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日本で生まれた『母子手帳』 世界に広まり、母子の命を救う

By - grape編集部  公開:  更新:

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「母子手帳」、正式な名称「母子健康手帳」は、私たち日本人にとってはなじみ深いもの。子を持ったことがない人でも、子どものころ親に見せてもらった、という経験はあるでしょう。

この「母子健康手帳(以下母子手帳)」が日本発祥で世界に広まり、途上国を中心に大きく評価されていることはあまり知られていません。

途上国で活用される母子手帳

特定非営利活動法人HANDSによると、日本発の「母子手帳」は2015年1月時点で、30か国以上の国や地域で活用されています。

食糧難や衛生面の問題などで死亡している、アフリカやアジアの諸国における多くの母子たち。状況を変えるために必要なのは、妊娠から出産、そして産後にわたる継続したケアであると言われています。

日本の「母子手帳」は、妊娠すると市区町村から交付されます。そして、子どもが6歳を迎えるまでの間、母子の状況が記録されていきます。手帳は母親が持っているため、母子を見守る様々な機関・そして周囲の人々が状況を把握し、的確なケアをするために活用されています。

このしくみが、母子に対する適切なケアの充実が課題となっている途上国において、大いに役立てられています。

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さらに多くの国々が導入を検討

世界に広まった「母子手帳」は、さらに多くの国々で導入が検討されています。この動きが、今後より多くの妊婦、母子の命を救うことになるはずです。

また、すでに「母子手帳」が実施されている国でも、例えば識字率が低い国においてはイラストが多用され、文字が読めない母親であっても利用できるよう工夫がされています。

世界の母子健康手帳の利用状況

国・地域全体に普及
日本、韓国、タイ、インドネシア、ブータン、東ティモール、オランダ、フランス、ユタ州(米国)、ニジェール、チュニジア、コートジボワール、セネガル、ブルキナファソ、ベナン、ケニア、ドミニカ共和国、など

普及プロジェクトが推進中
ベトナム、パレスチナ、ラオス、カンボジア、バングラデシュ、フィリピン、ミャンマー、モンゴル、マダガスカル、カメルーン、タンザニア、など

導入を準備・検討
ブルネイ、中国、ウガンダ、など

※特定非営利活動法人HANDSが把握している状況

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日本における「母子手帳」のなりたち

日本で「母子手帳」の制度が始まったのは、戦後まもなくのことでした。

戦後、日本で「母子手帳」が普及した経緯には、多くの妊娠中の女性、また母子が命を落としていたと言う歴史があります。

戦時中、まず「妊産婦手帳」制度が始まりました。これは、戦時下でも手帳を提示すれば物資の配給が優先的に行われること、そして妊産婦へ医師の定期的な診察を促すことが目的でした。

その後、制度の整備とともに「妊産婦手帳」が「母子手帳」に変わり、現在の「母子健康手帳」となりました。

そもそもの「妊産婦手帳」はドイツのある地方の制度を参考にして作られたものですが、私たちにとって身近な「母子手帳」は日本で制度化され、内容の充実がはかられたものだったのです。

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「母子手帳」は私たちが生まれたときから、当たり前のように存在していました。私たちはその存在が、命をつなぐために大きく貢献していてくれたことに気づいていないかもしれません。

私たちが生まれて育っていくために、両親だけでなく多くの人々に見守られてきたのだということを、改めて認識させられます。機会があれば、一度自分の「母子手帳」を見てみてはいかがでしょうか。

出典
NPO法人HANDS厚生労働省

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