【『大奥』感想6話】仲里依紗の爆発的な演技力が見せつける、哀しき女の一生
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Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2023年1月スタートのテレビドラマ『大奥』(NHK)の見どころを連載していきます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
漠然とした悲しみや痛みが、一つの言葉にまとまった途端に輪郭を持って刃に変わる。
NHKドラマ10『大奥』6話。周囲には奔放で性愛を愉しんでいるかに見えていた女将軍が、自嘲しながら吐き出した「そうか。これは辱めであったか」という言葉。
周囲から「上様、上様」と持ち上げられながらも、苦しみもがいて生きていた彼女の痛切さを表すのに、小さくてもこれ以上に鋭い刃があるだろうか。
これは原作にない、ドラマ化にあたって付け加えられた一言である。
コミックの映像化だから、時には原作通りには書けないことも、そして時間の制約や流れで入れられないエピソードもある。
けれど、この鋭い一言は、ドラマの作り手が原作の一番大切な部分を深く汲み上げて、誠実に作りあげているということを如実に示すセリフだと思った。
※写真はイメージ
男子のみがかかる伝染病のために女性が政治と労働を担い、体制変革を経て、既に戦乱の世が数十年前に遠くなった元禄の時代。
女将軍の綱吉(仲里依紗)は享楽的な日々を繰り返し、大奥には野心を秘めた公家の右衛門佐(山本耕史)がやってくる。
自らの自由の為に権力を求める右衛門佐は、巧妙に綱吉と駆け引きを繰り返し、大奥総取締役の地位を手に入れるのだった。
6話では、これまでただ退廃的に見えた綱吉の秘めた苦しみが次第に明らかになる。
阿佐ヶ谷姉妹演じる町人達の「お世継ぎがないんだったら親戚の子でももらってくればいいじゃないか」という言葉が、是が非でも直系の血筋で戦乱の芽を摘まねばならないという切迫感の薄れた社会を端的に表していた。
そんな社会で、縋るように過去の価値観のままの父・桂昌院(竜雷太)の盲愛と、自身の聡明さの間で綱吉は板挟みになっている。さらに、その危ういバランスは、跡継ぎ娘・松姫の病死で完全に崩れてしまう。
自分の手で側室を差配し、大奥を意のままにしようと目論む右衛門佐を「そなたの命など、わたしの心一つじゃ。騙されてやっておるうちが華と思えよ、佐」と厳しく牽制し、主君としてのカリスマ性を見せつけながらも、老いた父の罪悪感に端を発した愚かな政策を、娘として拒みきれない姿が痛々しい。
右衛門佐を𠮟りつけてから一転、艶然と微笑む仲里依紗と、圧倒されて黙り込む山本耕史のこのシーンは非常に見応えがある。
この部分も、生類憐れみの令を求めて桂昌院が駆け込んで来た時に綱吉が学んでいた書物がうち捨てられる部分も、ドラマで追加されたエピソードで効果的な演出だと思う。
※写真はイメージ
衣食住は満ちている、地位の高い女として大事に扱われている。
それなのに、知性よりも前に女としての魅力を求められ、それをくだらないと思いつつも、それでもその価値観から逃げきれない。
これは現代でも私たちが見ている何かだという、ぞわっとした感覚があった。
次の世継ぎを求めて若い男たちを誘い、毎夜華やかに装う綱吉の姿が美しいほど、冷え冷えとした空しさが画面に満ちていく。
そうして自身の内面をぼろぼろに傷つけ、耐え続けた果てが「そうか。これは辱めであったか」という彼女の慟哭(どうこく)であり、「将軍とはな、岡場所で身体を売る男達より卑しい、この国で一番卑しい女のことじゃ」という叫びなのである。
それは、どんなに高い地位の人間でも、自分でそれを選んだように見えても、生身の人間が自身の性とそれにまつわる事柄を他人から暴かれ、その結果を勝手に評価されることは、暴力であり、不可逆の被害なのだという強烈な告発である。
転じて、それらの目線が持つ加害性の指摘でもあり、私たちはその激しさに息をのむ。
※写真はイメージ
綱吉が初めて見せる苦しみに、互いの心を通じ合わせたかに見える右衛門佐と綱吉だが、綱吉の苦しみを知ってしまったがゆえに、右衛門佐はもはや彼女との性愛には踏み込めなくなってしまう。
この切ない成熟した大人ふたりの愛はどのような結末になるのか。
そして原作の通りなら、この先も綱吉にはいくつかの無情な運命がふりかかる。
仲里依紗と山本耕史の2人が、どんな深みのある愛を表現してくれるのか、楽しみに待ちたい。
なお、6話放送直前に、今作の広報から「NHKドラマとしては初めてインティマシー・コーディネーターを採用して作られている」という旨がアナウンスされている。
インティマシー・コーディネーターとは、演技やメンタルケア、性についての専門知識を持ち、俳優の心身をケアしながら性的シーンの撮影に関わる調整役のスタッフである。
今回の大奥のエピソードほど、インティマシー・コーディネーターの存在を得て撮影されたことが、物語の説得力を増す内容はないと思う。
演じる側の不安や不快を少しでも減らしていくことが、同時に見る側の私たちの「この撮影、俳優は大丈夫だったのか」という懸念を減らし、より深く物語に没入させてくれる。
NHKのこの取り組みに、大きな拍手を送りたい。
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[文・構成/grape編集部]
かな
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