ハッとした言葉に出会ったとき、その意味を考えてみる
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
『言葉』と出会う〜偶然はひとつもなく
ハッとする言葉に出会うことがあります。それは決して偶然ではなく、そのときの自分にとって必要であるから出会うのだと思います。
何気なく開いた本の中に、友達との会話の中に、歌詞の中に、思わず手を止めてしまうような言葉があるのです。
これは、28歳で亡くなった詩人、ブッシュ孝子さんの詩です。
この詩は、あたりまえのことなどひとつもない、ということを訴えてきます。『取り返しのつかないこと』、その究極が命であるのに「生きる」「生きている」ということがあたりまえになっていることに気づきます。
蛇口を撚れば水が出ること。スイッチを入れたら電気がつくこと。空気があること。自然があり、多種多様の動物たち、植物たち。家族がいること。友達がいること。挙げればキリがありません。
朝が来ること。朝、目覚めること。生きていること。命があること。そのどれもがかけがえのないものであるはずなのに。
『あたりまえの日常』ではなく、日常とはかけがえのないものでもあるのです。
先日、坂本龍一さんのフィルム・コンサート『Ryuichi Sakamoto | OPUS』を観ました。
どうするとあんなにも美しく、消え入りそうな音を出せるのか。優しいのでも、柔らかいというのでもなく、音楽というものの『魂』を包み込むような。そして残響は次の世界へ去っていくように消えていくのでした。
コンサート会場で演奏する体力が亡くなった坂本龍一さんは、こういう形で失っていくものに形を与えたのかもしれません。
必要なときに、必要な言葉に出会う。ブッシュ孝子さんの詩と、坂本龍一さんの姿にハッとさせられたのは、『生きるとは表現し続けること』だと改めて思えたからです。
今の私の手を引いてくれるような出会いでした。
これは、表現者に限ったことではありません。誰もが、自分の人生を創造するアーティストです。
ハッとした言葉に出会ったとき、その意味を考えてみる。イギリスの詩人であり哲学者であるサミュエル・コールリッジが次のような言葉を残しています。
私の雑記帳の隅に走り書きしてありました。きっとそのとき必要な言葉だったのでしょう。
「偶然は、神が公に署名しない特別なケースのために取っておく、神のペンネームである」
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」