのでした。

スマホを持つ女性の写真

また同級生のお母様と数年ぶりに話したとき、こんな話をしてくれました。

「自分が離婚問題で悩んでいるときに、『大丈夫よ』と声をかけてくれてその言葉に今でも励まされているのよ」

母らしいと思いました。母は困っている人を見ると放って置けないのです。

また転校生だった別の友人のお母様は、保護者会のときに席を取ってくれていたこと、お母さんたちの仲間に入れてもらったことなど、とてもありがたかったそうです。

どの話も、初めて聞く話ばかり、遠い日の母に再び出会ったような気がしました。母が亡くなってから聞いたこれらの話は、『おくりもの』でした。

人にとって何が大切なのかということを、母の生き方が教えてくれたのです。

朝露で濡れるコスモスの写真

自分が去った後に何が残るのか。残そうと思って残すものではなく、『残るもの』。惜しみなく与えてきたもの。人の心に残っているもの。それが大切な人を失った者にとって癒しになる。

それは、持っていないものや失ったものを数えるよりも、いま持っているものをありがたく思うことの方が幸せであることと同じです。

夕焼けの浜辺を歩く女性の写真

親しかった友人が若くして旅立ったとき、あまりのショックで寝込んでしまったことがありました。彼女は誰かを愛する強さを見せてくれました。

そしてつらいときでもいつも笑顔だった。そんな彼女のひたむきさに、精一杯生ききることの尊さを思うのです。

友人からの『おくりもの』を受け取れたとき、喪失感は薄らぎ、ありがたさとあたたかい気持ちに満たされる。そうして癒されていくのでしょう。

ビーチの上のカラフルなダイヤモンドの写真

『わすれられないおくりもの』という絵本があります。賢くて優しいアナグマさんは、自分の死が近いことを悟ります。仲間の動物たちに悲しまないように伝えますが、アナグマさんの死に仲間たちは悲しみに沈みます。

でも、アナグマさんから教えてもらったこと、うれしかったことを語り合ううちにそれが『宝物』の思い出であることに気づくのです。

忙しく、ささくれ立つようなことがあるときほど、優しい気持ちを大切に。母も友人もアナグマさんのように、強く、優しくありたいと改めて思うのです。

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※記事中の写真はすべてイメージ


[文・構成/吉元由美]

吉元由美

作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
吉元由美オフィシャルサイト
吉元由美Facebookページ
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