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爽やかな風が吹く季節 古くから、時候の挨拶に使われてきた『薫風』という言葉

By - 押阪 忍  公開:  更新:

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こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。

ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言ひとりごと』にお付き合いください。

風薫る今まさに薫風の季節

初夏の五月、いい季節です。日差しが春より強さを増し、みどりが更に深まる季節です。

薫る風と書く。中国で生まれた言葉『薫風くんぷう』は、丁度、今の季節、緑や花の香りを運んで、静かに、そして爽やかに吹く風のことを言います。

皆さんがお住まいの所に、この薫風は吹いていますでしょうか…。長い日本列島、南から暖風、薫風、寒風と言った所でしょうか…。

ところで、この薫風という言葉ですが、古くから、時候の挨拶に使われてきました。例えば、

「拝啓、薫風の候、新緑が目に眩しく感じられますが、御変りございませんか…」

というような書き出しで始まる手紙…そうですねぇ…実年以上の方は概ね手紙の場合には、時候の挨拶としてお使いになるのではないでしょうか。

今後も残しておきたい素敵な日本語と思っております。

私が手紙・葉書を書く場合、この時期には、『薫風・新緑の2文字』は必ず使うように心がけております。

「時候の挨拶ひとつで、手紙の中身が決まる」と言っていた先輩がいましたが、あながちオーバーではないなと感じてしまいます。

時候の『言葉選び』も手紙、葉書を書く場合、ゆとりがあれば楽しいものの一つと思っております。

ところでこの薫風、もとは、室町時代、梅や桜の花の香りを運ぶ風を指す言葉でした。それが江戸時代になって、松尾芭蕉の力により夏の季語として定着したと言われています。

俳句では薫風の他に、夏の季語として『風薫る』『風の香』『南薫』などがありますね。

暑い夏の前、晴れた日に、爽やかな緑の風『薫風』を受けて、暫し、寛ぐお茶の時間を作ってみては如何でしょうか。

<2023年5月>

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フリーアナウンサー 押阪 忍

1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2023年現在、アナウンサー生活65年。
日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。

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