9月9日『重陽の節句』 美酒を酌み交わす菊の宴
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こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。
ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。
9月9日 重陽の節句
古来中国では、数字が重なる日を節句として、お祝いをする風習がありました。数字には陽と陰があり、奇数は陽、偶数は陰とされ、特に奇数が重なる月の日は 節句としてお祝いをしたそうです。
1月は正月、3月3日は桃の節句、5月は端午の節句、7月は七夕、9月は菊の節句。特に数字の多い9月9日に最も重きを置き、菊を愛でる『重陽の節句』として祝ったそうです。
中国の方は、おおむね奇数を好み、電話番号とか 証明書類、車のナンバーなど奇数を選ぶ方が多いようで、以前、香港に行った時、大富豪の大邸宅の前に停めてあったロールスロイスの車のナンバーが 9999と9の字が並んでいたのを 今でもハッキリ覚えています。
大輪菊
ところで、9月9日の重陽の節句ですが、旧暦では菊の季節に当り、優雅で華やかな菊を愛でる祝宴でもあり、その日集う宮廷人は、それぞれ好みの菊を持参し、観賞し、和歌を詠み、祝宴を楽しんだそうです。
『令和』の出典は、万葉集の大宰府での『梅の宴』でしたが、それと同じような『菊の宴』であったのでしょうね。菊の花は本当に種類も多く、優美で華麗な花の形です。皇室のご紋章になる位ですから格が違うのですね。その菊を各人が持ち寄り、観賞し、そしてそれを詠み、美酒を酌み交わした菊の宴『重陽の節句』。
ところが宮廷人の中には、この日を忘れ 9日ではなく10日に自分なりの菊を持って来て、祝い主から”10日の菊”と笑われたそうです。以来1日遅れや、約束の時刻に遅れて来た人のことを”10日の菊”と揶揄した時代もあったようです。
この9月9日『重陽の節句』と、その後日談である『10日の菊』をさりげなくお遣いになり、秋の気配が漂い始めたこの9月に、古の令和時代を 再度思い浮かべてみるのも一興かと 書き連ねてみました。
<2019年9月>
フリーアナウンサー 押阪 忍
1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2019年現在、アナウンサー生活61年。
日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。